23 / 28
23 誤算
しおりを挟む
「フィリップ王太子、お話があるのですが、今からよろしいでしょうか?」
朝食が終わった後、私はフィリップ王太子に声をかけた。
昨晩考えた案を伝えるためだ。
「ええ、構いませんよ。会議室でよろしいですか?」
「はい、開いてる部屋ならどこで――」
「おおーっと待つんんだ! 大事な人物を忘れてはいないか!?」
アーロン王太子が割り込んできた。
むぅ、朝食が一緒だから、おちおち作戦会議も出来ないわね。
「アーロン王太子、私とイングリッド王女の2人の関係に割って入るのは諦めてくれないか? 仮とはいえ国同士が決めた婚姻相手なんだ、ヘタにちょっかいを出すと国家間の問題へと発展してしまうよ?」
「ぐ……ま、まぁ今日の所は引っ込んでおこう。しかーし! 俺は諦めたわけでは無いからな!」
絶対に負ける捨て台詞を吐いて、アーロン王太子は出て行った。
明日からもずっとあの調子でしゃしゃり出てくるのかな……食事の時間をずらそうかしら。
「イングリッドさん、行きましょうか」
「あ、はい」
会議室ではとても順調に打ち合わせが出来た。
フィリップ王太子は話を遮ったりしないし、しっかりと聞いてくれて的確な指摘や、良い質問もしてくれる。
いいわよね、こういうの。
「それではこの話は王太子会議に通します。それぞれの対応や問題点はその時に改めて」
「ええ、お願いします」
会議室を出て自室に戻った。
リチャードとお兄様は明日には到着する予定だ。
その時にセックトン国を入れた4ヶ国同盟にするかの話、そしてリシア連邦とシチーナ共和国に隣接する2つの国への対処が話し合われる。
可否は予想してるけど、違う意見も出てくるだろうから、その時はリチャードとフィリップ王太子に任せる事になる。
緩衝地帯として、そして直接接するのを防ぐためにも、必ず2国とは同盟を結びたい。
ネックなのはウチの国なのよね……。
ちょっと経済に影響が出てきちゃうから。
翌朝、かなり早い時間にリチャードとお兄様が到着した。
随分と急いできたみたいだけど、どうしたのかしら。
出迎えにいくと、お兄様は相変わらず私を無視したから、リチャードに会いに行ったけど、リチャードまで会釈だけして素通りしていった。
これは……ただ事じゃないわね。
とは言え調べる手段が無いから、私は部屋で待つ事にした。
すると部屋には紙が1枚落ちている。
まさかもう調べたの? たった今なのよ?
紙を拾うと、そこには衝撃の事実が書かれていた。
連邦・共和国と私達の間にある2国が、敵側に付いたというのだ。
遅かった……全てが後手後手に回ったせいだ……もっとしっかりと情報収集をしていたらこんな事には……いえ、今はそんな事を考えても始まらないわ。
2国が敵に回った事で、実質私の祖国・ロイツェン=バッハはシリア連邦・シチーナ共和国の直接的な恐怖におびえる事になる。
ロイツェン=バッハは敵の攻撃の矢面に立ち、強大な2カ国と戦わなくてはいけない。
もちろんイースター国とシュタット国からの援護はある。
でも兵力では数倍の相手だ、武器だけでどうにかなる事は無い。
これは危険だわ……まだ4ヶ国同盟が締結されていない今、セックトン国は同盟に入らないかもしれない。
今ならまだ向こうに付ける可能性がある。
今や3国同盟は風前の灯火……そんな船に乗る必要は無い。
はぁ……2国がこちらに付いていれば、兵力差は随分と狭まるから交渉の余地があったのに。
倍どころではなくなってしまった。
じゃあ他の国と同盟を組めない? ううんムリ、3国同盟に入ると言う事は、連邦・共和国と敵対する事を意味する。
絶望。その2文字が頭に浮かぶ。
直接対決をしたら必ず負ける。
なら兵力差を埋めるために、どこでもいいから同盟を組む?
地図を広げる。
周囲の国で同盟が組めそうな国は……無いわね。
ロイツェン=バッハよりもシリア連邦・シチーナ共和国に近い国は向こうに取り込まれる。
遠い国は様子をうかがうだけで、積極的な動きはしないだろう。
他の手は……他に何かない!? なんでもいい、起死回生といわなくても、向こうの足が止まるような事なら何でもいいの!
