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1話 絶賛花嫁修業中
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私ことシオン・H・スロープは、ただいま絶賛花嫁修業中です。
花嫁修業といっても普通の物ではなく、王太子妃として、ひいては王妃となるべく頑張っています。
はぁ、今まで男性に言い寄られた事なんて無かったのに、どうしてあの日は王太子に見初められたのでしょうか。
自慢ではありませんが、私の見た目は良くありません。
なのに王太子という肩書を抜きにしても人気のあるフランツ様が、どうして私を好きになったのか……。
「世界の七不思議に入れても不思議はないくらいの不思議さだと思うわ」
世の中不思議にあふれているようですね。
「シオン様、次は実務関係に移りましょう」
「はい、分かりました」
王宮での暮らしは悪くありません。
いえ、実家の屋敷よりも良いでしょう。
でも忙しさは比較にならないほどですね。
ここ一ヶ月はお休みらしいお休みを取っていませんから。
本当は私、片思いをしていた幼馴染が居るのですが、王太子自らが結婚してくれと言われたら、余程の理由がないと断る事など出来ません。
伯爵なんてその程度の物です。
ハンスは元気にしているかしら、ハンスなら私と違って人気もあるから、きっと良い人を見つけて結婚してしまうわよね。
いえ、気持ちを切り替えていきませんと。
今の私は王太子妃としての振る舞いを学ばなくてはいけません。
私が少し我慢するだけで、王太子も、家族も……ハンスも幸せになれるのですから。
「シオン様、次の科目に移りましょう」
そんな日々が半年ほど続き一通りの仕事を覚えた頃、今度は現場の仕事も知る事が必要だからと王宮を出て、騎士団や衛兵の視察、王都の隅々まで見て回りました。
こんな事が王太子妃として役に立つのでしょうか? そう思いもしましたが、私は王族でないので実際の所は分かりません。
他の人に知られないように視察をしていたのかもしれません。
「おや? これまたカワイイお嬢さんが視察に来たもんだ。こんなむさくるしい場所に何の用だい?」
衛兵の隊長らしき人が詰め所で対応をしてくれました。
「王太子妃に必要な事だからと。衛兵の業務内容について、いくつかお伺いしてもよろしいですか?」
「王太子妃……? ま、まぁ必要かな? 質問ならどうぞ」
色々な事を聞きました。
今の王都は少々治安が悪いらしく、ガラの悪い人たちが増えてきたのだとか。
どうやら衛兵に割り当てられる金額が減らされたらしく、人員の補充が出来ないのだそうです。
「お嬢さんからも上の連中に言ってくれないか。このままだと門番は徹夜仕事になっちまう」
「そうですね、治安の維持は急務だと思いますので、フランツ王太子にお話をしてみましょう」
「頼む」
残念ながらフランツ王太子はお忙しいらしく、直接お会いして話をする事は出来ませんでした。
なのでお手紙を書いて衛兵の現状をお伝えしようと思います。
その後も行政機関をすべて見て回り、色々なお話を聞きました。
大きな不満は無いようですが、細かな不満は沢山あるらしく、それを一つ一つ手紙に書いてフランツ王太子に送ります。
あら? そういえばずっとフランツ王太子にお会いできていませんね。
お忙しそうなので仕方ありません。
それにしても王太子妃の仕事というのは、こんなにも多岐にわたるのですね。
「おお! シオン次期王太子妃! よく来てくれました。ささ、お茶を入れますからどうぞどうぞ」
今日は以前お伺いした衛兵さんの詰め所に来ています。
フランツ王太子にお手紙を送ってから、どうやら衛兵へ割り当てられる金額が増えたようで、新人の衛兵も何人も補充できたのだとか。
良かったです、私の働きが少しでもお役に立てたのですから。
「いやはやいやはや、お嬢ちゃん、おっと、シオン様が王太子妃になるんなら、この国は安泰だな」
「そんな事はありません。国は国民の皆様がいてこそ成り立つのです。私は後方で走り回っているだけですから」
「そんな事はないさ。あちこちで話を聞いて、それを上にあげてくれてるんだろう? みんな感謝していたぜ」
「ふふふ、それが私の役目ですから」
王宮に来て一年が過ぎたので、そろそろ結婚式の話が出てもいい頃ですが……王宮内ではそんな話を聞きません。
そういえばフランツ王太子とも一年は会っていませんね。
そんな時でした、王宮に来て初めてパーティーに呼ばれました。
今までは「王太子妃としての勉強が終わっていないから」と、パーティーに呼ばれた事はありませんでしたが、ここにきて呼ばれるという事は、結婚の発表が行われるのでしょうか。
ああハンス……これであなたとは結ばれる事は無くなってしまうのね。
いえ、覚悟は出来ています。
私は王太子妃として、この国のために身を粉にして働きましょう!
