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15 男って何考えてるのかしら
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翌日には何とか気を持ち直し、朝食を頂く事にした。
「やあおはようイングリッド。今日も君の爽やかな笑顔が見れて幸せだよ」
「ああイングリッドさんでしたか、てっきり妖精さんかと思いました」
まだ続いてた!
「あ、あの2人とも? 流石にもう許して欲しいんですけど……」
朝食会場には私とリチャード、フィリップ王太子の3人だけだった。
何かしら、妙な気を使われてる気がするわ。
「おっとすまない。フィリップ、イングリッドが困っているから控えめにしよう」
「そうだなリチャード。愛しい人を困らせてはいけない」
ん? いま呼び捨てにしてた?
昨日までは喧嘩をしてたのに?
一緒に朝食を頂いたけど、やっぱり2人は呼び捨てにしてた。
どういう事? しかも凄く仲良くなってる。
「さてイングリッド、私達の婚姻関係の事だけど、いま話をしてもいいかい?」
「……ええ、構わないわ」
「それではまず、フィリップとの婚姻の話だけど……一旦保留になった」
「え? 昨日はそれを決める勝負をしたんじゃなかったの?」
「イングリッドさんは昨日部屋を出てしまったけど、勝負は引き分けになったんです。なので勝負は無効です」
「そ、そうなんですか?」
「さらに追加で言うと、2カ国の王太子が1人の女性を奪い合うという形になり、しかも国をあげて自国へ迎えようとしている。簡単な話ではなくなってしまったんだ」
言われてみればそうよね。
確かに最初はイースター国のリチャードだったけど、シュタット国のフィリップ王太子はそんな話は知らないだろうし、勝手に決めたら両国に確執が残ってしまうわ。
少しホッとした。これで時間を出来たわね。
それにしても、そっか、今の私って、とっても微妙な立場に居るのよね。
どっちについても片方は悲しませちゃうし。
って待って私、私はもう結婚してるの! 旦那様が居るの! どっちとか関係ないんだよ!?
はぁ、なんでだろう、やっぱり逃げるように城を出たのがいけなかったのかな。
「だからしばらくは私達はイングリッドに対して、プロポーズは行わない決まりになったんだ」
「残念ですが、両国に確執を残すわけにはいきませんからね。イングリッドさん、話が纏まるまでしばらくお待ちください」
「ええ、それでは仕方がありませんよね。というよりも、私には夫がおりますのでこの話はもう――」
「失礼します」
ドアが開いて、執事さんが部屋に入ってきた。
「フィリップ様、リチャード様、陛下がおいでになられましたので、こちらへどうぞ」
「そうか、随分とお早いな」
「父上の事だ、寝ずに馬車を走らせたんだろう」
??? 陛下ってシュタット国の陛下じゃないの? 寝ずに馬車? いやいや、リチャードが父上って言ったわよね?
何を言っているの?
「デスカス陛下はもう部屋に?」
「はい。陛下はすでにお待ちになっておられます」
……もしかして、イースター国の国王陛下が、わざわざシュタット国に来られたの?
そして今からみんなで話し合う……って事?
え? え? なにそれ聞いてないわよ?
「あ、あの、私も行くのですか?」
「いや、イングリッドは来なくていいよ。男同士の話し合いになるだろうから、君は普段通りしていてくれ」
そう言って2人は部屋を出て行った。
えっと、両国の陛下と王太子が集まって、話合いをするのよね?
内容は……私……かな。
わ、私が思ってるよりも大ごとになってる~!
ちょっと待ってよ! そりゃ第二王女の意思なんて関係なしに婚姻が結ばれるのは当たり前だけど、どうして2国間で、しかも国王同士が話し合う事になるの~!?
いくら何でも大げさすぎよ!
ま、まずい、早く良い案をださないと、このままじゃ国に帰れなくなるわ!
何としてもシュタット国の軍備をロイツェン=バッハに輸入しないと!
急いで用意された自室に戻り、思案を巡らせる。
テーブルに紙を置いて、今までの話を纏めてみた。
・友好を結んでない国には武器を輸出できない
・友好を結ぶには私との婚姻が前提
・シュタット国は資金難
・ロイツェン=バッハは優れた武器が欲しい
・私は武器を持って帰らないと最悪の結果が待ってる
詰んでる! このままじゃ私がシュタットに嫁がないとダメじゃない!
こんなのどうしたらいいのよ……シュタット国の財政を立て直しても友好を結べないなら、他の方法で友好を結ぶ方法が無いか考えなきゃ。
でもそれにはお父様の許可もいるし、勝手な事をして意にそぐわなければやっぱりダメ。
「ああ、何にも思いつかない……散歩でもしてこよう」
城の中を当てもなく歩き、庭で花を見ていると、近くで子供たちがボール遊びをしていた。
ああ、貴族の子供達ね。小さくてカワイイ。
ボールを両手で投げて、もう一人の子が受け取り、それをまた別の子に投げている。
3人でボール投げをしてるのね。
……ん? そうだわ、これならいけるかもしれない!
