父親が死んだ

アスラク

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父親が死んだ

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父親が死んだ

ああ、ついに死んだんだ。




嬉しい…嬉しすぎてしばらく言葉が出なかった。

やっと解放されたんだ。信じられない。
涙が止まらない。

生まれてからずっと私を縛っていたあの人が死んだ。

解放感しかない。

亭主関白なあの人。
貧乏なくせに子供を3人も作って、私は大学に通わせてもらえなかった。
経済学部でしっかり勉強しようと思っていたのに、高校卒業したらすぐに働けと言ってきたあの人。

ずっと許せなかった。
私のやることには文句しか言ってこなかった。
褒められたことなど指で数えられるほどあっただろうか。
覚えてもいない。褒め方も下手。

でも許してあげよう。死んだんだから。
あの人が死ぬまでの3年間はほんとうにつらかった。
あの人は脳梗塞になり、要介護状態となった。
しかし、金銭的に介護施設に預けるのが厳しかったし、何より本人が、
介護施設など行くか!
と断固拒否していたので、家族で世話をすることになった。

家族への負担はとてつもなく大きいものだった。
介護中にあの人はいつも文句を言う。
もっとちゃんと敬え、誠意を込めて面倒を見ろ、もっとうまい食事を用意しろ、酒を飲ませろ、
など。
もううんざりだった。介護を始めて2週間で殺して私も死のうかと思ってしまった。
なぜこの人の面倒を見なくてはいけないのか。私を勝手に産んだのはお前だろ。

しかし1ヶ月2ヶ月と過ぎていくと、しだいに慣れていった。いや、脳が麻痺しているのかもしれない。この辛い状況が日常と化していた。

この人は変わらない。

でも父親が死んだ。

晴々しい気分だ。本当によかった。

私は自由になったのだ。
これからどうしよう。何をしよう。海外旅行でも行こうか。
これからの未来が楽しみで仕方ない。
嬉しい。


なんか、気が抜けた。脱力感がすごくある。

…なんかちょっと身体に違和感があるな。
徐々に頭痛もしてきたし、痛みが増す。
確かにここ最近は慢性的な頭痛が出ていた。

なんだか徐々に左の手足も痺れてきたな…。

でも今日は本当に幸せだった。
とりあえず、疲れたし、寝ることとしよう。
明日からどこに行くか予定を立てよう。
予定を立てている時が1番楽しい。
まずはヨーロッパとか行っちゃおうかな。歴史も調べたり、おいしいパスタやピザが食べたいし、イタリアとかフランスに行ってみたいな。

今まで地獄のような日々だったけど、これからの人生、楽しむぞ!

あぁ、でも眠い。とりあえずベッドに行って寝よう。

おやすみなさい
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