不倫ばかりする夫にもう一度振り向いてもらおうとして、自分磨きを頑張ったら王太子が振り向きました

如月ぐるぐる

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22 理解できない相手

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 豪華な馬車にはセックトンの紋章が刻まれている。
 それにあの声の大きな人、ここからじゃ顔が見えないけど……フィリップ王太子に普通に話しかけてたけど、王族かもしれない。

「この時期に来るって事は、3国同盟に参加したいと言う事かしら。それなら私は部屋に戻って次の事を考えていよう」

 国が一つ増えた事で、リシア連邦とシチーナ共和国への対策が取りやすくなる。
 2国と3国同盟の間には緩衝地帯となる国がいくつかある。
 その国も同盟に参加して欲しいのだけど……向こうも南下する2国に対抗する手段が欲しいはずだし、飛びついてくると思うんだけどな。

 そっちの材料も探しておこうかしら。

 部屋で資料を見ながらウンウン唸っていると、扉が乱暴に叩かれた。

「きゃ、な、なによ一体。はい、どうぞ」

 資料を急いで片づけ、扉を開ける。
 するとそこには見た事のない男の人が立っていた。

「おお、やっぱりここだったのか。外で見た時も美しかったが、やはりここでも美しいな」

 ??? なんの話かしら。それにこの人は誰? 見たところ身なりはいいけど……それにしても背の高い人ね。

「こらアーロン王太子、イングリッドさんが驚いてるじゃないか」

「おおすまんすまん。イングリッドというのか、俺はアーロン、セックトンのアーロンだ」

「え? はいはじめまして、イングリッドと申します」

 フィリップ王太子の知り合いなら、一応失礼のないようにした方がいいわね。
 それにしても読書が似合いそうなフィリップ王太子に、こんな知り合いがいたなんて意外だわ。

「うむ。それではフィリップ王太子は早々に諦めて、俺に乗り換えろ」

「は?」

 思わず眉間にシワを寄せた。
 何よこの失礼な人は。フィリップ王太子を諦めろ? そもそも話を無くそうとしているから構わないけど、どうしてこんな失礼な人に乗り換えないといけないの?
 

「うをっほん! 本人を目の前にしてそれはどうかと思うぞアーロン王太子? それにイングリッドさんと私は国同士が決めた関係だ、簡単には変えられないな」

 あ、う、うん……もう無しにしても良いと思うけどな。

「はっはっは! 国が決めた事だと? 俺ならそんな物は関係なしに気に入った女は落すぞ!」

 ムカツク言い方だけど、それに関しては同意するわ。
 国に伴侶を決められるなんてまっぴらよ。
 
「そうですね、国に決められるなんて嫌ですよね」

「おお! 気が合うな。では俺と――」

「国に決められるのは嫌ですが、女性の気持ちも考えずに、一方的に自分の言い分を押し付ける男性なんてもっとイヤですけど」

 この人キライ。
 この手のタイプは最初に完全拒否するに限るわね。
 じゃないといつまでも言い続けるから。

「まったくだ! その点俺は女の事を第一に考えている! やっぱり俺がピッタリじゃないか!」

 !?!?!? え? え? どういう事? 私の言った事、理解できてないの?
 ちょっとごめんなさい、何を言っているのか分からないわ。

「アーロン王太子、今日はその辺にしておいてくれ。まだ会議が終わっていないんだから」

「ん? そうだったか? しかし会議ならいつでもできるから、今はイングリッドを――」

「アー・ロ・ン・王・太・子」

「う、うむ仕方が無いな、それでははイングリッド。寂しいと思うが、しばらく待っていてくれ」

 そう言ってフィリップ王太子に引きずられて出て行った。
 う……うう? うう……分からないわ……全く分からない。
 いったいどんな頭の構造をしているのかしら。
 ああ、ダメダメ、こんな事で混乱させられてはダメよ、今はやる事があるの、深呼吸して、スーハースーハー。

「よし! 部屋には誰も来なかった!」

 気持ちを切り替えて、私はまた資料とにらめっこを始めた。

 それからしばらくして、何とかリシア連邦とシチーナ共和国と隣接する国との合流方法を思いついた私は、急いで紙に清書を始めた。
 うんうん、これが上手くいけば、あの2国とも対抗できるかもしれない。
 戦力的には負けてるけど、地形を上手くいかせれば行けそうな気がするわ。

「よし! コレをフィリップ王太子に見せて……あら? 外が暗いわね、カーテンを閉めたままだったかしら」

 カーテンを開けると、外は真っ暗になっていた。
 しゅ、集中し過ぎたみたい。
 王太子に見せるのは明日にした方が良さそうね。
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