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Ⅲ リベンジマッチ

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あれから数週間が経ち、学校にも慣れてきた。クラスには上手く馴染めてる自信はないけど、友達もいるし…。

「炎帝さんって、クール美少女って感じだよなぁ」
「わかる!炎帝さんと付き合えたら超幸せ!!」
「炎帝さんに釣り合う男って、相当スペック高いだろうな~」

「………」

最近、男子の視線が気になる。なにやら、私の知らないところでわたしのウワサが…。

「闇華ってばモテモテ~!それで、クラスに気になる男子はいないの!?」
「私、誰かと付き合うとか考えたことなくて…」

「闇華ほど美少女なら男選び放題じゃない!?もったいない~」
「それとも闇華ちゃんはもう気になる男の子がいたりするの?」

「とくにそういうのはない、かな」

高校生って恋バナ?とか好きよね…。私は他人にそんな話をしようとは思わない。けど、これって私のほうが変?

あれから壱流は1度も学校に来ていない。体調は大丈夫かしら。白銀先生は毎日来ているようだけど、なかなか2人きりになる機会がなくて壱流のことを聞けずにいた。

毎日ちゃんとご飯は食べているの?
総長として無理はしてない?吸血鬼になって後悔は?

…こんなこと友達に相談することじゃない。
壱流のことは常に頭から離れない。

「じゃあ幻夢くんともなにもないわけぇ?」
「だから、幻夢はそういうのじゃなくて」

「なぁ、聞いたか?また隣町に出たって」
「闇姫だろ?知ってる。ウワサによると、めっちゃ美人らしい」

「なんでも既に10人以上の男に奢ってもらったとか」
「彼氏が何人もいるって話だろ?」
「俺の聞いた話では、お気に入りの男と毎日寝てるって」

「……」

この教室で、闇姫という言葉を度々聞くようになった。

いまだに偽闇姫の手がかりは掴めていない。
隣町に行くべきなんだろうけど…。

偽闇姫に仮に会ったとしてなにを言えばいい?

