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Ⅰ 入学式
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「セクハラまがいなことしてただろ?」
「え?」
「廊下歩いてたとき、下見たらお前がいたから」
「お前じゃなくて、龍幻先生だろ?」
「あー、はいはい。って、聞いてるのか?」
「聞いてるよ。……セクハラはしてない。ただオレと同じ赤い目をしていた少女がいたから」
「気になるのか?」
「そうだね。研究者としては彼女がどういう存在かすごく興味がある」
「研究マニアもそこまでいくと重症だな。それでお前が臨時教師になったのは俺の監視のためだっけ?」
「マニアじゃなくて、本物の研究者なんだけどね。あぁ、そうだよ」
「臨時講師とはいえ教師の資格なんていつ取ったんだよ」
「オレが学生なのを忘れたのかい?君が必死で受験勉強してるときにとったさ。こんな時のために、ね」
「さすが天才サマのいうことはひと味もふた味も違うぜ」
「それを嫌味のつもりで言ってるなら、その喧嘩は乗らないよ。それに今は普通にしてるけど、君はいつ暴走するのかわからないんだよ?」
「暴走なんてしねぇよ。そのためにお前がいるんだろ?」
「それはそうだけど……。薬で抑えてるとはいっても吸血衝動は襲ってくる。無造作に人間を襲いだして、学校で暴れでもしたら退学どころの騒ぎじゃない。君がいる組の連中だって……って、君こそオレの話を聞いているのかい?壱流」
「説教が長いんだよ。だから、この高校に入学したんだ。闇姫がいるかもしれないって。……これがデマだったら、アイツらタダじゃおかねぇ」
「……(彼らの噂だけでこの高校を選んじゃうくらいだから君の行動力は人一倍……いや、それもこれも闇姫のため、か)」
「りゅーげん先生。聞きたいことがあるんですけど」
「どうしたんですか、いきなり敬語で」
「…俺の教室はどっち?」
「また迷ったんですか。
……こっちですよ、ついてきなさい」
「へいへい」
「(しかし、あの赤い瞳……。あの見た目でただの人間なら彼女は間違いなく、オレと同じく特別な血を持っている。彼女は気付いていないのか?だとしたら、一人で行動するのは危険だ。どうか彼女の身になにも起きませんように)」
「あれって、絶対セクハラですよね!?」
「なんのこと?」
「他人事みたいに聞き返してますけど、姉貴の話ですからね?」
「?」
セクハラをされた覚えはない。
「白衣野郎のことですよ!」
「白衣、野郎……」
さっき会話をしてた先生のことだろうか。
「口説かれてたって正直に言ってください!姉貴は新入生の中でも美少女です。僕からしたら超絶可愛いです。だから白衣野郎の見る目はたしかにいいですけど、でもだからって教師が生徒にセクハラするのはいけないと思います!!」
「幻夢、一旦落ち着きなさい。私は普通に話をしていただけよ。それに口説かれてないわ」
「話って?」
「お互いの目の話。…あの先生も私と同じ赤い目だったの」
「白衣野郎の前髪がやたら長かったのはそういうことだったんですね」
「それで、私の目が綺麗だって言ってた」
私はいつも奇異の目を向けられていた。挙句の果てに吸血鬼扱いされてタイマンをする前に逃げられた経験もある。
この目のせいで余計に闇姫の存在やウワサが大きくなっていったのも多少は関係あると思う。まぁ、闇姫を卒業した今となってはどうでもいいけれど。
教師に目のことについて声をかけられた時は「いつも通りの説教か」と話を流そうと思った。だけど、今回は違った。気持ち悪がられるどころか褒められるなんて……。予想外の言葉を投げられて、一瞬反応が遅れてしまった。
幻夢が来なかったら、私はあのまま教師に触られていたのだろうか?だからセクハラ?でも、私はそう思わなかった。だって教師が私を見る目は少し違っていたから。
毎日のように喧嘩をしていた私だからこそわかる。あの目は殺意でも恋情でもない。
「やっぱり口説いてるじゃないですか!今年入った教師かなんだか知らないですけど、若くて高身長だからって調子に乗りすぎです。その上イケメンとか。白衣野郎は吸血鬼で間違いありません!」
「決めつけはよくないわ、幻夢」
「でも……」
それをいうなら私だって吸血鬼と間違われる。慣れというものは怖い。あの教師が仮に吸血鬼だったら、わざわざ髪で隠したりしない。気にしてるということは彼は人間。そういう意味も含めて「同じ」といったのかもしれない。
「僕は姉貴の赤い目めっちゃ好きですよ!あの白衣野郎は別として。だって、姉貴のはキラキラしてるじゃないですか。まるで宝石のルビーみたいです」
「それは言い過ぎよ」
いつも子供っぽいくせに時々幻夢は大人びた言葉を使う。いつもの幻夢からはとても想像がつかない。本物のルビーみたい?やっぱり大げさすぎる表現。
「ホントのことですよ?」
「ありがとう。たとえ冗談だったとしても嬉しいわ」
「冗談や嘘は姉貴の前では言わないですよ」
「はいはい」
「そうやって子供扱いしてはぐらかそうとする~!」
「頭を撫でてるのは素直に可愛いと思ったからよ」
この目がコンプレックスなのは幻夢も知っている。表情が少し暗かったのか、落ち込んでると思ったんだろう。感情を表に、というよりは顔に表情が出にくいらしく私の考えてることは幻夢いわく察するのが難しいらしい。
それは多分、「目に映るものは全員が敵」だと思い込んでた時期があったから、未だにそれが抜けきれてないのが原因。一瞬でも相手に弱さを見せれば負ける、そう思っていたから。
「え?」
「廊下歩いてたとき、下見たらお前がいたから」
「お前じゃなくて、龍幻先生だろ?」
「あー、はいはい。って、聞いてるのか?」
「聞いてるよ。……セクハラはしてない。ただオレと同じ赤い目をしていた少女がいたから」
「気になるのか?」
「そうだね。研究者としては彼女がどういう存在かすごく興味がある」
「研究マニアもそこまでいくと重症だな。それでお前が臨時教師になったのは俺の監視のためだっけ?」
「マニアじゃなくて、本物の研究者なんだけどね。あぁ、そうだよ」
「臨時講師とはいえ教師の資格なんていつ取ったんだよ」
「オレが学生なのを忘れたのかい?君が必死で受験勉強してるときにとったさ。こんな時のために、ね」
「さすが天才サマのいうことはひと味もふた味も違うぜ」
「それを嫌味のつもりで言ってるなら、その喧嘩は乗らないよ。それに今は普通にしてるけど、君はいつ暴走するのかわからないんだよ?」
「暴走なんてしねぇよ。そのためにお前がいるんだろ?」
「それはそうだけど……。薬で抑えてるとはいっても吸血衝動は襲ってくる。無造作に人間を襲いだして、学校で暴れでもしたら退学どころの騒ぎじゃない。君がいる組の連中だって……って、君こそオレの話を聞いているのかい?壱流」
「説教が長いんだよ。だから、この高校に入学したんだ。闇姫がいるかもしれないって。……これがデマだったら、アイツらタダじゃおかねぇ」
「……(彼らの噂だけでこの高校を選んじゃうくらいだから君の行動力は人一倍……いや、それもこれも闇姫のため、か)」
「りゅーげん先生。聞きたいことがあるんですけど」
「どうしたんですか、いきなり敬語で」
「…俺の教室はどっち?」
「また迷ったんですか。
……こっちですよ、ついてきなさい」
「へいへい」
「(しかし、あの赤い瞳……。あの見た目でただの人間なら彼女は間違いなく、オレと同じく特別な血を持っている。彼女は気付いていないのか?だとしたら、一人で行動するのは危険だ。どうか彼女の身になにも起きませんように)」
「あれって、絶対セクハラですよね!?」
「なんのこと?」
「他人事みたいに聞き返してますけど、姉貴の話ですからね?」
「?」
セクハラをされた覚えはない。
「白衣野郎のことですよ!」
「白衣、野郎……」
さっき会話をしてた先生のことだろうか。
「口説かれてたって正直に言ってください!姉貴は新入生の中でも美少女です。僕からしたら超絶可愛いです。だから白衣野郎の見る目はたしかにいいですけど、でもだからって教師が生徒にセクハラするのはいけないと思います!!」
「幻夢、一旦落ち着きなさい。私は普通に話をしていただけよ。それに口説かれてないわ」
「話って?」
「お互いの目の話。…あの先生も私と同じ赤い目だったの」
「白衣野郎の前髪がやたら長かったのはそういうことだったんですね」
「それで、私の目が綺麗だって言ってた」
私はいつも奇異の目を向けられていた。挙句の果てに吸血鬼扱いされてタイマンをする前に逃げられた経験もある。
この目のせいで余計に闇姫の存在やウワサが大きくなっていったのも多少は関係あると思う。まぁ、闇姫を卒業した今となってはどうでもいいけれど。
教師に目のことについて声をかけられた時は「いつも通りの説教か」と話を流そうと思った。だけど、今回は違った。気持ち悪がられるどころか褒められるなんて……。予想外の言葉を投げられて、一瞬反応が遅れてしまった。
幻夢が来なかったら、私はあのまま教師に触られていたのだろうか?だからセクハラ?でも、私はそう思わなかった。だって教師が私を見る目は少し違っていたから。
毎日のように喧嘩をしていた私だからこそわかる。あの目は殺意でも恋情でもない。
「やっぱり口説いてるじゃないですか!今年入った教師かなんだか知らないですけど、若くて高身長だからって調子に乗りすぎです。その上イケメンとか。白衣野郎は吸血鬼で間違いありません!」
「決めつけはよくないわ、幻夢」
「でも……」
それをいうなら私だって吸血鬼と間違われる。慣れというものは怖い。あの教師が仮に吸血鬼だったら、わざわざ髪で隠したりしない。気にしてるということは彼は人間。そういう意味も含めて「同じ」といったのかもしれない。
「僕は姉貴の赤い目めっちゃ好きですよ!あの白衣野郎は別として。だって、姉貴のはキラキラしてるじゃないですか。まるで宝石のルビーみたいです」
「それは言い過ぎよ」
いつも子供っぽいくせに時々幻夢は大人びた言葉を使う。いつもの幻夢からはとても想像がつかない。本物のルビーみたい?やっぱり大げさすぎる表現。
「ホントのことですよ?」
「ありがとう。たとえ冗談だったとしても嬉しいわ」
「冗談や嘘は姉貴の前では言わないですよ」
「はいはい」
「そうやって子供扱いしてはぐらかそうとする~!」
「頭を撫でてるのは素直に可愛いと思ったからよ」
この目がコンプレックスなのは幻夢も知っている。表情が少し暗かったのか、落ち込んでると思ったんだろう。感情を表に、というよりは顔に表情が出にくいらしく私の考えてることは幻夢いわく察するのが難しいらしい。
それは多分、「目に映るものは全員が敵」だと思い込んでた時期があったから、未だにそれが抜けきれてないのが原因。一瞬でも相手に弱さを見せれば負ける、そう思っていたから。
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