「シオン、君は僕に相応しくないから婚約は破棄する。ザビーネ公爵令嬢と結婚する事にしたから、側室としてなら王宮に残る事を許そう」
パーティーでの発表は私の婚約破棄と、ザビーネ公爵令嬢との婚約の発表でした。
花嫁修業といっても普通の物ではなく、王太子妃として、ひいては王妃となるべく頑張っています。
はぁ、今まで男性に言い寄られた事なんて無かったのに、どうしてあの日は王太子に見初められたのでしょうか。
自慢ではありませんが、私の見た目は良くありません。
なのに王太子という肩書を抜きにしても人気のあるフランツ様が、どうして私を好きになったのか……。
「世界の七不思議に入れても不思議はないくらいの不思議さだと思うわ」
世の中不思議にあふれているようですね。
「シオン様、次は実務関係に移りましょう」
「はい、分かりました」
王宮での暮らしは悪くありません。
いえ、実家の屋敷よりも良いでしょう。
でも忙しさは比較にならないほどですね。
ここ一ヶ月はお休みらしいお休みを取っていませんから。
本当は私、片思いをしていた幼馴染が居るのですが、王太子自らが結婚してくれと言われたら、余程の理由がないと断る事など出来ません。
伯爵なんてその程度の物です。
ハンスは元気にしているかしら、ハンスなら私と違って人気もあるから、きっと良い人を見つけて結婚してしまうわよね。
いえ、気持ちを切り替えていきませんと。
今の私は王太子妃としての振る舞いを学ばなくてはいけません。
私が少し我慢するだけで、王太子も、家族も……ハンスも幸せになれるのですから。
「シオン様、次の科目に移りましょう」
そんな日々が半年ほど続き一通りの仕事を覚えた頃、今度は現場の仕事も知る事が必要だからと王宮を出て、騎士団や衛兵の視察、王都の隅々まで見て回りました。
こんな事が王太子妃として役に立つのでしょうか? そう思いもしましたが、私は王族でないので実際の所は分かりません。
他の人に知られないように視察をしていたのかもしれません。
「おや? これまたカワイイお嬢さんが視察に来たもんだ。こんなむさくるしい場所に何の用だい?」
衛兵の隊長らしき人が詰め所で対応をしてくれました。
「王太子妃に必要な事だからと。衛兵の業務内容について、いくつかお伺いしてもよろしいですか?」
「王太子妃……? ま、まぁ必要かな? 質問ならどうぞ」
色々な事を聞きました。
今の王都は少々治安が悪いらしく、ガラの悪い人たちが増えてきたのだとか。
どうやら衛兵に割り当てられる金額が減らされたらしく、人員の補充が出来ないのだそうです。
「お嬢さんからも上の連中に言ってくれないか。このままだと門番は徹夜仕事になっちまう」
「そうですね、治安の維持は急務だと思いますので、フランツ王太子にお話をしてみましょう」
「頼む」
残念ながらフランツ王太子はお忙しいらしく、直接お会いして話をする事は出来ませんでした。
なのでお手紙を書いて衛兵の現状をお伝えしようと思います。
その後も行政機関をすべて見て回り、色々なお話を聞きました。
大きな不満は無いようですが、細かな不満は沢山あるらしく、それを一つ一つ手紙に書いてフランツ王太子に送ります。
あら? そういえばずっとフランツ王太子にお会いできていませんね。
お忙しそうなので仕方ありません。
それにしても王太子妃の仕事というのは、こんなにも多岐にわたるのですね。
「おお! シオン次期王太子妃! よく来てくれました。ささ、お茶を入れますからどうぞどうぞ」
今日は以前お伺いした衛兵さんの詰め所に来ています。
フランツ王太子にお手紙を送ってから、どうやら衛兵へ割り当てられる金額が増えたようで、新人の衛兵も何人も補充できたのだとか。
良かったです、私の働きが少しでもお役に立てたのですから。
「いやはやいやはや、お嬢ちゃん、おっと、シオン様が王太子妃になるんなら、この国は安泰だな」
「そんな事はありません。国は国民の皆様がいてこそ成り立つのです。私は後方で走り回っているだけですから」
「そんな事はないさ。あちこちで話を聞いて、それを上にあげてくれてるんだろう? みんな感謝していたぜ」
「ふふふ、それが私の役目ですから」
王宮に来て一年が過ぎたので、そろそろ結婚式の話が出てもいい頃ですが……王宮内ではそんな話を聞きません。
そういえばフランツ王太子とも一年は会っていませんね。
そんな時でした、王宮に来て初めてパーティーに呼ばれました。
今までは「王太子妃としての勉強が終わっていないから」と、パーティーに呼ばれた事はありませんでしたが、ここにきて呼ばれるという事は、結婚の発表が行われるのでしょうか。
ああハンス……これであなたとは結ばれる事は無くなってしまうのね。
いえ、覚悟は出来ています。
私は王太子妃として、この国のために身を粉にして働きましょう!
「シオン、君は僕に相応しくないから婚約は破棄する。ザビーネ公爵令嬢と結婚する事にしたから、側室としてなら王宮に残る事を許そう」
パーティーでの発表は私の婚約破棄と、ザビーネ公爵令嬢との婚約の発表でした。
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