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Ⅰ 入学式
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「まだ見つからないのか?」
「……はい。それが手かがりになるものはなにも」
「本当に捜してるのか? 下の者に伝えろ。俺の命令に逆らう者がいればタダじゃおかないって」
「は、はいっ!!」
「これだけ捜してもいないってことは闇の子ってのはもうこの世にはいないんじゃ……」
「お、おいバカ!」
「え?」
「あ?」
「あ……。壱流総長、すみません!」
「それと闇の子じゃねぇ」
「……へ?」
「闇姫だ。一体どこに消えたんだ、クソっ!俺はこんなにも最強に…総長になったつーのに」
最後の言葉はとても小さく、部下たちには聞こえない。
闇姫が消えて数年後。闇姫が助けた少年は最強の総長にまで上り詰めていた。
皇綺羅 壱流。今年の春から高校生になった。今やこのあたり一帯、夢星町を仕切る総長である。かつての弱弱しい面影は消え、今では立派な男に成長していた。
中学時代、隣町の総長に紅い月を打たれ、命を落としかけたが闇姫の血を飲んだことで現在は吸血鬼として生きている。言ってしまえば彼は人間から吸血鬼になった奇跡のような存在。
「部下に八つ当たりしたところで闇姫は見つからないぞ」
「……龍幻」
「龍幻さんだ」
「龍幻?」
「おまっ……。龍幻さんを知らないとか本当にこの組のもんか?って疑われるぜ」
「すみません。最近入ったばかりのもんでして……」
「それなら説明してやるよ。龍幻さんは壱流総長の次にこの組で偉い方だ。大学生ながら紅い月の研究をしている天才なんだぞ!なんでも壱流総長に自分の血を飲ませてるとか」
「天才研究者の話は耳にしたことがありましたけど、まさかあの龍幻さんだったとは驚きです!」
「オレの噂話をしてるのは君たちか?」
龍幻は壱流の部下たちに近寄った。
白銀龍幻 、21歳。彼は学生でありながら、日々紅い月の研究をしている一人。今では、たった一人で紅い月を完成させることが出来る。そのため天才研究者として、その界隈で龍幻の名前を知らない者はいない。
龍幻の場合、紅い月は悪用するために作っているのではない。紅い月を接種した者を少しでも吸血鬼として生きさせるため。そして、壱流の唯一無二の親友だ。龍幻はただの人間だが、ある日吸血鬼に襲われそうになった。その危機を救ったのが壱流というわけだ。
それからというもの、壱流の隣で彼の心のケアをしながら自らの血を提供している。
「龍幻さん!」
「マジ半端ねえです!俺、さっきの話を聞いて龍幻さんに憧れちゃいました!」
壱流の部下たちは目をキラキラさせながら龍幻を見ていた。しかし、その光景は壱流にとって気に食わなかった。
「俺を差し置いて龍幻ばっか見てんじゃねぇ!」
「す、すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
その場にあったダンボールを蹴り上げる壱流。部下たちは怖がって壱流から離れてしまった。
「壱流やりすぎだ」
「だって…」
「そんなんだから、いつまで経っても部下と仲良くなれないんだぞ」
「言われなくてもわかってる。いいんだ、俺には龍幻がついてるから」
「オレは壱流より年上だから。オレが言いたいのは同世代と……」
「あー!うるさいうるさい」
壱流はその場にしゃがみ込んで耳を塞ぐ。どうやら、龍幻の説教じみた話を聞きたくないようだ。
「いくら背が高くなったところで子供っぽいところはいつまでも変わらないな、壱流」
「うるせぇ。俺には時間がねえんだ。早くアイツを、闇姫を見つけないと俺は……」
「……そう、だな。(やはり闇姫はお前にとって……)」
壱流の黒い瞳にはなにが見えているのか。
彼が闇姫を捜す本当の理由とは?
