最強総長は闇姫の首筋に牙を立てる~紅い月の真実~

星空永遠

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Ⅳ 兄妹の絆、そして和解

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「わかった。お前がそこまでいうなら…俺の血をお前に流し込み、闇華を一時的にだが吸血鬼にする」
「どうぞ」

私はボタンを2つ外して首筋を見せた。

「っ…後悔してもしらねーからな」

―――ガブッ。

「!!」

――ドクン。

心臓の音がなる。

「あ……」
「や、闇華?」

頭がクラクラする。それに吐きそう。

「へ、いき。少し休めばなんとか」

無性に喉が渇く。だけどただの水なんかじゃ満足しない、そんな渇き。いま、私は壱流と同じ。あぁ、これが吸血鬼になるってことなのね。

「もう…大丈夫よ。ほら早く行きましょう」
「おまっ、その翼…!」

「翼?」

壱流が口を開けて指差すその先には…。

「黒い、羽…」
「それは純血種ほど位が高くないとないのに。なんで俺なんかの血で?」

「そんなの深く考えても答えは出ないわ。そんなことより急ぎましょう」
「あ、あぁ」

「壱流」
「なんだ?」

「ありがと…私を吸血鬼にしてくれて」
「なにか勘違いしてないか、おまえ」

「え?」
「闇華のは仮なんだぞ」

「それなら壱流と一緒ね」
「おま……!」

やっと同じ。これで貴方と同じ世界が見れる。

これが仮じゃなくて私が本物の吸血鬼だったら…もし、本当に吸血鬼になれたんだとしたら……。

「姉貴、やっと戻ってきた!って、その羽なんですか!?」
「あ、えっと…コス、プレ?」

「コスプレって…」
「どうやら成功したみたいだね。…やっぱりオレの見込んだ通りキミは素晴らしいよ、闇姫」

「白銀、先生?」
「綺麗な羽だね、炎帝さん」

「あ、ありがとうございます。でも、どうやって羽をしまうかわからなくて」
「…大丈夫」

え?大丈夫って、これで?使い方とか合ってるってことなの?

「翼あるものは飛び方を知っている。人間だってそう。最初はわからないだけ。それに一時的な効果かもしれないだろう?副作用が出ないとも限らない」
「つまり、闇華の羽は副作用だっていいたいのか?」

「こんな副作用なら大歓迎ですね!姉貴がより一層天使に見えます!めっちゃ綺麗ですよ、姉貴!!」
「え、ありがと…って、そんなことより早く」

「了解です!」
「そうだな。じゃ、龍幻。今度こそ行ってくる」

「気をつけて。(キミはやはり特別で選ばれた人間だ…)」


*  *  *


「狗遠様、こっちに向かってきてる」
「元闇姫だろ。俺様が気付いていないと思っているのか?」

「誰もそんなこと言ってないでしょ?」
「なぁ、夢愛」

「なぁに?狗遠君。あ、まちがえた。狗遠様。深刻そうな顔してどうしちゃったの?まさか、ここにきて情けをかけるつもりぃ?」
「……」

「ダメダメ、元闇姫に同情なんかしちゃ。狗遠様は最強の吸血鬼であり、最強総長なんだよ?昔から人や同胞を殺してきた貴方が元闇姫だけを特別扱いするなんてないよねぇ?」
「俺様がいつ元闇姫を特別扱いした?……手を汚してまで守りたかったんだ、夢愛のことを」

「狗遠様、なにか言った?」
「なんでもない。ほら来たぞ、お出ましだ」

「あ、やっと来たぁ。元闇姫…ううん、闇華ちゃん、1日ぶりだね」
「夢愛ちゃん…」

高い建物の上にいた狗遠と夢愛ちゃん。

「高いところから人を見るのって良いと思わない?まるで私がこの世で一番偉いんだ~ってそんな気持ちになる」
「……」

「なに、その目」
「私は話し合いに来たの」

「話し合い?それは総長である俺様に言ってるのか?」
「そうよ」

私は不安定な翼を制御しつつ、地上におりた。

「その翼…」
「狗遠様、あんなのは作り物。騙されちゃだーめ」

「今は総長とか闇姫とか裏社会とか一旦保留にして話をしたいの」
「保留って元闇姫のくせに何いってんの?もしかして、あんたってバ……」

「夢愛、少し黙ってろ」
「狗遠様…」

「私は貴方達を救いにきた」
「救いだと?俺様はそんなもの望んでいない。俺様が望む世界は真っ黒だよ、まさにこの街のようにな」

「どうして…」

なんで自ら闇の世界に足を入れようとするの?本当にそう思ってるなら、どうしてあなたはそんなに悲しそうな顔を浮かべているの?

「貴様がどのくらい強くなったか証明してみろ。そしたら話くらいは聞いてやる。ついでに貴様の仲間がどこにいるかも教えてやる」
「証明って…どうすればいいの?」

「下にいる吸血鬼、それに俺様の舎弟を倒せ。殺してもかまわん」
「部下を殺すなんて冗談でも言わないで」

「俺様が冗談で言ってると思うのか?」
「…っ。私はわたしのやり方で倒すから」

私はその場を離れ、壱流たちと合流する。

「闇華、どうだった?」
「話を聞いてくれそうになかった」

「だったらやりましょう!強行突破です。大丈夫です、姉貴にはその翼がありますから!」
「でも条件を出された。それなら話を…聞いてくれるかもしれない」

「またお前の血を差し出すって話なら…」
「違う」

「姉貴?」

きっと狗遠からしたら私はさぞかしお節介に見えるんでしょうね。なにも知らないくせに土足で踏み込んでくるな……かな。

「ここにいる狗遠の部下を…無傷で気絶させてほしいの」
「姉貴、それはいくらなんでも…!」

「頼める?壱流」
「…わかった。お前ら聞いたか?俺の女である命令は総長である俺の命令と同義だ」

「りょうかいです、壱流総長!」
「必ずやり遂げてみせます!」

「私は吸血鬼たちを相手する。壱流、幻夢、怪我だけはしないで」

「俺は最強総長だぞ。だから余計な心配はしなくていい」
「僕だって姉貴の舎弟ですよ!それに怪我なら慣れっこです!」

「…ありがとう」

私はその場にいる仲間たちにお礼を言った。壱流がいなければ、きっと仲間を助けることはできなかった。いくらお礼をいっても足りないくらいだ。

「昨晩はおれらに手も足も出なかったくせにいっちょ前にいうねぇ」
「この人数相手に勝てると思ってんの?ただの不良少女の君が」

「あれは手を出せない状況だったから。それに今は…私も貴方達とおなじ」

「なっ…!?」
「その翼は偽物じゃないっていうのか!」

「ごめんなさい…だから眠ってて」

私は翼を自由に扱い、吸血鬼たちの攻撃を避けていく。

「「!?」」
「白銀先生、ありがとうございます…」

ここに来る直前、白銀先生に渡された物、それは…銀の銃。中身は白銀先生が壱流に撃ったものと一緒。吸血鬼に効く眠り薬が入っている。

ただ不思議なのが私は仮とはいえ吸血鬼なのにどうしてこれを扱えるの?銀は吸血鬼にとって弱点のはずなのに…。

「俺らの相手もしてもらおうか、元闇姫ちゃん」
「君に勝てばきみの血は俺達の物だよねぇ?」

「次から次へと…」

いくら倒してもキリがない。
狗遠はこうなることをわかっていたから、あんな条件を出した?ちがう…多分、狗遠は怖いんだ。私に負けることじゃない。私に救われようとすることが。
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