不倫ばかりする夫にもう一度振り向いてもらおうとして、自分磨きを頑張ったら王太子が振り向きました

如月ぐるぐる

文字の大きさ
上 下
11 / 28

11 もう一人の王太子からの指名

しおりを挟む
 馬車に揺られて町中を通り過ぎていく。
 見慣れた景色が、ここからだと全然違う見え方がする。
 だたのイングリッドとしてではなく、第二王女としての見方をしてるのかもしれない。

 自分のお店の前を通りかかる。
 そういえば皆には話が出来なかったわね。
 ユリア辺りが近日中に城に来るでしょうから、その時に話をしましょう。

 城の中に入り、馬車を降りるとクリスティーヌお姉様が待っていた。

「ごめんなさいイングリッド。私では止められなくって」

「いいえお姉様。今の情勢を考えれば予想が出来る事だったわ。対策をしなかった私の落ち度よ」

 そう言って抱き合った。
 お姉様には苦労を掛けっぱなしね。

「戻ったのかイングリッド」

「お兄様……」

 第一王子のお兄様と、その妃様が来ていた。
 歳が10歳ほど離れているから、兄妹といっても関りが薄かった。

「お前もいい歳なんだ、遊び惚けていないで王家としてやるべき事をやるんだ」

「ジェームス、そんな言い方をする事は無いのではなくて? イングリッドにはイングリッドの考えがあっての行動だったのだから」

「そうやってクリスティーヌが甘やかすからいけないんだ。王族はどうやっても王族の役目からは逃れられない。それを捨てようとした時点で甘えているんだ」

 言い返す言葉がない。
 生まれを恨んでも仕方が無いけど、確かに役目を放棄したのは事実だ。

「ごめんなさいお兄様。でも私はそんな役目が嫌だったの。それにこんな状況にならなければ、私の役目なんて無いに等しかったはずよ?」

「お前……それは俺の責任だと言いたいのか!!!」

 この状況、他国の動きが活発なのはお兄様のせいじゃない。
 でも国の軍事力強化が中々進まないのは、軍長官を務めるお兄様の責任といって良い。
 私はその尻拭いをさせられるために呼ばれたんだから。

「そんな事は言っていません。それともお兄様はご自分の責任だとお考えですか?」

「グ……まあいい。父上がお待ちだ、早く謁見の間へ行くぞ」

 お兄様について、私とお姉様は謁見の間へと向かう。
 この姿で城の中を歩くのは数年ぶりだけど、みんなが頭を下げている。
 お兄様とお姉様が居るからだかしら、それとも私も含めてかしら。

「父上、イングリッドを連れてきました」

 謁見の間に入ると、お父様……陛下は玉座に座り頬杖をついていた。

「遅かったな」

「申し訳ありません。イングリッドの支度に時間がかかりました」

 ウソばっかり。準備なんて家を出た時にしただけで、城に入ってからは何もしてない。
 お父様は自分が優位に立つために、お兄様は私に私に頭を下げさせるために、下らないやり取りをする。
 王族っていつもこう。
 自分が偉いモノだから、常に優越感に浸らないと気が済まない。

「お久しぶりですお父様。私は王家を捨てた女、そんな女を呼び出して、一体何の御用でしょうか」

 形だけ頭を下げて挨拶をし、何も知らないフリをして問いかける。
 馬鹿な女だとでも思ってくれれば諦めるかしら。

「イングリッド、お前にいい話を持ってきてやったぞ。隣国であるシュタット国の第一王子との婚姻話が出ている。フラフラしているお前にとってもいい話だろう」

 シュタット国……やっぱり軍事力の強化のためなのね。
 シュタット国は基本的に他国へは兵器を売っていないけど、第一王子と婚姻関係にあるこの国になら、武器を売ってくれるんじゃないかって言う考えだ。

「しかし父上、私はすでに結婚しております。そのような使い古しの女を第一王子にとつがせるなど、失礼に当たりませんか?」

「何を言っておる、王家の者が平民と結婚など出来るはずが無かろう」

 ああそういう事ね、その様な事実は無いと、私の数年間の行動は無かった事にするつもりなのね。
 でもそれなら、こちらにも手はあるわ。

「しかし仮に嫁いだとしても、不意に以前の夫の名を呼んでしまうかもしれません。そうなれば私は不貞を働いたとして捨てられ、シュタット国との関係も悪化してしまうのではありませんか?」

「安心しろ。相手の王子はお前が平民と遊んでいた事を知っている。その上でお前が良いと言ってきたのだ」

「……今なんとおっしゃいましたか? 相手から、私を指名したと、そうおっしゃいましたか?」

「そうだ。市民の暮らしに興味を持つ姫が珍しいのだろうな」

 これは予想が外れたわ。
 向こうも資金の為に仕方なく受けるのかと思ったら、向こうから私を指名したですって? という事は私の素性調査も終わっているだろうし、旦那様がいる事も知っているはず。
 その上で私を? どうして???

「一つ確認なのですが、私が嫁いだ場合、両国にとって何の利益になりますか?」

「言わずとも分かっているだろう? 我が国は軍備を、シュタット国は資金を手にする事が出来る」

「それならば1年だけお時間を頂けませんか? 軍備を、軍事力を上げたいのであれば、私が別の手段で軍事力を上げて御覧に入れます」

「その必要は無い。ジェームスに出来なかった事をお前がしてみろ、ジェームスの立場が無くなるではないか。次期国王の立場を悪くしてどうするのだ」

 それは……それはそうだけど。
 でも、でもそれじゃあシュタット国に行かざるを得ないじゃない!
 考えなさい、考えるのよイングリッド!

 お兄様の立場を悪くせず、シュタット国へも行かずに軍事力を上げる方法を!!!
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...