唯一の血である私はご主人様から今日も愛を囁かれています

星空永遠

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二章

6話

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佐倉さくら雪璃せつさん。キミのことが好きです。よかったら、僕と付き合わない?」
「……え?」

 いつも通りの学校。私は空き教室で男の子に告白されていた。人外さんが多い学校だから、おそらくこの人も……いや、もしかしたら私と同じ強い人間かもしれない。けど、見た目からじゃ判断が難しい。黒髪に青い瞳。私とおんなじだ。

「雷雨君と付き合ってるってウワサ、本当だったんだ」
「雷雨様と私は主人とメイドの関係です」

 これを言えば大抵の人は諦めてくれる。私と雷雨様が付き合ってる? そんな噂が流れてたなんて知らなかった。

 実を言うと、私は雷雨様と契約はしているけど、雷雨様と付き合っていない。でも、お互いに『好き』と伝えているから暗黙の了解ってやつ。

 気持ちは言葉にしないと伝わらない。なら、いい加減私も曖昧な関係はやめて、自分から『付き合ってほしい』っていうべき? なんとなく自分から言ったら負けな気がして、雷雨様からの告白を待っているんだけど、今まで告白はなくて。多分、互いに契約で結ばれているし、裏切らないことを知ってるから、改めて言う必要がないと思っているのが今の現状。

「なら付き合ってないってことだよね? 良かったぁ。このまま断られるんじゃないかって思ってたんだぁ」
「ちょっと待ってください。私、貴方と付き合うなんて一言もいってません。そもそも私は貴方の名前すら知りませんし。同じクラスじゃないですよね?」

「あ、ごめんごめん。僕は神宮じんぐう弥生やよいっていうんだ。佐倉さんとは隣のクラスだから名前を知らないのは当たり前だよ。でも、これから僕のこと知ってもらえたらいいし」
「……」

 なんか付き合う流れになってない? 早とちりもいいところというか……私、返事すらしてないんだけど。

「神宮くん。私、貴方と付き合う気はありません」
「どうして?」

「雷雨様のメイドとして、他の方と交流を深めるつもりがないからです」
「なんで? 同い年として仲良くなりたいじゃん? なんなら、友達からでもいいし!」

「あまりしつこいと私も黙っていませんよ」
「それって雷雨くんと付き合ってるってこと?」

「だから違いますって」

 しつこい。本当になんなの、この男。雷雨様は雷雨様でチャラいところあるけど、この神宮くんは別の意味で厄介すぎる。普通、ここまで女の子に拒否られたら引き下がるんだけど。

 雷雨様を知ってるなら、西園寺家のメイドに手を出すということがどれだけ危険かも理解してるはず。神宮くんは一体なにを考えてるの?

「そんなこと言っていいのかなぁ?」
「?」

 何かを企んでいるような笑み。整っている顔ゆえに恐ろしく感じる。私、神宮くんに弱みを握れるようなことした?

「図書室でこんなにエッチなことしといてさ。それでもまだ雷雨くんと付き合ってないっていうの~?」
「っ……!」

 スマホを目の前に出された。そこには私が雷雨様といやらしい事をしていた写真がうつっていた。

「今すぐそれを消してっ!!」
「ダーメ」

「盗撮するなんて最低よ!」

 私は神宮くんのスマホを取り上げようと手を伸ばす。だけど神宮くんの身長が高すぎて、私じゃ届かない。

「先生に言ったのは貴方ね、神宮くん」
「そうだけど?」

「その写真をどうする気?」
「キミの旦那様? だっけ。雷雨くんのお父さんなんかに見せたら面白そうだよね」

「っ、やめて!」

 雷雨様はヴァンパイアだから私の血を吸うことは許されている。けれど、それ以上の関係になることは禁止されていて……。私と雷雨様はあくまでも西園寺家の主人とメイドだから。旦那様にバレたりしたら、私はその日にでもメイドを解雇され、家を追い出されてしまう。だからこそ、夜の遊園地だって秘密でデートしたのに。

 ……迂闊だった。図書室だから見られているかもしれないという不安はあったけれど、まさか脅してくる人がいるなんて。

「何が目的なの? 西園寺家を狙っているなら、まずは私が相手になっ……!?」
「西園寺家に興味はない。僕がイチバン興味があるのはキミだよ、佐倉雪璃ちゃん」

「ッ……」

 私が銃を取り出すよりも先に、私の両手を掴んだ。動きを止められ、指一本、自分の意思じゃ動かせない。
 どんな力してるの? 私だって、人間のほうだと強いほうなのに。

「写真をばら撒かれたくなかったら、僕と付き合って」
「……嫌だと言ったら?」

「キミの骨を折って拉致して家に持ち帰って監禁してもいい」
「そんなことしたら雷雨様が黙ってない」

「なら、キミを雷雨くんの目の前で殺す」
「っ……」

 雷雨様が悲しむところなんて見たくない。仮に断ったとしても、私たちの関係がバレる。だったら、私が雷雨様を守るしかない。そのためには神宮くんに従うしかない。

 嘘ではないことはわかっていた。神宮くんは私と話している最中にも私の腕を掴んでギリギリと音を立て、腕をあらぬ方向に曲げようとしている。痛みには強いほうだけど、折られたら、それこそ逃げられなくなる。

 雷雨様、ごめんなさい……。貴方の唯一の血でいるにはこうするしかないの。
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