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24 利用できる物は何でも利用する
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この日の王太子会議は深夜まで及んだ。
しっかりと4王太子が話し合った様だけど、セックトン国はどうするのかしら。
私も会議に参加したいけど、私が出しゃばると同盟自体が瓦解するかもしれないし……もう少し待っていよう。
日付が変わってから、やっと会議が終わったみたいだ。
みんな疲れていると思うけど、一刻も早く話を聞かなきゃ!
会議室から少し離れた場所で、リチャードを呼び止めた。
「リチャード、ちょっといい?」
部屋に戻る前のリチャードは私を確認すると、何も言わずに近づいてきた。
でもとても疲れているのが分かる。表情も動きも疲れてる。
「私の部屋で話をしてもいいかな」
「ええ、大丈夫よ」
リチャードの部屋に入ると、ソファーに浅く腰掛け、背もたれに体重をかけている。
「ああ、ごめん。女性の前でこんな姿を見せる物ではないね」
「大丈夫よ、疲れているのに無理を言ってるのは私だから」
私は直ぐに甘めの紅茶を用意した。
確かお菓子はこの棚に……あった。
「どうぞ、疲れている時は甘いものにかぎるわ」
「ありがとう」
紅茶を一息で飲み干して、大きく息を吐いた。
「はぁ~、美味しい」
「ふふ、お替りをどうぞ」
2杯目は一口飲んで、お菓子を口に入れた。
「それでね、会議はどうだったかしら」
「そうだね、まず4カ国会議だけど、セックトン国は随分と前向きだったから、大丈夫だと思うよ」
「あれ? そうなの?」
「ん? ああ、驚いているって事は知っているんだね、リシア連邦とシチーナ共和国側に付いた国の事を」
「ええ、驚いたけど、こちらの動きが遅かったから仕方が無いのかなって」
「そうだね、今3国同盟に加入すると言う事は、リシア連邦とシチーナ共和国に敵対する事だから、セックトン国が味方になる事は無い、私もそう思っていた。でもセックトンは、アーロン王太子はそれでも加盟を選んだんだ」
「つまり、まだまだこちらにも勝てる見込みがあるとの判断ね?」
「そうだ。情報が売りのあの国がそう言うのだから、きっと私達の知らない情報があるんだと思う」
「あれ? その情報は教えてくれなかったの?」
「その情報の価値は計り知れない……随分と高く吹っ掛けられたよ」
「情報の対価は……?」
「4ヶ国同盟の盟主はセックトン国となり、毎年奉納金を支払う事。セックトン王家主催のパーティーには無条件で国王が参加する事、かな」
「何よソレ! 盟主どころか属国扱いじゃない!!!」
思わず立ち上がって大きな声を上げてしまった。
他3国の主権すら危うい条件だもの、認める訳にはいかないわ!
「だがその情報が無ければ、国の存続自体が危ういのが現状さ」
「だけど……」
その条件はきつ過ぎる。
情報に強い所は相手の弱みも知っているから、容赦なくソコを攻めてくる。
特に今の私達には喉から手が出るほど欲しい情報……情報を手にして属国になり下がるか、玉砕覚悟で迎え撃つか……そんな選択肢はダメよ!
一応その情報が無くても対策は考えてあるけど、綱渡りの様な交渉と、見えない糸を手繰り寄せるような作業が必要だ。
でも、提案くらいはしても良いわよね?
「じゃあ私から代案を出すわ」
「なにかいい手があるのかい?」
「上手くいけば、だけど。実行可能になればリシア連邦とシチーナ共和国の足を止められると思うわ」
地図を出して説明を開始した。
「今私達はリシア連邦とシチーナ共和国に攻められようとしているわ。北にあるココとココね。その最大の理由は国境問題が激化してるからだけど、東西にあるほとんどの国と揉めてるわよね?」
「ああ、あの2国は常に問題を起こしているからね、北には海しか無いから、強気に攻めて行けるのも大きい」
「それで南下を開始した理由は、南にある小国を取り込んで、まずは西の国を海側に追い込んで、孤立させることだと思うんだけど、あってる?」
「……そうだね、西には海があるし、南下と同時に周囲の海も確保できれば、西の国は陸からも海からも孤立する事になる。そうなれば西の国はピンチだ」
「うん。だから交渉に行ったら、味方になってくれるんじゃないかなって」
「なるほど、西の国は大きくはあるけど、包囲されては大きさを生かせないからね。交渉の余地は生まれると思う」
「違う違う。交渉に行くのは東の国の方よ」
「東? 東は何か困った事でも起こっているのかい?」
「起きていないわ。だからこそ行くの。いまが最大のチャンスだから」
「そうか! リシア連邦とシチーナ共和国の2国は南下と西の国に注力しているから、東の戦力は薄い! 今が攻撃のチャンスって言う事か!」
「ええ、攻めないまでも、国境沿いに戦力を集めてもらうだけで、リシア連邦とシチーナ共和国はそちらに戦力を裂かないといけなくなるわ。そうなれば南下作戦の足は鈍ると思うの」
「イングリッド、よくこんな事を思いついたね」
「利用できる物は何でも利用するモノよ? でなきゃ経営者なんてやれないわ」
「この話は明日の朝、三国同盟で話し合おう。その結果、セックトンにどう対応するかが決まるだろう」
「ええ。何もないよりも、一縷の望みがあるだけでも牽制になるものね」
思わぬところで作戦が役立つ事になったけど、これが上手くいけば万事丸く収まる……わよね?
