不倫ばかりする夫にもう一度振り向いてもらおうとして、自分磨きを頑張ったら王太子が振り向きました

如月ぐるぐる

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「フィリップ王太子、お話があるのですが、今からよろしいでしょうか?」

 朝食が終わった後、私はフィリップ王太子に声をかけた。
 昨晩考えた案を伝えるためだ。

「ええ、構いませんよ。会議室でよろしいですか?」

「はい、開いてる部屋ならどこで――」

「おおーっと待つんんだ! 大事な人物を忘れてはいないか!?」

 アーロン王太子が割り込んできた。
 むぅ、朝食が一緒だから、おちおち作戦会議も出来ないわね。

「アーロン王太子、私とイングリッド王女の2人の関係に割って入るのは諦めてくれないか? 仮とはいえ国同士が決めた婚姻相手なんだ、ヘタにちょっかいを出すと国家間の問題へと発展してしまうよ?」

「ぐ……ま、まぁ今日の所は引っ込んでおこう。しかーし! 俺は諦めたわけでは無いからな!」

 絶対に負ける捨て台詞を吐いて、アーロン王太子は出て行った。
 明日からもずっとあの調子でしゃしゃり出てくるのかな……食事の時間をずらそうかしら。

「イングリッドさん、行きましょうか」

「あ、はい」

 会議室ではとても順調に打ち合わせが出来た。
 フィリップ王太子は話を遮ったりしないし、しっかりと聞いてくれて的確な指摘や、良い質問もしてくれる。
 いいわよね、こういうの。

「それではこの話は王太子会議に通します。それぞれの対応や問題点はその時に改めて」

「ええ、お願いします」

 会議室を出て自室に戻った。
 リチャードとお兄様は明日には到着する予定だ。
 その時にセックトン国を入れた4ヶ国同盟にするかの話、そしてリシア連邦とシチーナ共和国に隣接する2つの国への対処が話し合われる。
 可否は予想してるけど、違う意見も出てくるだろうから、その時はリチャードとフィリップ王太子に任せる事になる。
 緩衝地帯として、そして直接接するのを防ぐためにも、必ず2国とは同盟を結びたい。

 ネックなのはウチの国なのよね……。
 ちょっと経済に影響が出てきちゃうから。

 翌朝、かなり早い時間にリチャードとお兄様が到着した。
 随分と急いできたみたいだけど、どうしたのかしら。

 出迎えにいくと、お兄様は相変わらず私を無視したから、リチャードに会いに行ったけど、リチャードまで会釈だけして素通りしていった。
 これは……ただ事じゃないわね。

 とは言え調べる手段が無いから、私は部屋で待つ事にした。
 すると部屋には紙が1枚落ちている。
 まさかもう調べたの? たった今なのよ?

 紙を拾うと、そこには衝撃の事実が書かれていた。
 連邦・共和国と私達の間にある2国が、敵側に付いたというのだ。
 
 遅かった……全てが後手後手に回ったせいだ……もっとしっかりと情報収集をしていたらこんな事には……いえ、今はそんな事を考えても始まらないわ。
 2国が敵に回った事で、実質私の祖国・ロイツェン=バッハはシリア連邦・シチーナ共和国の直接的な恐怖におびえる事になる。

 ロイツェン=バッハは敵の攻撃の矢面に立ち、強大な2カ国と戦わなくてはいけない。

 もちろんイースター国とシュタット国からの援護はある。
 でも兵力では数倍の相手だ、武器だけでどうにかなる事は無い。
 これは危険だわ……まだ4ヶ国同盟が締結されていない今、セックトン国は同盟に入らないかもしれない。
 今ならまだ向こうに付ける可能性がある。

 今や3国同盟は風前の灯火……そんな船に乗る必要は無い。

 はぁ……2国がこちらに付いていれば、兵力差は随分と狭まるから交渉の余地があったのに。
 倍どころではなくなってしまった。
 じゃあ他の国と同盟を組めない? ううんムリ、3国同盟に入ると言う事は、連邦・共和国と敵対する事を意味する。
 
 絶望。その2文字が頭に浮かぶ。

 直接対決をしたら必ず負ける。
 なら兵力差を埋めるために、どこでもいいから同盟を組む?
 地図を広げる。

 周囲の国で同盟が組めそうな国は……無いわね。
 ロイツェン=バッハよりもシリア連邦・シチーナ共和国に近い国は向こうに取り込まれる。
 遠い国は様子をうかがうだけで、積極的な動きはしないだろう。

 他の手は……他に何かない!? なんでもいい、起死回生といわなくても、向こうの足が止まるような事なら何でもいいの!
 地図とにらめっこをしていると、ふとある場所が目に入る。

 ……これ、利用できないかしら。
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