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トパデの街へ
百貨店②
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冒険者御用達の道具屋で買い物を終えたルージュは、早速背嚢に先程購入した食料品や道具などを詰めていく。詰め終わると同時に、背嚢を背負うと満足そうな笑みを浮かべながら再度歩き始めた。
(やっと終わりかな……)
ルージュが階段に向かうのを確認したゼロは彼女に気付かれぬよう安堵のため息をついた。……が、ルージュは一階に降りる階段ではなく、階段を登っていく。ゼロは若干辟易しながらも彼女の後を追う。
三階は武器と防具屋のフロアであった。ここでもルージュは一通りフロアを歩く。だが、このフロアには要件のある店は無かったようで、階段へと向かう。
案の定、四階へと登る階段に足をかけるルージュに、ゼロはもう何も思うことはなかった。半ば諦めである。四階は衣服やアクセサリーなどを取り扱う店が多いフロアであった。
しかし、流石のルージュも、このフロアで洒落た服を購入する気はないようではあるが、その瞳が洒落た服に留まっては、半ば落ち込んだように目を伏せ、それを幾度も幾度も繰り返す。だが、ここでルージュはある店を見つける。アクセサリーの売店だ。ルージュは本日一番の瞳の輝きを見せながらアクセサリーに視線を走らせる。
ピアス、ブレスレットとネックレスのブースで数十分は立ち止まり、アクセサリーを吟味するルージュ。結局、リング型のピアスを一つだけ購入した。早速、購入したピアスを耳につけたルージュ。
そして鼻歌を歌いながら、再び階段へと向かう。再び階段を登るルージュ。とぼとぼと後ろについていくゼロ。五階は最上階であり、なおかつ屋上であった。屋上には軽食のスペースが設けられており、パン屋などが並んでいた。
「ここで食事を摂りましょう」
「……あぁ、そうだな」
ゼロ達はサンドイッチを注文し、テーブル席に座る。屋上のため、太陽と風を浴びながら食事を摂れるこの場所は、家族連れや若いカップルなどで賑わっていた。
ゼロは届けられたサンドイッチを口に運び、ついでに注文しておいたコーヒーをすする。
「結構買い込みできたし、これでカハターンまでの道のりは安泰よ」
ルージュが満足気に背嚢の中身を確認しながら、ひとりでに頷く。ゼロはその言葉に、それなら良かった。と同意し、二個目のサンドイッチを口に運ぶ。
「今日は久々に楽しかったわ、付き合ってもらってありがとう」
「あぁ、旅の物資は必要不可欠だからな。ついでとはいえ、ルージュの息抜きになったようで良かったよ」
ふと、ルージュが目を伏せ、暗い表情になったのをゼロは見逃さなかった。
「どうかしたのか?」
はっ。とルージュは顔を上げ、口角を少し上げたのちに、首を数度横に振る。
「ううん、なんでもないわ。ただ……、ちょっとだけこの旅の行く末を考えちゃって……」
旅の行く末。それは死か、暗黒の女帝を打ち倒すか。彼女は、限りなく前者の可能性が高いように思えてならなかった。それに対して、ゼロはサンドイッチを一旦皿に置き、ルージュの瞳をまっすぐと見据えながら口を開いた。
「やれるさ、俺と、ルージュなら」
その言葉は、彼女への慰めだけでなく、自らに対しても言い聞かせているような言葉だった。どこかの世界では、たった一人の勇者が魔王を下したこともあるらしいが、この世界ではそれは現実的ではない。やはり仲間と共にお互いを助け合いながら進む旅でなくては暗黒の女帝を打ち倒すことは厳しいことであろう。
だからこそ、ゼロはルージュに言った言葉は、お互いがお互いを助けることに対する決意でもあり、ルージュに対する約束でもあるのだ。
「そうね……。頑張らないとね」
ルージュは先程よりも更に優しい微笑みを浮かべていた。それは決意か、諦めか。彼女にしか分からない。だが、彼女の眼はギラギラとした使命感に燃えていた。
(やっと終わりかな……)
ルージュが階段に向かうのを確認したゼロは彼女に気付かれぬよう安堵のため息をついた。……が、ルージュは一階に降りる階段ではなく、階段を登っていく。ゼロは若干辟易しながらも彼女の後を追う。
三階は武器と防具屋のフロアであった。ここでもルージュは一通りフロアを歩く。だが、このフロアには要件のある店は無かったようで、階段へと向かう。
案の定、四階へと登る階段に足をかけるルージュに、ゼロはもう何も思うことはなかった。半ば諦めである。四階は衣服やアクセサリーなどを取り扱う店が多いフロアであった。
しかし、流石のルージュも、このフロアで洒落た服を購入する気はないようではあるが、その瞳が洒落た服に留まっては、半ば落ち込んだように目を伏せ、それを幾度も幾度も繰り返す。だが、ここでルージュはある店を見つける。アクセサリーの売店だ。ルージュは本日一番の瞳の輝きを見せながらアクセサリーに視線を走らせる。
ピアス、ブレスレットとネックレスのブースで数十分は立ち止まり、アクセサリーを吟味するルージュ。結局、リング型のピアスを一つだけ購入した。早速、購入したピアスを耳につけたルージュ。
そして鼻歌を歌いながら、再び階段へと向かう。再び階段を登るルージュ。とぼとぼと後ろについていくゼロ。五階は最上階であり、なおかつ屋上であった。屋上には軽食のスペースが設けられており、パン屋などが並んでいた。
「ここで食事を摂りましょう」
「……あぁ、そうだな」
ゼロ達はサンドイッチを注文し、テーブル席に座る。屋上のため、太陽と風を浴びながら食事を摂れるこの場所は、家族連れや若いカップルなどで賑わっていた。
ゼロは届けられたサンドイッチを口に運び、ついでに注文しておいたコーヒーをすする。
「結構買い込みできたし、これでカハターンまでの道のりは安泰よ」
ルージュが満足気に背嚢の中身を確認しながら、ひとりでに頷く。ゼロはその言葉に、それなら良かった。と同意し、二個目のサンドイッチを口に運ぶ。
「今日は久々に楽しかったわ、付き合ってもらってありがとう」
「あぁ、旅の物資は必要不可欠だからな。ついでとはいえ、ルージュの息抜きになったようで良かったよ」
ふと、ルージュが目を伏せ、暗い表情になったのをゼロは見逃さなかった。
「どうかしたのか?」
はっ。とルージュは顔を上げ、口角を少し上げたのちに、首を数度横に振る。
「ううん、なんでもないわ。ただ……、ちょっとだけこの旅の行く末を考えちゃって……」
旅の行く末。それは死か、暗黒の女帝を打ち倒すか。彼女は、限りなく前者の可能性が高いように思えてならなかった。それに対して、ゼロはサンドイッチを一旦皿に置き、ルージュの瞳をまっすぐと見据えながら口を開いた。
「やれるさ、俺と、ルージュなら」
その言葉は、彼女への慰めだけでなく、自らに対しても言い聞かせているような言葉だった。どこかの世界では、たった一人の勇者が魔王を下したこともあるらしいが、この世界ではそれは現実的ではない。やはり仲間と共にお互いを助け合いながら進む旅でなくては暗黒の女帝を打ち倒すことは厳しいことであろう。
だからこそ、ゼロはルージュに言った言葉は、お互いがお互いを助けることに対する決意でもあり、ルージュに対する約束でもあるのだ。
「そうね……。頑張らないとね」
ルージュは先程よりも更に優しい微笑みを浮かべていた。それは決意か、諦めか。彼女にしか分からない。だが、彼女の眼はギラギラとした使命感に燃えていた。
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