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楽器のメンテナンス
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30名程いる楽士だが、半数位が不調を訴えていた。
今は残りの半数で何とか曲を奏でている状態だ。
数名の楽器を見たところ、やはり魔法機器の不調だった。
壁際の椅子に腰掛け、楽器を手にする。
小声で呪文を唱え、魔方陣を展開した。
「直りそうかい?」
「ええ、魔法バッテリーの消耗ですね。
応急処置しておきますので、明日にでもメンテナンスに出して下さい。」
次々と応急処置を施していく。
今晩くらいならば、これでなんとかなるだろう。
「あ、これは魔法バッテリーが原因じゃないですけどね。」
最後のひとつとなった大型のハープは、不調の原因が違っていた。
長年丁寧に使い込まれていたのだろうが、古くなりすぎて楽器本体に寿命がきてたのだ。
「これはもう、寿命ですね。」
「やはり、そうですか。
祖父の代から受け継いだものですから。
仕方がありませんね。」
自分の父親位の年齢の男性が肩を落とす。
とても大切にしていたのだろう。
「何とかならないのかい?」
殿下が悲しそうに言う。
「この者の演奏は、とても心にしみいるものなんだ。
この国の歴史と共にあったと言っても過言ではないのだよ。
この楽器が失われるのは国家の損失だよ。」
「うーん、そうは言ってもですね、、。」
自分はただの魔法士であって、楽器の専門家では無いのだ。
「殿下にそう言っていただけて、光栄です。
ですが、そろそろ寿命だろうと楽器の専門家にも言われていたのですよ。
仕方がありません。
音色は変化しますが、新しい楽器を使います。」
「ああ、この音色を失うのは哀しいね。」
新しい楽器か。
同じ形のハープを持ってきたのを見て、一か八か試してみたくなった。
「殿下、楽器の融合を試しても良いですか?」
「楽器の融合?
どういう事だい?」
「古い物と新しい物を併せてひとつにするのです。
音色は多分、かなり若返る事となりますが、新品よりは使いこなれた音となるかと。
いかがですか?」
楽器の奏者を見やれば、ギラギラとした目付きになっていた。
「どう思う?
ああ、もう、答えは出ているか。
アークス・フレッドベリー、頼む。」
そう言われ、控え室に移動して魔方陣を展開した。
見物人は殿下と楽器の奏者のみ。
古い楽器は若い力を得てイキイキとした波動を醸し出す。
あと少し。
もう、少し。
グングンと魔力を吸いとられる。
さすがの自分も、脂汗が流れてきた。
そろそろ魔力が枯渇するかも、と言う時にやっと完成した。
魔方陣が消え、ぐったりと座り込んでしまう。
「終わったのかい?」
「はぁ、はぁ、終わりました。
どうぞ、試して下さい。」
殿下に抱えられながら楽器の奏者を見る。
感動したように楽器に触れ、そうっとつま弾く様子が見える。
彼は涙を流していた。
今は残りの半数で何とか曲を奏でている状態だ。
数名の楽器を見たところ、やはり魔法機器の不調だった。
壁際の椅子に腰掛け、楽器を手にする。
小声で呪文を唱え、魔方陣を展開した。
「直りそうかい?」
「ええ、魔法バッテリーの消耗ですね。
応急処置しておきますので、明日にでもメンテナンスに出して下さい。」
次々と応急処置を施していく。
今晩くらいならば、これでなんとかなるだろう。
「あ、これは魔法バッテリーが原因じゃないですけどね。」
最後のひとつとなった大型のハープは、不調の原因が違っていた。
長年丁寧に使い込まれていたのだろうが、古くなりすぎて楽器本体に寿命がきてたのだ。
「これはもう、寿命ですね。」
「やはり、そうですか。
祖父の代から受け継いだものですから。
仕方がありませんね。」
自分の父親位の年齢の男性が肩を落とす。
とても大切にしていたのだろう。
「何とかならないのかい?」
殿下が悲しそうに言う。
「この者の演奏は、とても心にしみいるものなんだ。
この国の歴史と共にあったと言っても過言ではないのだよ。
この楽器が失われるのは国家の損失だよ。」
「うーん、そうは言ってもですね、、。」
自分はただの魔法士であって、楽器の専門家では無いのだ。
「殿下にそう言っていただけて、光栄です。
ですが、そろそろ寿命だろうと楽器の専門家にも言われていたのですよ。
仕方がありません。
音色は変化しますが、新しい楽器を使います。」
「ああ、この音色を失うのは哀しいね。」
新しい楽器か。
同じ形のハープを持ってきたのを見て、一か八か試してみたくなった。
「殿下、楽器の融合を試しても良いですか?」
「楽器の融合?
どういう事だい?」
「古い物と新しい物を併せてひとつにするのです。
音色は多分、かなり若返る事となりますが、新品よりは使いこなれた音となるかと。
いかがですか?」
楽器の奏者を見やれば、ギラギラとした目付きになっていた。
「どう思う?
ああ、もう、答えは出ているか。
アークス・フレッドベリー、頼む。」
そう言われ、控え室に移動して魔方陣を展開した。
見物人は殿下と楽器の奏者のみ。
古い楽器は若い力を得てイキイキとした波動を醸し出す。
あと少し。
もう、少し。
グングンと魔力を吸いとられる。
さすがの自分も、脂汗が流れてきた。
そろそろ魔力が枯渇するかも、と言う時にやっと完成した。
魔方陣が消え、ぐったりと座り込んでしまう。
「終わったのかい?」
「はぁ、はぁ、終わりました。
どうぞ、試して下さい。」
殿下に抱えられながら楽器の奏者を見る。
感動したように楽器に触れ、そうっとつま弾く様子が見える。
彼は涙を流していた。
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