9 / 28
9 安らぎを覚え
しおりを挟む
朝が来た。
朝は気持ちがいい。朝は希望に満ち溢れている。
今日もいい一日になりそうだわ。
隣で寝ている旦那様を起こさないように静かにベッドを降り、服を着替えて朝食の準備を始めた。
はな歌まじりで朝食を作り終えたけど、旦那様はまだ起きて来ない。
私は仕事に出かけないといけないから、一緒に食事をしたかったんだけど……。
声をかけてみようかしら。
「アナタ、アナタ朝食が出来ましたよ。食べないと冷めてしまいますよ?」
「ん……ん~……うるさい、後で食う」
「もう。私は仕事がありますから、食べたら流しに置いておいてくださいね」
そう言って寝室を出て、1人で朝食をいただいた。
「おはようみんな」
「おはようございます店長!」
「おはようございますイングリッドさん!」
みんなは今日も元気だわ。
やっぱり元気がないと、いい仕事はできないものね!
今日も一日頑張るわよ!
デザインや色合いをみんなで相談していると、みんな次々に新しいアイディアを口にする。
すごいわねみんな! これならお客さんも喜んでくれるわ。
会議が終わり、店内の様子を見に行く。
お客さんがたくさん来てくれてる。客層は若い女の子が多いけど、家族で来てる人もいる。
奥さんへのプレゼントかしら。
ふと、1人だけ浮いてる人が目に入った。
あ、あれは!?
「こんにちは、リチャードさん」
「わ。こ、こんにちはイングリッドさん」
後ろから声をかけたから、少し驚かせちゃったみたい。
ん? 手に持っているのは金属製の髪飾りだわ。
誰かへの贈り物かしら。
「最近よくお会いしますね」
「そうですね。私はほぼこちらの国に滞在していますし、お茶会では毎回お会いしていますからね」
「毎回姉が呼び立ててしまってすみません。持ってきていただけるお菓子がお気に入りみたいで」
「ははは、アレは我が国でも人気のお菓子ですからね。ご要望とあれば毎回お持ちしますよ」
しばらくリチャードさんと話をしていたけど、何かしら、落ち着く感じがする。
旦那さんとは違って、安らぐというか安心するというか。
なんだか変な感じだわ。
お茶会では毎回会うし、お店でも時々会う。
たまにだけど家に来たりする。
あれ以来旦那様とリチャードさんが会う事は無いけど、夕食に誘っても来てくれなかった。
……あら? なんだか私、少し寂しがってない?
そろそろ季節が変わり、冬の装いを見せ始めた頃、冬用品をまとめ買いしていっぱいの荷物を運んでいると、ヒョイっと体が軽くなった。
「こんにちわイングリッド。そんなに沢山荷物を持ってたら大変でしょう? お手伝いしますよ」
「リチャード。ありがとう、助かるわ」
半分以上をリチャードが持ってくれた。
最近は2人でお茶をする事も増えて、随分と仲が良くなった気がする。
「イングリッドは見かけによらず力持ちだね。僕が持っても重いよ?」
「あら、主婦は力仕事なのよ?」
とは言え重かったから凄く助かる。
他愛のない話をしながら家に到着すると、リチャードは直ぐに帰ろうとした。
「待ってリチャード。せめてお茶くらい出させてよ」
「そう? じゃあお言葉に甘えるよ」
今日買ってきた中に、良い茶葉があるからそれを出して、お菓子も良いのがあったわよね。
あ、リチャードったら大人しく座ってればいいのに、薪ストーブの世話を始めたわ。
「ありがとう。なんだか家の事に詳しくなっちゃったわね」
「勝手知ったる他人の家、だね」
のんびりとした午後を過ごしていると、ドアがノックされた。
あら、誰かしら。
「はい、どちら様でしょうか?」
ドアを開けると、そこには鎧を着こんだ兵士が数名立っていた。
「こちらはイングリッド様のご自宅で間違いないでしょうか」
「え? ええ私がイングリッドですが」
「それではこちらをどうぞ。陛下よりお手紙を預かっております」
お父様から? 今まで放っておいてくれたのに、今さら何だって言うのかしら。
手紙を開けるとそこには短い文章が書かれていた。
『イングリッド第二王女。王族としての役目を果たすのだ』
朝は気持ちがいい。朝は希望に満ち溢れている。
今日もいい一日になりそうだわ。
隣で寝ている旦那様を起こさないように静かにベッドを降り、服を着替えて朝食の準備を始めた。
はな歌まじりで朝食を作り終えたけど、旦那様はまだ起きて来ない。
私は仕事に出かけないといけないから、一緒に食事をしたかったんだけど……。
声をかけてみようかしら。
「アナタ、アナタ朝食が出来ましたよ。食べないと冷めてしまいますよ?」
「ん……ん~……うるさい、後で食う」
「もう。私は仕事がありますから、食べたら流しに置いておいてくださいね」
そう言って寝室を出て、1人で朝食をいただいた。
「おはようみんな」
「おはようございます店長!」
「おはようございますイングリッドさん!」
みんなは今日も元気だわ。
やっぱり元気がないと、いい仕事はできないものね!
今日も一日頑張るわよ!
デザインや色合いをみんなで相談していると、みんな次々に新しいアイディアを口にする。
すごいわねみんな! これならお客さんも喜んでくれるわ。
会議が終わり、店内の様子を見に行く。
お客さんがたくさん来てくれてる。客層は若い女の子が多いけど、家族で来てる人もいる。
奥さんへのプレゼントかしら。
ふと、1人だけ浮いてる人が目に入った。
あ、あれは!?
「こんにちは、リチャードさん」
「わ。こ、こんにちはイングリッドさん」
後ろから声をかけたから、少し驚かせちゃったみたい。
ん? 手に持っているのは金属製の髪飾りだわ。
