最強総長は闇姫の首筋に牙を立てる~紅い月の真実~

星空永遠

文字の大きさ
上 下
3 / 31
Ⅰ 入学式

1

しおりを挟む
「まだ見つからないのか?」
「……はい。それが手かがりになるものはなにも」

「本当に捜してるのか? 下の者に伝えろ。俺の命令に逆らう者がいればタダじゃおかないって」
「は、はいっ!!」

「これだけ捜してもいないってことは闇の子ってのはもうこの世にはいないんじゃ……」
「お、おいバカ!」
「え?」

「あ?」
「あ……。壱流いちる総長、すみません!」

「それと闇の子じゃねぇ」
「……へ?」

「闇姫だ。一体どこに消えたんだ、クソっ!俺はこんなにも最強に…総長になったつーのに」

最後の言葉はとても小さく、部下たちには聞こえない。


闇姫が消えて数年後。闇姫が助けた少年は最強の総長にまで上り詰めていた。

皇綺羅すめらぎ 壱流いちる。今年の春から高校生になった。今やこのあたり一帯、夢星町を仕切る総長である。かつての弱弱しい面影は消え、今では立派な男に成長していた。

中学時代、隣町の総長に紅い月ブラッドムーンを打たれ、命を落としかけたが闇姫の血を飲んだことで現在は吸血鬼として生きている。言ってしまえば彼は人間から吸血鬼になった奇跡のような存在。

「部下に八つ当たりしたところで闇姫は見つからないぞ」
「……龍幻りゅうげん

龍幻りゅうげんさんだ」
龍幻りゅうげん?」

「おまっ……。龍幻りゅうげんさんを知らないとか本当にこの組のもんか?って疑われるぜ」
「すみません。最近入ったばかりのもんでして……」

「それなら説明してやるよ。龍幻りゅうげんさんは壱流いちる総長の次にこの組で偉い方だ。大学生ながら紅い月ブラッドムーンの研究をしている天才なんだぞ!なんでも壱流いちる総長に自分の血を飲ませてるとか」
「天才研究者の話は耳にしたことがありましたけど、まさかあの龍幻りゅうげんさんだったとは驚きです!」

「オレの噂話をしてるのは君たちか?」

龍幻りゅうげん壱流いちるの部下たちに近寄った。

白銀はくぎん龍幻りゅうげん 、21歳。彼は学生でありながら、日々紅い月ブラッドムーンの研究をしている一人。今では、たった一人で紅い月ブラッドムーンを完成させることが出来る。そのため天才研究者として、その界隈で龍幻りゅうげんの名前を知らない者はいない。

龍幻りゅうげんの場合、紅い月ブラッドムーンは悪用するために作っているのではない。紅い月ブラッドムーンを接種した者を少しでも吸血鬼として生きさせるため。そして、壱流いちるの唯一無二の親友だ。龍幻りゅうげんはただの人間だが、ある日吸血鬼に襲われそうになった。その危機を救ったのが壱流いちるというわけだ。

それからというもの、壱流いちるの隣で彼の心のケアをしながら自らの血を提供している。

「龍幻さん!」
「マジ半端ねえです!俺、さっきの話を聞いて龍幻さんに憧れちゃいました!」

壱流の部下たちは目をキラキラさせながら龍幻を見ていた。しかし、その光景は壱流にとって気に食わなかった。

「俺を差し置いて龍幻ばっか見てんじゃねぇ!」
「す、すみませんでしたぁぁぁぁ!!」

その場にあったダンボールを蹴り上げる壱流。部下たちは怖がって壱流から離れてしまった。

「壱流やりすぎだ」
「だって…」

「そんなんだから、いつまで経っても部下と仲良くなれないんだぞ」
「言われなくてもわかってる。いいんだ、俺には龍幻がついてるから」

「オレは壱流より年上だから。オレが言いたいのは同世代と……」
「あー!うるさいうるさい」

壱流はその場にしゃがみ込んで耳を塞ぐ。どうやら、龍幻の説教じみた話を聞きたくないようだ。

「いくら背が高くなったところで子供っぽいところはいつまでも変わらないな、壱流」
「うるせぇ。俺には時間がねえんだ。早くアイツを、闇姫を見つけないと俺は……」

「……そう、だな。(やはり闇姫はお前にとって……)」

壱流の黒い瞳にはなにが見えているのか。

彼が闇姫を捜す本当の理由とは?

そして、現在の闇姫は壱流と同じく高校生になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

-桜蝶の総長様-

かしあ
恋愛
桜蝶-オウチョウ- 総長 早乙女 乃愛(さおとめのあ) × 鬼龍-キリュウ- 総長 洲崎 律斗(すざきりつと) ある日の出来事から光を嫌いになった乃愛。 そんな乃愛と出会ったのは全国No.2の暴走族、鬼龍だった………。 彼等は乃愛を闇から救い出せるのか?

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」

まほりろ
恋愛
 聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。  だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗 り換えた。 「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」  聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。  そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。 「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿しています。 ※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。 ※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。 ※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。 ※二章はアルファポリス先行投稿です! ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます! ※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17 ※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

処理中です...