不倫ばかりする夫にもう一度振り向いてもらおうとして、自分磨きを頑張ったら王太子が振り向きました

如月ぐるぐる

文字の大きさ
上 下
24 / 28

24 利用できる物は何でも利用する

しおりを挟む
 この日の王太子会議は深夜まで及んだ。
 しっかりと4王太子が話し合った様だけど、セックトン国はどうするのかしら。

 私も会議に参加したいけど、私が出しゃばると同盟自体が瓦解するかもしれないし……もう少し待っていよう。 

 日付が変わってから、やっと会議が終わったみたいだ。

 みんな疲れていると思うけど、一刻も早く話を聞かなきゃ!
 会議室から少し離れた場所で、リチャードを呼び止めた。

「リチャード、ちょっといい?」

 部屋に戻る前のリチャードは私を確認すると、何も言わずに近づいてきた。
 でもとても疲れているのが分かる。表情も動きも疲れてる。

「私の部屋で話をしてもいいかな」

「ええ、大丈夫よ」

 リチャードの部屋に入ると、ソファーに浅く腰掛け、背もたれに体重をかけている。

「ああ、ごめん。女性の前でこんな姿を見せる物ではないね」

「大丈夫よ、疲れているのに無理を言ってるのは私だから」

 私は直ぐに甘めの紅茶を用意した。
 確かお菓子はこの棚に……あった。

「どうぞ、疲れている時は甘いものにかぎるわ」

「ありがとう」

 紅茶を一息で飲み干して、大きく息を吐いた。

「はぁ~、美味しい」

「ふふ、お替りをどうぞ」

 2杯目は一口飲んで、お菓子を口に入れた。

「それでね、会議はどうだったかしら」

「そうだね、まず4カ国会議だけど、セックトン国は随分と前向きだったから、大丈夫だと思うよ」

「あれ? そうなの?」

「ん? ああ、驚いているって事は知っているんだね、リシア連邦とシチーナ共和国側に付いた国の事を」

「ええ、驚いたけど、こちらの動きが遅かったから仕方が無いのかなって」

「そうだね、今3国同盟に加入すると言う事は、リシア連邦とシチーナ共和国に敵対する事だから、セックトン国が味方になる事は無い、私もそう思っていた。でもセックトンは、アーロン王太子はそれでも加盟を選んだんだ」

「つまり、まだまだこちらにも勝てる見込みがあるとの判断ね?」

「そうだ。情報が売りのあの国がそう言うのだから、きっと私達の知らない情報があるんだと思う」

「あれ? その情報は教えてくれなかったの?」

「その情報の価値は計り知れない……随分と高く吹っ掛けられたよ」

「情報の対価は……?」

「4ヶ国同盟の盟主はセックトン国となり、毎年奉納金を支払う事。セックトン王家主催のパーティーには無条件で国王が参加する事、かな」

「何よソレ! 盟主どころか属国扱いじゃない!!!」

 思わず立ち上がって大きな声を上げてしまった。
 他3国の主権すら危うい条件だもの、認める訳にはいかないわ!

「だがその情報が無ければ、国の存続自体が危ういのが現状さ」

「だけど……」

 その条件はきつ過ぎる。
 情報に強い所は相手の弱みも知っているから、容赦なくソコを攻めてくる。
 特に今の私達には喉から手が出るほど欲しい情報……情報を手にして属国になり下がるか、玉砕覚悟で迎え撃つか……そんな選択肢はダメよ!

 一応その情報が無くても対策は考えてあるけど、綱渡りの様な交渉と、見えない糸を手繰り寄せるような作業が必要だ。
 でも、提案くらいはしても良いわよね?

「じゃあ私から代案を出すわ」

「なにかいい手があるのかい?」

「上手くいけば、だけど。実行可能になればリシア連邦とシチーナ共和国の足を止められると思うわ」

 地図を出して説明を開始した。
 
「今私達はリシア連邦とシチーナ共和国に攻められようとしているわ。北にあるココとココね。その最大の理由は国境問題が激化してるからだけど、東西にあるほとんどの国と揉めてるわよね?」

「ああ、あの2国は常に問題を起こしているからね、北には海しか無いから、強気に攻めて行けるのも大きい」

「それで南下を開始した理由は、南にある小国を取り込んで、まずは西の国を海側に追い込んで、孤立させることだと思うんだけど、あってる?」

「……そうだね、西には海があるし、南下と同時に周囲の海も確保できれば、西の国は陸からも海からも孤立する事になる。そうなれば西の国はピンチだ」

「うん。だから交渉に行ったら、味方になってくれるんじゃないかなって」

「なるほど、西の国は大きくはあるけど、包囲されては大きさを生かせないからね。交渉の余地は生まれると思う」

「違う違う。交渉に行くのは東の国の方よ」

「東? 東は何か困った事でも起こっているのかい?」

「起きていないわ。だからこそ行くの。いまが最大のチャンスだから」

「そうか! リシア連邦とシチーナ共和国の2国は南下と西の国に注力しているから、東の戦力は薄い! 今が攻撃のチャンスって言う事か!」

「ええ、攻めないまでも、国境沿いに戦力を集めてもらうだけで、リシア連邦とシチーナ共和国はそちらに戦力を裂かないといけなくなるわ。そうなれば南下作戦の足は鈍ると思うの」

「イングリッド、よくこんな事を思いついたね」

「利用できる物は何でも利用するモノよ? でなきゃ経営者なんてやれないわ」

「この話は明日の朝、三国同盟で話し合おう。その結果、セックトンにどう対応するかが決まるだろう」

「ええ。何もないよりも、一縷いちるの望みがあるだけでも牽制になるものね」

 思わぬところで作戦が役立つ事になったけど、これが上手くいけば万事丸く収まる……わよね?
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...