「やあおはようイングリッド。今日も君の爽やかな笑顔が見れて幸せだよ」
「ああイングリッドさんでしたか、てっきり妖精さんかと思いました」
まだ続いてた!
「あ、あの2人とも? 流石にもう許して欲しいんですけど……」
朝食会場には私とリチャード、フィリップ王太子の3人だけだった。
何かしら、妙な気を使われてる気がするわ。
「おっとすまない。フィリップ、イングリッドが困っているから控えめにしよう」
「そうだなリチャード。愛しい人を困らせてはいけない」
ん? いま呼び捨てにしてた?
昨日までは喧嘩をしてたのに?
一緒に朝食を頂いたけど、やっぱり2人は呼び捨てにしてた。
どういう事? しかも凄く仲良くなってる。
「さてイングリッド、私達の婚姻関係の事だけど、いま話をしてもいいかい?」
「……ええ、構わないわ」
「それではまず、フィリップとの婚姻の話だけど……一旦保留になった」
「え? 昨日はそれを決める勝負をしたんじゃなかったの?」
「イングリッドさんは昨日部屋を出てしまったけど、勝負は引き分けになったんです。なので勝負は無効です」
「そ、そうなんですか?」
「さらに追加で言うと、2カ国の王太子が1人の女性を奪い合うという形になり、しかも国をあげて自国へ迎えようとしている。簡単な話ではなくなってしまったんだ」
言われてみればそうよね。
確かに最初はイースター国のリチャードだったけど、シュタット国のフィリップ王太子はそんな話は知らないだろうし、勝手に決めたら両国に確執が残ってしまうわ。
少しホッとした。これで時間を出来たわね。
それにしても、そっか、今の私って、とっても微妙な立場に居るのよね。
どっちについても片方は悲しませちゃうし。
って待って私、私はもう結婚してるの! 旦那様が居るの! どっちとか関係ないんだよ!?
はぁ、なんでだろう、やっぱり逃げるように城を出たのがいけなかったのかな。
「だからしばらくは私達はイングリッドに対して、プロポーズは行わない決まりになったんだ」
「残念ですが、両国に確執を残すわけにはいきませんからね。イングリッドさん、話が纏まるまでしばらくお待ちください」
「ええ、それでは仕方がありませんよね。というよりも、私には夫がおりますのでこの話はもう――」
「失礼します」
ドアが開いて、執事さんが部屋に入ってきた。
「フィリップ様、リチャード様、陛下がおいでになられましたので、こちらへどうぞ」
「そうか、随分とお早いな」
「父上の事だ、寝ずに馬車を走らせたんだろう」
??? 陛下ってシュタット国の陛下じゃないの? 寝ずに馬車? いやいや、リチャードが父上って言ったわよね?
何を言っているの?
「デスカス陛下はもう部屋に?」
「はい。陛下はすでにお待ちになっておられます」
……もしかして、イースター国の国王陛下が、わざわざシュタット国に来られたの?
そして今からみんなで話し合う……って事?
え? え? なにそれ聞いてないわよ?
「あ、あの、私も行くのですか?」
「いや、イングリッドは来なくていいよ。男同士の話し合いになるだろうから、君は普段通りしていてくれ」
そう言って2人は部屋を出て行った。
えっと、両国の陛下と王太子が集まって、話合いをするのよね?
内容は……私……かな。
わ、私が思ってるよりも大ごとになってる~!
ちょっと待ってよ! そりゃ第二王女の意思なんて関係なしに婚姻が結ばれるのは当たり前だけど、どうして2国間で、しかも国王同士が話し合う事になるの~!?
いくら何でも大げさすぎよ!
ま、まずい、早く良い案をださないと、このままじゃ国に帰れなくなるわ!
何としてもシュタット国の軍備をロイツェン=バッハに輸入しないと!
急いで用意された自室に戻り、思案を巡らせる。
テーブルに紙を置いて、今までの話を纏めてみた。
・友好を結んでない国には武器を輸出できない
・友好を結ぶには私との婚姻が前提
・シュタット国は資金難
・ロイツェン=バッハは優れた武器が欲しい
・私は武器を持って帰らないと最悪の結果が待ってる
詰んでる! このままじゃ私がシュタットに嫁がないとダメじゃない!
こんなのどうしたらいいのよ……シュタット国の財政を立て直しても友好を結べないなら、他の方法で友好を結ぶ方法が無いか考えなきゃ。
でもそれにはお父様の許可もいるし、勝手な事をして意にそぐわなければやっぱりダメ。
「ああ、何にも思いつかない……散歩でもしてこよう」
城の中を当てもなく歩き、庭で花を見ていると、近くで子供たちがボール遊びをしていた。
ああ、貴族の子供達ね。小さくてカワイイ。
ボールを両手で投げて、もう一人の子が受け取り、それをまた別の子に投げている。
3人でボール投げをしてるのね。
……ん? そうだわ、これならいけるかもしれない!
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