しっかりと4王太子が話し合った様だけど、セックトン国はどうするのかしら。
私も会議に参加したいけど、私が出しゃばると同盟自体が瓦解するかもしれないし……もう少し待っていよう。
日付が変わってから、やっと会議が終わったみたいだ。
みんな疲れていると思うけど、一刻も早く話を聞かなきゃ!
会議室から少し離れた場所で、リチャードを呼び止めた。
「リチャード、ちょっといい?」
部屋に戻る前のリチャードは私を確認すると、何も言わずに近づいてきた。
でもとても疲れているのが分かる。表情も動きも疲れてる。
「私の部屋で話をしてもいいかな」
「ええ、大丈夫よ」
リチャードの部屋に入ると、ソファーに浅く腰掛け、背もたれに体重をかけている。
「ああ、ごめん。女性の前でこんな姿を見せる物ではないね」
「大丈夫よ、疲れているのに無理を言ってるのは私だから」
私は直ぐに甘めの紅茶を用意した。
確かお菓子はこの棚に……あった。
「どうぞ、疲れている時は甘いものにかぎるわ」
「ありがとう」
紅茶を一息で飲み干して、大きく息を吐いた。
「はぁ~、美味しい」
「ふふ、お替りをどうぞ」
2杯目は一口飲んで、お菓子を口に入れた。
「それでね、会議はどうだったかしら」
「そうだね、まず4カ国会議だけど、セックトン国は随分と前向きだったから、大丈夫だと思うよ」
「あれ? そうなの?」
「ん? ああ、驚いているって事は知っているんだね、リシア連邦とシチーナ共和国側に付いた国の事を」
「ええ、驚いたけど、こちらの動きが遅かったから仕方が無いのかなって」
「そうだね、今3国同盟に加入すると言う事は、リシア連邦とシチーナ共和国に敵対する事だから、セックトン国が味方になる事は無い、私もそう思っていた。でもセックトンは、アーロン王太子はそれでも加盟を選んだんだ」
「つまり、まだまだこちらにも勝てる見込みがあるとの判断ね?」
「そうだ。情報が売りのあの国がそう言うのだから、きっと私達の知らない情報があるんだと思う」
「あれ? その情報は教えてくれなかったの?」
「その情報の価値は計り知れない……随分と高く吹っ掛けられたよ」
「情報の対価は……?」
「4ヶ国同盟の盟主はセックトン国となり、毎年奉納金を支払う事。セックトン王家主催のパーティーには無条件で国王が参加する事、かな」
「何よソレ! 盟主どころか属国扱いじゃない!!!」
思わず立ち上がって大きな声を上げてしまった。
他3国の主権すら危うい条件だもの、認める訳にはいかないわ!
「だがその情報が無ければ、国の存続自体が危ういのが現状さ」
「だけど……」
その条件はきつ過ぎる。
情報に強い所は相手の弱みも知っているから、容赦なくソコを攻めてくる。
特に今の私達には喉から手が出るほど欲しい情報……情報を手にして属国になり下がるか、玉砕覚悟で迎え撃つか……そんな選択肢はダメよ!
一応その情報が無くても対策は考えてあるけど、綱渡りの様な交渉と、見えない糸を手繰り寄せるような作業が必要だ。
でも、提案くらいはしても良いわよね?
「じゃあ私から代案を出すわ」
「なにかいい手があるのかい?」
「上手くいけば、だけど。実行可能になればリシア連邦とシチーナ共和国の足を止められると思うわ」
地図を出して説明を開始した。
「今私達はリシア連邦とシチーナ共和国に攻められようとしているわ。北にあるココとココね。その最大の理由は国境問題が激化してるからだけど、東西にあるほとんどの国と揉めてるわよね?」
「ああ、あの2国は常に問題を起こしているからね、北には海しか無いから、強気に攻めて行けるのも大きい」
「それで南下を開始した理由は、南にある小国を取り込んで、まずは西の国を海側に追い込んで、孤立させることだと思うんだけど、あってる?」
「……そうだね、西には海があるし、南下と同時に周囲の海も確保できれば、西の国は陸からも海からも孤立する事になる。そうなれば西の国はピンチだ」
「うん。だから交渉に行ったら、味方になってくれるんじゃないかなって」
「なるほど、西の国は大きくはあるけど、包囲されては大きさを生かせないからね。交渉の余地は生まれると思う」
「違う違う。交渉に行くのは東の国の方よ」
「東? 東は何か困った事でも起こっているのかい?」
「起きていないわ。だからこそ行くの。いまが最大のチャンスだから」
「そうか! リシア連邦とシチーナ共和国の2国は南下と西の国に注力しているから、東の戦力は薄い! 今が攻撃のチャンスって言う事か!」
「ええ、攻めないまでも、国境沿いに戦力を集めてもらうだけで、リシア連邦とシチーナ共和国はそちらに戦力を裂かないといけなくなるわ。そうなれば南下作戦の足は鈍ると思うの」
「イングリッド、よくこんな事を思いついたね」
「利用できる物は何でも利用するモノよ? でなきゃ経営者なんてやれないわ」
「この話は明日の朝、三国同盟で話し合おう。その結果、セックトンにどう対応するかが決まるだろう」
「ええ。何もないよりも、一縷の望みがあるだけでも牽制になるものね」
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