『悪さをするな』『本物の闇姫は私です』
そんなことを言って偽闇姫が悪事をやめるとは思えない。

恋人が何人もいるとか男に奢らせてるとか、私が闇姫だった頃そんなことをしたことは1度だってないのに。

闇姫のイメージがどんどん悪くなっていく。私の知らないところで闇姫の名前が汚されていく。多分、私はそれが許せないんだ。

闇姫は幻夢や他の舎弟と築き上げてきたものだから。私が闇姫を卒業しても思い出は私の中にある。胸の奥にまだ残ってる。あの頃は楽しかった。


放課後

「こっちに闇姫がいたってよ!」
「マジで!?一瞬でも見れたらラッキーだよな!」

「…」

なんで私、隣町なんかにいるんだろ。男たちのあとをつけて気がつくとここに来ていた。自然と足が進んでしまっていて。

もうすぐ日が沈む。
それは『一般人』にとって危険な時間。

しーん。あたりが静まり返る。

さっきまで話していた男たちの声が聞こえない。

「まさか見失…」

「君、こんなところでなにしてんの?」
「女の子がこんな時間に1人とか危ないよ。もしかして、家出?」

「ちが…!」

厄介なのに捕まってしまった。

「よく見ると、めちゃくちゃ美少女だねぇ」
「今から俺たちと遊ばない?」

「用事があるので」
「そんなこと言わないでさ~。ねっ?」

肩に手をおかれた。はっきりいって不愉快。
こんな時間に出歩く私も悪いけど、やっぱりこの場所は以前となにも変わってない。

ここは『闇崎』
私が闇姫になる前から治安が悪い。

夜は不良やヤクザがいて当たり前。
喧嘩は日常。吸血鬼だって多くいる場所。

きっと『彼ら』にとっては居心地がいいのだろう。

「胸はすこーし物足りないけど、君が俺たちを満足させられるならこれくらいは出すよ?」

男の1人は私の目の前に自身の財布をチラつかせる。

「ほんと…反吐が出る」
「君、いまなんて?」

「聞こえなかったらもう一度いうわ。あなたたち、さっきから不愉快……っ!?」
「これは俺様の女だ」

後ろから不意に抱きしめられた。

この声、どこかで…。

「お、お前は天羽あもう狗遠くおん!!」
「ウソ、だろ…。すみません、俺たちは帰りますんで」

さっきまでの威勢がない。ガタガタと震えてる2人。

「あ?俺様のテリトリーで好き勝手暴れておいてタダで帰れると思うなよ」
「ちょっとまって」

「なんだ」
「その人たちはこのままかえしてあげて」

「てめぇは相変わらず甘いなぁ。よくそれで無事で入れたもんだ。あぁ、今はその名も捨てて平和な世界で生きてるんだったな」

この人、私が闇姫だったときを知ってる?

「低俗なゴミは見逃す。代わりにてめぇが身体で払え。ほら、こっちに来い」
「ちょっ。まっ…」

腕を強引に引っ張られ、無理やり歩かされる。

身体で払うって…。私、なにも言ってないんだけど。

今、低俗なゴミって聞こえたような。

「数年ぶりの再会とはいえ変わってないな、闇姫。壁みたいな貧相な胸は健在ってとこか」

ある部屋に連れ込まれた。そこにあるのは二人用のベッドと大きなソファーのみ。

「っ…!なに、するの」

いきなり胸を触られた私は彼の手を振り払う。

「あそこにいたのがただの不良だからよかったものの、俺様のようなヤクザだったら、てめぇはあっという間に襲われてたぜ」

俺様のよう、な…?

「なにボサっと突っ立ってんだ?ほら、ベッドに来い」
「ふざけないで。…私は助けてなんて頼んでない」

「ほぅ。その強気な性格も変わってないのか。数年も経てば忘れるものなのか?てめぇにとって俺様はその程度のものだったのか?」
「あいにく闇姫の敵は多いから。いちいち名前なんか覚えてたらキリがないもの」

「だったら思い出させてやる。闇姫、てめぇは今日俺様の女になるんだからな」

その言葉、聞き覚えがある。

「ふっ」
「なにを笑ってる、闇姫」

「ごめんなさい忘れてて。やっと思い出した。あなたは壱流に紅い月を打ったあの時の総長」
「思い出してくれて光栄だなぁ。だが、壱流ってのはどこの馬の骨だ?」

「まさか…覚えてないっていうの?」

そんなこと許されていいはずがない。
壱流はあなたのせいで今も苦しんでいるのに。

「俺様も長年総長をやってるとなぁ、敵が多いんだよ。いちいち名前なんか覚えてたらキリがねぇだろ?なっ、闇姫」
「ゲスが。……っ!?」

殴りかかろうとした次の瞬間、私は気がつくとベッドに押し倒されていた。

今の一瞬でなにが起きたっていうの?

「てめぇの言葉をそのままパクったんだよ。なにか悪いか?」
「ふざけないで。貴方が壱流にやったことが許されると思ってるの!?忘れたとは言わせない。あの日から壱流は…」

「忘れてないさ。あれは俺様にとってのおもちゃ。それで壱…なんとかは元気にしてるか?」
「本当にどこまでもゲスなのね、あなたは」

「お褒めの言葉ありがとよ」

上から人を見下す態度。
どうして会った時に思い出さなかったの?私のバカ。

「それよりも今は自分の心配をしたほうがいいぜ。身体で払ってもらうっていったの嘘じゃないからな?」
「このくらい…」

ビクともしない。なんでなの?

「こうして見ると、いやらしい身体をしてるんだな」
「なっ…!」

無理やり足を広げられる。敵の前でこんなみっともない姿…。羞恥心よりもプライドが壊れる音がした。

「自分の弱さを嘆く必要はない。闇姫、てめぇは今でも十分に強い。だが、それは人間同士での話だ」

いつの間にか目が赤くなってる。

「俺様が吸血鬼だってことはてめぇも知ってることだろ。なにを今さら驚く必要がある?」
「いいから離して」

「闇姫は最強なんだろ?だったら見せてみろ」

強くなろうと覚悟を決めた矢先、一番会いたくない人に再会するなんて。
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