そして、現在の闇姫は壱流と同じく高校生になっていた。
「……はい。それが手かがりになるものはなにも」
「本当に捜してるのか? 下の者に伝えろ。俺の命令に逆らう者がいればタダじゃおかないって」
「は、はいっ!!」
「これだけ捜してもいないってことは闇の子ってのはもうこの世にはいないんじゃ……」
「お、おいバカ!」
「え?」
「あ?」
「あ……。壱流総長、すみません!」
「それと闇の子じゃねぇ」
「……へ?」
「闇姫だ。一体どこに消えたんだ、クソっ!俺はこんなにも最強に…総長になったつーのに」
最後の言葉はとても小さく、部下たちには聞こえない。
闇姫が消えて数年後。闇姫が助けた少年は最強の総長にまで上り詰めていた。
皇綺羅 壱流。今年の春から高校生になった。今やこのあたり一帯、夢星町を仕切る総長である。かつての弱弱しい面影は消え、今では立派な男に成長していた。
中学時代、隣町の総長に紅い月を打たれ、命を落としかけたが闇姫の血を飲んだことで現在は吸血鬼として生きている。言ってしまえば彼は人間から吸血鬼になった奇跡のような存在。
「部下に八つ当たりしたところで闇姫は見つからないぞ」
「……龍幻」
「龍幻さんだ」
「龍幻?」
「おまっ……。龍幻さんを知らないとか本当にこの組のもんか?って疑われるぜ」
「すみません。最近入ったばかりのもんでして……」
「それなら説明してやるよ。龍幻さんは壱流総長の次にこの組で偉い方だ。大学生ながら紅い月の研究をしている天才なんだぞ!なんでも壱流総長に自分の血を飲ませてるとか」
「天才研究者の話は耳にしたことがありましたけど、まさかあの龍幻さんだったとは驚きです!」
「オレの噂話をしてるのは君たちか?」
龍幻は壱流の部下たちに近寄った。
白銀龍幻 、21歳。彼は学生でありながら、日々紅い月の研究をしている一人。今では、たった一人で紅い月を完成させることが出来る。そのため天才研究者として、その界隈で龍幻の名前を知らない者はいない。
龍幻の場合、紅い月は悪用するために作っているのではない。紅い月を接種した者を少しでも吸血鬼として生きさせるため。そして、壱流の唯一無二の親友だ。龍幻はただの人間だが、ある日吸血鬼に襲われそうになった。その危機を救ったのが壱流というわけだ。
それからというもの、壱流の隣で彼の心のケアをしながら自らの血を提供している。
「龍幻さん!」
「マジ半端ねえです!俺、さっきの話を聞いて龍幻さんに憧れちゃいました!」
壱流の部下たちは目をキラキラさせながら龍幻を見ていた。しかし、その光景は壱流にとって気に食わなかった。
「俺を差し置いて龍幻ばっか見てんじゃねぇ!」
「す、すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
その場にあったダンボールを蹴り上げる壱流。部下たちは怖がって壱流から離れてしまった。
「壱流やりすぎだ」
「だって…」
「そんなんだから、いつまで経っても部下と仲良くなれないんだぞ」
「言われなくてもわかってる。いいんだ、俺には龍幻がついてるから」
「オレは壱流より年上だから。オレが言いたいのは同世代と……」
「あー!うるさいうるさい」
壱流はその場にしゃがみ込んで耳を塞ぐ。どうやら、龍幻の説教じみた話を聞きたくないようだ。
「いくら背が高くなったところで子供っぽいところはいつまでも変わらないな、壱流」
「うるせぇ。俺には時間がねえんだ。早くアイツを、闇姫を見つけないと俺は……」
「……そう、だな。(やはり闇姫はお前にとって……)」
壱流の黒い瞳にはなにが見えているのか。
彼が闇姫を捜す本当の理由とは?
そして、現在の闇姫は壱流と同じく高校生になっていた。
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