不倫ばかりする夫にもう一度振り向いてもらおうとして、自分磨きを頑張ったら王太子が振り向きました

如月ぐるぐる

文字の大きさ
上 下
7 / 28

7 2人のタオル

しおりを挟む
「おはようございますクリスティーヌ、い、イングリッドさん」

 そこにはリチャード王太子が立っていた。
 お姉様のお茶会に来たら、昨日会ったばかりの隣国のリチャード王太子がいた。
 会いに来てもいいとは言ったけど、まさか昨日の今日で会いに来るとは思わなかったわ。

「あらあら、イングリッド驚いているの? 偶然ね、私も驚いているわ」

 あの沈着冷静なお姉様が驚くなんて、やっぱりリチャード王太子の行動力? は驚くしかない。
 それにしても、お姉様に対しては普通に接する事が出来るのね。
 古くからの友人というのも本当みたい。

「でも今は驚く会ではないから、お茶の準備をしましょうか」

「そ、そうね」

 知り合い数名が、お気に入りのお菓子を持ち寄るこじんまりとしたお茶会。
 だから準備も自分たちでするんだけど、驚いた事にリチャード王太子、すごく手慣れてる。
 メイドがするような事を王太子がするって、すごく不思議な感じ。
 
 思ったよりも準備がはやく終わり、早速お茶会が開始された。
 
「それでイングリッド? リチャードの求婚は受けたの?」

「ごほっ! お、お姉様? いきなりなんですか」

 いきなり本題を聞いてきた。思いっきりストレートねお姉様。

「い、イングリッドさんどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 リチャード王太子がタオルを渡してくれた。
 紅茶が口の周りにはじいちゃってたわ。
 口を拭いて、一度深呼吸をしてから口を開く。

「お姉様、私には旦那様がいるのよ? リチャード王太子にも陛下にもお伝えしたけど、旦那様を裏切るようなことはできません」

「あら、その旦那様はあなたを裏切っているわよ?」

「それは私がいけないんです。仕事にかまけて家事をおろそかにしたんだもの、旦那様にも寂しい思いをさせてしまったわ。だからこれは自業自得なの」

 そう。だからきっと旦那様は、他の女性と遊び終わったら家に居てくれるようになる。
 以前と同じように、2人で楽しく暮らせるようになるはずだわ。

「自業自得にしては、限度を超えているように感じるけど」

「世間では倍返しという物があるそうですから、私のやったことは倍になって返ってくるんです」

「そもそも、あなたの不手際ってなんなの?」

「それはもちろん仕事に一生懸命になり過ぎて、家事がおろそかになった事よ?」

「でも家計には余裕が出来たのよね? それに家事はしていたんでしょう?」

「旦那様が帰ってくる前には家に戻り、疲れた旦那様をねぎらうためにお湯とタオルを用意して、マッサージをして差し上げて、夕食後は旦那様より先には寝ちゃいけないの。でも出来なかったんだもの」

「イングリッド? あなたは元王族だから、夫婦の理想を物語に求めすぎているのよ? それにあなたの言ってることは夫婦ではなくメイドの――」

「い、イングリッドさん! 私の知る一般的な夫婦は、一方的に妻が夫に仕えるのではなく、互いに支え合うものです! 妻が忙しいのなら、夫はそれを助けるものです」

「……」

「ねぇイングリッド? 少しだけ、もう少しだけ周りの話を聞いてほしいの。あなたは家出同然に家を出たから、それを否定されたくなくて、意固地になっていない?」

「……」

「イングリッドさん、一方的な押し付けは夫婦ではありません。奴隷で――」

「うるさい! どうしてみんなイジワルを言うの!? どうして誰も応援してくれないの!? 旦那様は優しい人だったの! 私がいけないんだから仕方が無いのよ!」

 みんな、みんなどうして旦那様を悪く言うの!? 今の旦那様の浮気は私の責任なの!
 だから旦那様は悪くない!



 お城から飛び出して、走って家に戻ってきた。
 家に入ると、旦那様がイスに座ってお茶を飲んでいた。

「あ、ただいま戻りました」

「お茶のお替りと、何か食うものは無いか」

「はいただいま。食べるものはお菓子でもいいですか?」

「なんでもいい」

 私は火を起こしてお湯を沸かし、お菓子を皿に並べていく。
 茶葉を茶こしで入れていると、お湯が弾いて手にかかってしまった。

「あつっ!」

 いけないいけない、タオル、タオルっと。

「ん」

 旦那様がタオルを差し出してくれた。

「ありがとうアナタ」

 すっと手を伸ばすとタオルは無かった。
 あれ? どこかでタオルを渡されたような気が……。
 そのまま旦那様の手を握ると、パンっと叩かれた。

「金だ、金。出かけてくる」

「え? ああゴメンさない。今日はいつごろ戻りますか?」

 お金を渡すと、何も言わずに出て行ってしまった。
 私はお湯がかかった手を水につけながら、どこでタオルを渡されたのかを思い出していた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

処理中です...