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17話 ハンスが来るまでの数日
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結局今日はハンスの場所を聞くことなく、夕食の時間を迎えました。
おかしいです……すでに今日ハンスに会い、フラれて傷心し、ベッドで泣いている予定でした。
なのに……。
「あらあら、アナタったらシオン嬢を見習ったらいかがですか?」
「はっはっは! シオン嬢の爪の垢を煎じて飲むか!」
「ごめんなさいシオン様、お父様は少し変わっているの」
「楽しいご家族ですね」
はい、奥様も一緒に食事をしています。
それにいい人達なんです、この方々は。
最初はどうしてハンスの場所を教えてくれないのかと思いましたが、今は安定しているとはいえ国境、何がおこるか分かりません。
なのでハンスを呼び戻すために代わりの人を向かわせてくれました。
そして間違いなく、ナタリー様はハンスの事を想っています。
ハンスとナタリー様が並ぶ所を想像すると……胸が張り裂けそうですが、なんとお似合いの二人なのでしょうか。
私の様な醜女ではハンスとつり合いが取れません。
はぁ、ため息しか出ませんね。
「シオン様、シオン様は魔法は使えるのですか?」
「いえ、私は魔法学は学びましたが、魔力がほとんど無いので使えないのです」
夕食後、ナタリー様の部屋にお呼ばれして、二人でお茶を飲みながら静かに話をしています。
会った直ぐの時は睨みつけられましたが、今は笑顔で話してくれています。
いきなり現れた私を警戒していたのでしょうか。
考えてみれば当たり前ですね、突然陛下の手紙を持った会った事もない小娘を、警戒しないはずがありません。
「え? でも学院を首席で卒業されたのですよね?」
「ええ、ですが実技関係は専攻せず、研究や勉学に集中したのが幸いしました。ナタリー様は魔法を?」
「私は少しだけ。剣術と魔法を合わせた方が、選択肢が増えますから」
なるほど、騎士ならば外敵を打ち倒す攻撃系を、傭兵ならば乱戦でも生き残れるように防御系をよく使うと聞きました。
ナタリー様も攻撃系を使うのでしょうか。
「でもお父様は騎士になる事を許してくれないんです。嫁の貰い手が無くなるからって」
「ナタリー様なら引く手あまただと思いますよ?」
「そんな! 私なんかよりシオン様の方が引く手あまたです! 私なんて男勝りで嫌がられますよ」
ナタリー様はお優しいですね、こんな私を慰めてくれます。
でも分かっています、学院ではクラスの男性から嫌われていましたから。
「よっブス」
「ブス、勉強を教えてくれ」
「お前はブスだから俺くらいしか話かけないだろ」
なんて言われ続けていましたが、ハンスと居る時だけは心が落ち着いていました。
きっとハンスは幼馴染なので、私の顔に慣れているのでしょう。
「ナタリー様は私と違ってお美しいので、剣技が卓越していても大丈夫ですよ」
「え?」
ナタリー様が私の顔を見ます。
はて、今まで何度も私の顔を見ているはずですが、今更どうしたのでしょうか。
あ、ひょっとして私の顔で良い場所をさがしているのですか?
ないでしょうね。
「あ! ひょっとして最初の態度を怒ってらっしゃるんですか? あの時は申し訳ありません! 陛下の手紙を女性が持ってきたので、手紙の内容の裏を探ろうと必死だったんです!」
「あれは私も悪いと思っています。陛下が遠征からお戻りになり、国がこんな状況なのにこの手紙です。疑心暗鬼になっても仕方がありません。驚かせて申し訳ありませんでした」
「いえ、疑心暗鬼というか、この時期に才女であるシオン様を送る理由なんて、領地の立て直ししかあり得ません。でも手紙があの内容ですから、油断させておいて視察をして報告をするのかと……」
才女? ああ、学院は首席でしたから、その事ですね。
しかし領地の立て直し? なぜ私が陛下の命令で?
私がやるよりも他に専門の人がいるでしょうに。
そんな日が数日続き、予定通りなら明日にはハンスが戻って来るそうです。
監視塔は思ったよりも遠くにあり、馬での往復で数日かかるとか。
これほど領地が大きいとは思っていませんでした。
ど、ドキドキしますね。
最後にあったのは学院を卒業した時ですから、一年以上会っていません。
わ、私の事を忘れていたりしませんよね?
は! 今日は早めに寝ておかないと、せめて最後はキレイな姿で終わりたいですから。
肌のお手入れをして、早めに就寝します。
翌朝、早くに目覚めた私は屋敷の玄関前をウロウロしています。
は、早くに寝すぎたせいで、目覚めるのも早くなってしまいました。
流石にこんな時間には戻ってきませんよね。
まだメイド以外は寝ていますし。
胸の鼓動が激しいです。
ああ、早く会いたい、でも会いたくない。
ダメダメ、どうせハンスは他の人と結ばれるのですから、後悔するなら告白してフラれる方を選ぶんです。
どれだけウロついていたか分かりませんが、門の付近が騒がしくなりました。
!! も、戻ってきたのでしょうか!?
し、深呼吸をして落ち着かせて、す~は~す~は。
「た、大変だ! ハンス隊がモンスターに襲われた!」
おかしいです……すでに今日ハンスに会い、フラれて傷心し、ベッドで泣いている予定でした。
なのに……。
「あらあら、アナタったらシオン嬢を見習ったらいかがですか?」
「はっはっは! シオン嬢の爪の垢を煎じて飲むか!」
「ごめんなさいシオン様、お父様は少し変わっているの」
「楽しいご家族ですね」
はい、奥様も一緒に食事をしています。
それにいい人達なんです、この方々は。
最初はどうしてハンスの場所を教えてくれないのかと思いましたが、今は安定しているとはいえ国境、何がおこるか分かりません。
なのでハンスを呼び戻すために代わりの人を向かわせてくれました。
そして間違いなく、ナタリー様はハンスの事を想っています。
ハンスとナタリー様が並ぶ所を想像すると……胸が張り裂けそうですが、なんとお似合いの二人なのでしょうか。
私の様な醜女ではハンスとつり合いが取れません。
はぁ、ため息しか出ませんね。
「シオン様、シオン様は魔法は使えるのですか?」
「いえ、私は魔法学は学びましたが、魔力がほとんど無いので使えないのです」
夕食後、ナタリー様の部屋にお呼ばれして、二人でお茶を飲みながら静かに話をしています。
会った直ぐの時は睨みつけられましたが、今は笑顔で話してくれています。
いきなり現れた私を警戒していたのでしょうか。
考えてみれば当たり前ですね、突然陛下の手紙を持った会った事もない小娘を、警戒しないはずがありません。
「え? でも学院を首席で卒業されたのですよね?」
「ええ、ですが実技関係は専攻せず、研究や勉学に集中したのが幸いしました。ナタリー様は魔法を?」
「私は少しだけ。剣術と魔法を合わせた方が、選択肢が増えますから」
なるほど、騎士ならば外敵を打ち倒す攻撃系を、傭兵ならば乱戦でも生き残れるように防御系をよく使うと聞きました。
ナタリー様も攻撃系を使うのでしょうか。
「でもお父様は騎士になる事を許してくれないんです。嫁の貰い手が無くなるからって」
「ナタリー様なら引く手あまただと思いますよ?」
「そんな! 私なんかよりシオン様の方が引く手あまたです! 私なんて男勝りで嫌がられますよ」
ナタリー様はお優しいですね、こんな私を慰めてくれます。
でも分かっています、学院ではクラスの男性から嫌われていましたから。
「よっブス」
「ブス、勉強を教えてくれ」
「お前はブスだから俺くらいしか話かけないだろ」
なんて言われ続けていましたが、ハンスと居る時だけは心が落ち着いていました。
きっとハンスは幼馴染なので、私の顔に慣れているのでしょう。
「ナタリー様は私と違ってお美しいので、剣技が卓越していても大丈夫ですよ」
「え?」
ナタリー様が私の顔を見ます。
はて、今まで何度も私の顔を見ているはずですが、今更どうしたのでしょうか。
あ、ひょっとして私の顔で良い場所をさがしているのですか?
ないでしょうね。
「あ! ひょっとして最初の態度を怒ってらっしゃるんですか? あの時は申し訳ありません! 陛下の手紙を女性が持ってきたので、手紙の内容の裏を探ろうと必死だったんです!」
「あれは私も悪いと思っています。陛下が遠征からお戻りになり、国がこんな状況なのにこの手紙です。疑心暗鬼になっても仕方がありません。驚かせて申し訳ありませんでした」
「いえ、疑心暗鬼というか、この時期に才女であるシオン様を送る理由なんて、領地の立て直ししかあり得ません。でも手紙があの内容ですから、油断させておいて視察をして報告をするのかと……」
才女? ああ、学院は首席でしたから、その事ですね。
しかし領地の立て直し? なぜ私が陛下の命令で?
私がやるよりも他に専門の人がいるでしょうに。
そんな日が数日続き、予定通りなら明日にはハンスが戻って来るそうです。
監視塔は思ったよりも遠くにあり、馬での往復で数日かかるとか。
これほど領地が大きいとは思っていませんでした。
ど、ドキドキしますね。
最後にあったのは学院を卒業した時ですから、一年以上会っていません。
わ、私の事を忘れていたりしませんよね?
は! 今日は早めに寝ておかないと、せめて最後はキレイな姿で終わりたいですから。
肌のお手入れをして、早めに就寝します。
翌朝、早くに目覚めた私は屋敷の玄関前をウロウロしています。
は、早くに寝すぎたせいで、目覚めるのも早くなってしまいました。
流石にこんな時間には戻ってきませんよね。
まだメイド以外は寝ていますし。
胸の鼓動が激しいです。
ああ、早く会いたい、でも会いたくない。
ダメダメ、どうせハンスは他の人と結ばれるのですから、後悔するなら告白してフラれる方を選ぶんです。
どれだけウロついていたか分かりませんが、門の付近が騒がしくなりました。
!! も、戻ってきたのでしょうか!?
し、深呼吸をして落ち着かせて、す~は~す~は。
「た、大変だ! ハンス隊がモンスターに襲われた!」
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