(異世界で？)お一人様のち お二人様

暮らしの彩り

嵐が過ぎ去った後の片付けは大変だった。

畑の作物はのきなみ引きちぎれ悲惨な状態。

林の木々が折れたものの残骸がとんできて、あちらこちらに散らばっていたり。

川が氾濫したのか、思わぬ場所が水浸しになっていたりしてた。

か弱い少女の力でやれる事は限られていて。

とりあえず半分程の畑をやっとの思いで片付け、種を蒔きなおした。

食料や水はお祖母さんの魔法のお陰で潤沢にあるから生きていくのには問題は無いのだが、台風一過の後の片付けは心を病ませる。

毎日成長を楽しみにしていた我が子のような畑が全滅したのは哀しかった。

キレイに調えられていた家の周りがとんできた木々と泥でぐちゃぐちゃ。

ため息をつきながら、少しずつ片付けたが、きりがない様に思えて涙がこぼれた。





そうだ、抱き締めるものを作ろう。

病気を得てから私は編みぐるみを作っていた。

毛糸とかぎ針でクマやウサギ等の編みぐるみを作った。

編み物は裁縫と違って道具も場所も少なくて済むので病床でも手軽に出来たのだ。

大きな物は作った事はないけれど、他人にあげる訳でもなし、何とかなるだろう。

外の作業に疲れたら気分転換に毛糸とかぎ針を持つ。

そんな日々を過ごし、ひと月がたった頃、完成した。


「じゃーん！編みぐるみのベアくん！！」

早速抱いて横になれば心地好い安心感が得られた。
大満足だ。




久しぶりに罠に鳥が掛かっていた。

まだ大人になりきれて無い感じのニワトリ(多分)

いつもならば何も考えずに肉として捌いていたのに、心が弱っていたので目が合った。

………。

うん、飼ってみよう。

卵産むかも知れないし。

産まなかったらもっと肥らせてお肉にすれば良いのだ。

小脇に抱え、家に連れ帰った。

鶏小屋も無いので、裏玄関で飼い始めた。

畑に行く時には片足に長めの紐を結わえ、杭に繋いでおいたら虫を食べていた。

害虫駆除に役立っている気がする。

まあ、益虫も駆除されてるかも知れないが。

「コッコ、帰る時間だよ。」

コケコケ、ココッコと返事をしてくれる。

話す人もいない生活なので、これでも貴重な話し相手になっていた。




コケコッコー！！

朝から賑やかだ。

そして、初めての贈り物を貰った。

真っ白なひとつのタマゴ。

無精卵だと分かっているのか、温める様子もない。

ありがたくいただいた。

数日おきに産んでくれる。

ありがたや。

合掌。