地図とにらめっこをしていると、ふとある場所が目に入る。
……これ、利用できないかしら。
朝食が終わった後、私はフィリップ王太子に声をかけた。
昨晩考えた案を伝えるためだ。
「ええ、構いませんよ。会議室でよろしいですか?」
「はい、開いてる部屋ならどこで――」
「おおーっと待つんんだ! 大事な人物を忘れてはいないか!?」
アーロン王太子が割り込んできた。
むぅ、朝食が一緒だから、おちおち作戦会議も出来ないわね。
「アーロン王太子、私とイングリッド王女の2人の関係に割って入るのは諦めてくれないか? 仮とはいえ国同士が決めた婚姻相手なんだ、ヘタにちょっかいを出すと国家間の問題へと発展してしまうよ?」
「ぐ……ま、まぁ今日の所は引っ込んでおこう。しかーし! 俺は諦めたわけでは無いからな!」
絶対に負ける捨て台詞を吐いて、アーロン王太子は出て行った。
明日からもずっとあの調子でしゃしゃり出てくるのかな……食事の時間をずらそうかしら。
「イングリッドさん、行きましょうか」
「あ、はい」
会議室ではとても順調に打ち合わせが出来た。
フィリップ王太子は話を遮ったりしないし、しっかりと聞いてくれて的確な指摘や、良い質問もしてくれる。
いいわよね、こういうの。
「それではこの話は王太子会議に通します。それぞれの対応や問題点はその時に改めて」
「ええ、お願いします」
会議室を出て自室に戻った。
リチャードとお兄様は明日には到着する予定だ。
その時にセックトン国を入れた4ヶ国同盟にするかの話、そしてリシア連邦とシチーナ共和国に隣接する2つの国への対処が話し合われる。
可否は予想してるけど、違う意見も出てくるだろうから、その時はリチャードとフィリップ王太子に任せる事になる。
緩衝地帯として、そして直接接するのを防ぐためにも、必ず2国とは同盟を結びたい。
ネックなのはウチの国なのよね……。
ちょっと経済に影響が出てきちゃうから。
翌朝、かなり早い時間にリチャードとお兄様が到着した。
随分と急いできたみたいだけど、どうしたのかしら。
出迎えにいくと、お兄様は相変わらず私を無視したから、リチャードに会いに行ったけど、リチャードまで会釈だけして素通りしていった。
これは……ただ事じゃないわね。
とは言え調べる手段が無いから、私は部屋で待つ事にした。
すると部屋には紙が1枚落ちている。
まさかもう調べたの? たった今なのよ?
紙を拾うと、そこには衝撃の事実が書かれていた。
連邦・共和国と私達の間にある2国が、敵側に付いたというのだ。
遅かった……全てが後手後手に回ったせいだ……もっとしっかりと情報収集をしていたらこんな事には……いえ、今はそんな事を考えても始まらないわ。
2国が敵に回った事で、実質私の祖国・ロイツェン=バッハはシリア連邦・シチーナ共和国の直接的な恐怖におびえる事になる。
ロイツェン=バッハは敵の攻撃の矢面に立ち、強大な2カ国と戦わなくてはいけない。
もちろんイースター国とシュタット国からの援護はある。
でも兵力では数倍の相手だ、武器だけでどうにかなる事は無い。
これは危険だわ……まだ4ヶ国同盟が締結されていない今、セックトン国は同盟に入らないかもしれない。
今ならまだ向こうに付ける可能性がある。
今や3国同盟は風前の灯火……そんな船に乗る必要は無い。
はぁ……2国がこちらに付いていれば、兵力差は随分と狭まるから交渉の余地があったのに。
倍どころではなくなってしまった。
じゃあ他の国と同盟を組めない? ううんムリ、3国同盟に入ると言う事は、連邦・共和国と敵対する事を意味する。
絶望。その2文字が頭に浮かぶ。
直接対決をしたら必ず負ける。
なら兵力差を埋めるために、どこでもいいから同盟を組む?
地図を広げる。
周囲の国で同盟が組めそうな国は……無いわね。
ロイツェン=バッハよりもシリア連邦・シチーナ共和国に近い国は向こうに取り込まれる。
遠い国は様子をうかがうだけで、積極的な動きはしないだろう。
他の手は……他に何かない!? なんでもいい、起死回生といわなくても、向こうの足が止まるような事なら何でもいいの!
地図とにらめっこをしていると、ふとある場所が目に入る。
……これ、利用できないかしら。
15
お気に入りに追加
1,695
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います
菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。
その隣には見知らぬ女性が立っていた。
二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。
両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。
メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。
数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。
彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。
※ハッピーエンド&純愛
他サイトでも掲載しております。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる