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12 軍事国家の知的な美青年
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隣国のシュタット国、その国の王太子から婚姻の話が来ていると言われ、私は戸惑っていた。
最近は旦那様に振り向いてもらおうと自分磨きを頑張ったけど、振り向くのは他の男ばかりだ。
旦那様の好みとは方向性が違うのかしら。
それにしても困った。
イースター国のリチャードは国をあげて私を迎えに来るし、今度はシュタット国の王太子まで会いたいと言ってくる。
自分の国の貴族にもっと器量良しの娘が居るでしょうに……変わり者なのかしら。
「イングリッドよ、明日シュタット国へ行くのだ。話はすでにしてあるから、そのまま婚姻を結び軍事技術を我が国へと持ち帰ってくるのだ」
もう引き返せない所まで話が進んでいるのね……断れば私は投獄、場合によっては旦那様やお店の店員を拷問でもしかねない。
それは絶対にさせてはいけない。
「分かりました、明日シュタット国へと向かいます。話をまとめ上げ、必ずや技術を持ち帰りましょう」
胸に手を当てて、陛下に一礼する。
「うむ、イングリッド第二王女よ、王族として最初で最後の仕事だ、違えるでないぞ?」
私は何も言わず、謁見の間を後にした。
「イングリッド! 待ってちょうだいイングリッド!」
すぐにお姉様が追いかけてきた。
私は廊下に立ち止まり、お姉様が追いつくのを待つ。
「どうしたのお姉様」
「どうしたの、じゃないわ。本当にシュタッド国へ行くつもりなの?」
「それが命令ですもの。陛下の命令を断れば、その先には最悪の結果しか残らない。それは重々承知しているもの」
「それはそうだけど……旦那様はいいの? それにリチャードの事も」
私は廊下を歩き始める。
お姉様は私を応援してくれている。
旦那様の事も、そしてリチャードとの事も。
いくら鈍い私にだってわかってる。お姉様は私とリチャードの仲を進めたがってる。
リチャードはいい人だ。最近は旦那様と居るよりも、リチャードと居る方が落ち着いている自分がいる。
イースター国の国王様も王妃様も、クセはあるけどいい人だ。
でも私は……何としても旦那様の元に戻りたい。
「必ず戻ってきます。それよりお姉様、ユリアに手紙を渡してもらえませんか?」
「ユリア? あなたのバックアップに付いて行った侍女?」
「ええ。しばらくはお店を任せる事になるから」
お店はユリアに任せれば大丈夫。
お店の子達も自分で考えて動ける子達だから、すぐには問題にならないはず。
今私が考えるべきは、どうやれば早くに帰ってこれるか、だ。
翌朝には無理やりに近いかたちで馬車に入れられた。
力ずくでは無いけど、部屋を出てから馬車までの道筋に、私が逃げられないように兵士が並んでいる。
ここまでする必要があるのかしら……ひょっとして、私が思っているよりも国の状況が悪い?
馬車に乗ると外から鍵をかけられた。
絶対に逃がさない気ね。
城を出て直ぐに、旦那様が馬車を追いかけて走っているのが目に入った。
旦那様!? 窓を開けようにも開かず、もちろん扉も開かない。
窓を開けようと叩いても、この馬車の窓は開かないようにしてあるみたいだった。
必死に窓に顔を押し付けて旦那様を見てるけど、馬車の速さには追いつけず、徐々に旦那様が遠くなっていく。
足がもつれ、旦那様が転んでしまうと、馬車は角を曲がり見えなくなってしまった。
待っていてください旦那様、必ず帰ってきますから!
数日後にはシュタット国の首都へ到着した。
シュタット国は小国ではあるけど軍事国家なため、城壁は金属が多用され、ちょっとやそっとの攻撃ではびくともしそうにない程に頑丈だ。
街中は普通で、軍事国家というほど兵士が多くないけど、兵士の装備が見た事もない物だった。
とても軽装なのだ。
あんな鎧で剣や槍を防げるのか不思議なほどに。
それが……この国の技術によるモノなのかしら。
城に到着すると、鍵が開けられて馬車のドアが開く。
馬車から降りるとそこには1人の青年が立っている。
「初めましてイングリッド王女。私はフィリップ、シュタット国の王太子です」
メガネをかけた知的な美青年が立っていた!!!
軍事国家だって言うから、てっきりイカツイ男性だと思っていたのに、こんな細身の人だとは思わなかった。
「は、初めまして。私がイングリッドです」
慌てて挨拶をしたけど、フィリップ王太子はずっと微笑んでいる。
「ああ、噂通りですね。お美しい」
……は? お美しい? 誰が?
最近は旦那様に振り向いてもらおうと自分磨きを頑張ったけど、振り向くのは他の男ばかりだ。
旦那様の好みとは方向性が違うのかしら。
それにしても困った。
イースター国のリチャードは国をあげて私を迎えに来るし、今度はシュタット国の王太子まで会いたいと言ってくる。
自分の国の貴族にもっと器量良しの娘が居るでしょうに……変わり者なのかしら。
「イングリッドよ、明日シュタット国へ行くのだ。話はすでにしてあるから、そのまま婚姻を結び軍事技術を我が国へと持ち帰ってくるのだ」
もう引き返せない所まで話が進んでいるのね……断れば私は投獄、場合によっては旦那様やお店の店員を拷問でもしかねない。
それは絶対にさせてはいけない。
「分かりました、明日シュタット国へと向かいます。話をまとめ上げ、必ずや技術を持ち帰りましょう」
胸に手を当てて、陛下に一礼する。
「うむ、イングリッド第二王女よ、王族として最初で最後の仕事だ、違えるでないぞ?」
私は何も言わず、謁見の間を後にした。
「イングリッド! 待ってちょうだいイングリッド!」
すぐにお姉様が追いかけてきた。
私は廊下に立ち止まり、お姉様が追いつくのを待つ。
「どうしたのお姉様」
「どうしたの、じゃないわ。本当にシュタッド国へ行くつもりなの?」
「それが命令ですもの。陛下の命令を断れば、その先には最悪の結果しか残らない。それは重々承知しているもの」
「それはそうだけど……旦那様はいいの? それにリチャードの事も」
私は廊下を歩き始める。
お姉様は私を応援してくれている。
旦那様の事も、そしてリチャードとの事も。
いくら鈍い私にだってわかってる。お姉様は私とリチャードの仲を進めたがってる。
リチャードはいい人だ。最近は旦那様と居るよりも、リチャードと居る方が落ち着いている自分がいる。
イースター国の国王様も王妃様も、クセはあるけどいい人だ。
でも私は……何としても旦那様の元に戻りたい。
「必ず戻ってきます。それよりお姉様、ユリアに手紙を渡してもらえませんか?」
「ユリア? あなたのバックアップに付いて行った侍女?」
「ええ。しばらくはお店を任せる事になるから」
お店はユリアに任せれば大丈夫。
お店の子達も自分で考えて動ける子達だから、すぐには問題にならないはず。
今私が考えるべきは、どうやれば早くに帰ってこれるか、だ。
翌朝には無理やりに近いかたちで馬車に入れられた。
力ずくでは無いけど、部屋を出てから馬車までの道筋に、私が逃げられないように兵士が並んでいる。
ここまでする必要があるのかしら……ひょっとして、私が思っているよりも国の状況が悪い?
馬車に乗ると外から鍵をかけられた。
絶対に逃がさない気ね。
城を出て直ぐに、旦那様が馬車を追いかけて走っているのが目に入った。
旦那様!? 窓を開けようにも開かず、もちろん扉も開かない。
窓を開けようと叩いても、この馬車の窓は開かないようにしてあるみたいだった。
必死に窓に顔を押し付けて旦那様を見てるけど、馬車の速さには追いつけず、徐々に旦那様が遠くなっていく。
足がもつれ、旦那様が転んでしまうと、馬車は角を曲がり見えなくなってしまった。
待っていてください旦那様、必ず帰ってきますから!
数日後にはシュタット国の首都へ到着した。
シュタット国は小国ではあるけど軍事国家なため、城壁は金属が多用され、ちょっとやそっとの攻撃ではびくともしそうにない程に頑丈だ。
街中は普通で、軍事国家というほど兵士が多くないけど、兵士の装備が見た事もない物だった。
とても軽装なのだ。
あんな鎧で剣や槍を防げるのか不思議なほどに。
それが……この国の技術によるモノなのかしら。
城に到着すると、鍵が開けられて馬車のドアが開く。
馬車から降りるとそこには1人の青年が立っている。
「初めましてイングリッド王女。私はフィリップ、シュタット国の王太子です」
メガネをかけた知的な美青年が立っていた!!!
軍事国家だって言うから、てっきりイカツイ男性だと思っていたのに、こんな細身の人だとは思わなかった。
「は、初めまして。私がイングリッドです」
慌てて挨拶をしたけど、フィリップ王太子はずっと微笑んでいる。
「ああ、噂通りですね。お美しい」
……は? お美しい? 誰が?
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