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13 2人の王太子、ご対面
しおりを挟む「それではこちらへどうぞ」
しばらく休憩をした後、シュタット国の城内を案内され、色々な場所を見て回っている。
どうしよう、早く話をしたいんだけど、城内の雰囲気を見ていると断れない。
なぜだかイースター国と同じように、私を歓迎している。
これで国王様や王妃様まで歓迎していたら、イースター国とおんなじになっちゃう。
私は早く武器輸出の話をしたいのに。
でもこの城の雰囲気、私が嫁いだら資金調達が出来るというだけじゃ無い様な……?
ひょっとして、武器輸出と資金調達以外にも何かあるのかしら。
「あのフィリップ王太子、少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」
「話ですか? なんでしょう」
「あ、出来れば2人で話したいので、どこか2人になれる場所が良いのですが」
キャ~と黄色い声が周囲から上がる。
え? なになに? どうした……は! 違うのよ! そんな色っぽい話じゃないのよ!!!
「であれば、僕の部屋がいいでしょう。よろしいですか?」
フィリップ王太子の部屋に入ると、王太子はメイド達を部屋から出て行くよう命令した。
ああそっか、どこの部屋に行っても必ずメイドが付いて来るのね。
自室なら追い出してもいい、と。
……私を信用してくれてるのかな?
「どうぞおかけください。それで、お話とは?」
ソファーに座るとフィリップ王太子は正面に座った。
「今回は私を妃として迎えたいと聞きましたが、その理由はシュタット国の財政難にある、そう考えてよろしいでしょうか?」
「そうですね。それも理由の一つです」
「我がロイツェン=バッハ国は貴国の武器を欲している、それもご存知ですね?」
「承知しています」
「であれば、私がシュタット国の財政を立て直せば、理由の一つが無くなり、我が国に武器を輸出する事は可能ですか?」
「それは出来ません。財政を立て直して頂けるのは助かりますが、未だ友好国ですらないロイツェン=バッハ国に、我が国の最大の強みである武器を輸出する事は出来ません」
「それでは友好を結べれば――」
「そのための婚姻なのですから」
グ……それを何とかしたいんだけど、友好は婚姻ありきで話が進んでるようだし、他に友好を結ぶ手が無いか考えないと。
「それにコレは個人的な事ですが……私は以前からあなたの事を知っていました」
「え? 私は王家が嫌で逃げた女ですよ? どうして私の事を?」
「王家を抜け出して木こりの家に転がり込み、そこで事業が成功して国有数の商店を作り上げた。実は王家の中で一番優秀なのはイングリッドさん、あなたではないかと話題になっていたのですから」
どういう事? 私なんかよりお姉様の方が優秀だし、勉強はお兄様に教えてもらってたし、運動はからっきしだし。
そんな私が優秀? 偶然当たった仕事だけで判断されてるの?
「しかし商店は偶然当たっただけで、私個人としては大した事はしておりませんよ?」
「偶然だけで、あそこまで大きくは出来ません。ご存知ですか? 他国にもあなたの店のファンが沢山いるんですよ」
それは知ってる。遠い国からざわざわ買い付けに来る人もいるし、隣国からは頻繁に買いに来る人がいる。
でもそれとどういう関係があるの?
「あなたは自分がどれだけ有名人なのか、どれだけ憧れの的であるか、もっと自覚した方がよいでしょう。もちろん私もあなたのファンですし、何回もお店には行っています」
「王太子ならば、声をかけて頂ければこちらから運びましたのに」
「いえいえ、アクセサリーももちろんですが、私はあなたを見に行っていたのです。残念ながらお会いできませんでしたが、ウワサにたがわない美しさですね」
どうしよう、フィリップ王太子は武器の輸出はしないって言ってるし、友好を結ぶには婚姻が前提みたい。
こんなのどうしろっていうのよ。
婚姻による友好よりも、もっと魅力的な条件があればいいんだけど……今の私に出来る事なんて、お店の支店をこの国に出すとか、その程度しか出来ない。
でもそれじゃ国同士の友好にはつながらない。
ドアがノックされた。
誰も入って来るなと王太子が念を押していたのに、それでも言う必要がある用事?
王太子がドアを開けると、そこには執事さんがハンカチで汗を拭きながら焦っている。
どうしたんだろう、あんなに汗をかいて。
「なに? イースター国のリチャード王太子が、イングリッドさんを返せと言っている、だと?」
……え? リチャードが? 確かにリチャードにはプロポーズされたけど、間違いなく断ったはずだ。
それに返せって、私は旦那様が居るんですけど!?
「ここに居るのかイングリッド!」
リチャードの声がする。
執事さんを押しのけてリチャードが部屋に入ってきた。
わ、本当に来てたんだ!
「無礼な、イースター国の王太子とはいえ、他国の王族に対してその振る舞い、許されると御思いか?」
「無礼はどちらだ! 私はずっとイングリッドにプロポーズをしているんだ。それを横取りしようなどと、どういう了見か!」
え? あれって進行中だったの?
てっきり終わった話だと思ってた。
「ふん! 君が個人的にプロポーズしたところで、こちらは両国間で合意がされているんだ。横取りなどではないな」
「それがどうした! 私はイングリッドの為ならば、国など捨てて2人で逃げる覚悟がある!」
2人が睨みあってる。
あわわ、どうしてこんな事になってるの? 私は結婚してるっていうのに。
「「ならば決闘だ!」」
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