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29話 魔法とは?

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 破壊された結婚式場を見回り、ザビーネが使った魔法の手掛かりが無いか探しています。
 とはいえ数日が過ぎているので、もう魔法の残り香は無くなっている。
 衛兵さんや騎士さん、他にも様々な人が見ているけど、これといった手掛かりは見つかっていない。

「ザビーネめ、逆恨みにも程があるだろう! それになんだアレ、陛下を婿むことして迎えるだって? 何を考えているんだアイツは」

 ハンスと私も一緒に現場検証をしています。
 式の当日にいた人で、都合の付いた人が数名参加している。

「権力が欲しいのかしら」

「それなら……極端な話し、国を乗っ取ってしまえばいい。あんな強力な魔法を使えるし、場合によっては陛下をどうにかできるはずだ。どうしてそれをしなかった」

「そうよね、じゃあ一体何をしたいのかしら」

 あんな理解の出来ない言動をする人の目的なんて、私達には理解できません。
 この日はもう手掛かりが見つかりそうにないので、それぞれの屋敷に戻りました。

 数日が過ぎ、もう結婚式どころの騒ぎではなくなってしまい、ザビーネ対策を連日話し合っています。
 軍の偉い方々や当日式に出席していた方々、魔法研究家などもいました。
 中々解決策は見つかりませんが、少しだけ気になっていた事があります。

 どうしてザビーネは逃げていったのでしょうか。

 あのまま悪魔の魔法フィエンドスペルで攻撃していたら、私やハンスは間違いなく殺されていました。
 にもかかわらず、ザビーネは逃げた。
 そこに何かヒントがあるように感じます。
 とはいえ少なすぎるヒントでは、解決策はできません。

「あ~、フィエンドスペル、悪魔の魔法といったか? 古い資料を読み漁っているが、その様な魔法はどこにも書かれていなかった」

 魔法の研究をしているお爺さんがグチっている。
 あれは私達を信じていない目ね。
 まるで「俺の知らない魔法なんて存在するはずがない」とでも言わんばかり。

「では聞くが、既存の魔法であんなことが出来るものはなんだ?」

「そ、それは……」

 騎士団長の質問に言葉が詰まるお爺さん。
 う~ん、既存の魔法の知られていない使い方かしら?
 でも魔法を発動する時は、何らかの属性のしるしが現れるはず。
 水魔法なら水色っぽい光を発して魔法が発動する、とか。

「闇の魔法に対しては光の魔法が有効です。では悪魔の魔法に対しては、一体何が有効なのでしょうか?」

 式の当日、会場にいた神父さんがそんな事を呟きました。
 魔法には相反する属性が存在します。
 光と闇、水と火、風と土。
 悪魔の魔法だったら、神の魔法かしら?

「神の魔法とでも言いたいのか? 君は」

 隊長さんが懐疑的な目を向ける。
 誰もが思った事だけど、神の魔法なんて聞いた事がない。
 ああ、悪魔の魔法も聞いた事がないものね……ん?

「あら? じゃあ神聖魔法の逆魔法は何かしら」

 思わず声を出してしまいました。
 神聖魔法は神官が使うような回復魔法がメインのものです。
 神官さんが発言をしたので、そんな事を考えてしまったのですが……そもそも神聖魔法ってなに?

「神聖魔法は光魔法に通ずるものがありますが、神聖魔法は治療・加護しかありません。怪我や病気を治療し、加護で予防をするのです。属性で言うと逆になる物は……はて?」

 神官さんが頭を傾けました。
 そして説明を受けて、ほとんどの人が一つの結論を出しました。
 そう、神聖・・なのだから、逆は悪魔なのでは? と。

「そういえばシオン、神官が君に回復魔法をかけた時、ザビーネは何もしなかったよな?」

「言われてみればそうね。何か戸惑っていたように見えたけど、なんでかしら」

 ハンスに言われ、あの時の事を思い出してみます。
 そう、確かザビーネは魔法を使うそぶりを見せていたのに、魔法が飛んできませんでした。
 なぜ? いえ、もしも魔法を使ったのに発動しなかったとしたら……!!

「「まさか!」」

 満場一致で一つの答えに導かれました。
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