誰かへの贈り物かしら。
「最近よくお会いしますね」
「そうですね。私はほぼこちらの国に滞在していますし、お茶会では毎回お会いしていますからね」
「毎回姉が呼び立ててしまってすみません。持ってきていただけるお菓子がお気に入りみたいで」
「ははは、アレは我が国でも人気のお菓子ですからね。ご要望とあれば毎回お持ちしますよ」
しばらくリチャードさんと話をしていたけど、何かしら、落ち着く感じがする。
旦那さんとは違って、安らぐというか安心するというか。
なんだか変な感じだわ。
お茶会では毎回会うし、お店でも時々会う。
たまにだけど家に来たりする。
あれ以来旦那様とリチャードさんが会う事は無いけど、夕食に誘っても来てくれなかった。
……あら? なんだか私、少し寂しがってない?
そろそろ季節が変わり、冬の装いを見せ始めた頃、冬用品をまとめ買いしていっぱいの荷物を運んでいると、ヒョイっと体が軽くなった。
「こんにちわイングリッド。そんなに沢山荷物を持ってたら大変でしょう? お手伝いしますよ」
「リチャード。ありがとう、助かるわ」
半分以上をリチャードが持ってくれた。
最近は2人でお茶をする事も増えて、随分と仲が良くなった気がする。
「イングリッドは見かけによらず力持ちだね。僕が持っても重いよ?」
「あら、主婦は力仕事なのよ?」
とは言え重かったから凄く助かる。
他愛のない話をしながら家に到着すると、リチャードは直ぐに帰ろうとした。
「待ってリチャード。せめてお茶くらい出させてよ」
「そう? じゃあお言葉に甘えるよ」
今日買ってきた中に、良い茶葉があるからそれを出して、お菓子も良いのがあったわよね。
あ、リチャードったら大人しく座ってればいいのに、薪ストーブの世話を始めたわ。
「ありがとう。なんだか家の事に詳しくなっちゃったわね」
「勝手知ったる他人の家、だね」
のんびりとした午後を過ごしていると、ドアがノックされた。
あら、誰かしら。
「はい、どちら様でしょうか?」
ドアを開けると、そこには鎧を着こんだ兵士が数名立っていた。
「こちらはイングリッド様のご自宅で間違いないでしょうか」
「え? ええ私がイングリッドですが」
「それではこちらをどうぞ。陛下よりお手紙を預かっております」
お父様から? 今まで放っておいてくれたのに、今さら何だって言うのかしら。
手紙を開けるとそこには短い文章が書かれていた。
『イングリッド第二王女。王族としての役目を果たすのだ』
15
お気に入りに追加
1,695
あなたにおすすめの小説

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました
21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。
理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。
(……ええ、そうでしょうね。私もそう思います)
王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。
当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。
「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」
貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。
だけど――
「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」
突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!?
彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。
そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。
「……あの、何かご用でしょうか?」
「決まっている。お前を迎えに来た」
――え? どういうこと?
「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」
「……?」
「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」
(いや、意味がわかりません!!)
婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、
なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。


完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

最後の思い出に、魅了魔法をかけました
ツルカ
恋愛
幼い時からの婚約者が、聖女と婚約を結びなおすことが内定してしまった。
愛も恋もなく政略的な結びつきしかない婚約だったけれど、婚約解消の手続きの前、ほんの短い時間に、クレアは拙い恋心を叶えたいと願ってしまう。
氷の王子と呼ばれる彼から、一度でいいから、燃えるような眼差しで見つめられてみたいと。
「魅了魔法をかけました」
「……は?」
「十分ほどで解けます」
「短すぎるだろう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる