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二章
26話 予期せぬ再会
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「お前らさぁ。なに勝手に勝ちを確信して休んでんの?それとも限界……なはずだよなぁ」
「「!?」」
「せめて俺を半殺しにしてから倒れるべきじゃね?自称人間は魔力が空っぽ。そこの人間は自称人間を支えるので精一杯って感じがヒシヒシと伝わってくるぜ。フッ。ハハハッ!!こんなんで俺様が倒れるわけねぇだろ。残念だったな、人間。その顔、そそるなぁ。それで、戦意喪失出来たら……俺様に聞きたいことがあるんだっけ?」
「龍幻。貴方だけでも逃げてください。……それなりに分かっていたとはいえ、これは想定外でした。自分の情報不足です。あとの責任は僕が取りま……っ!!!!」
「如月先輩!!」
俺を逃がそうと背を向けた一瞬、アレンが放った炎の玉が如月先輩の身体を襲った。
「僕は平気で、す。貴方は早くここ、から……」
「俺様が逃がすと思ってんのか?お前の魔導書諸共燃やし尽くしてやる。今から第二ラウンドの始まりだァ!!」
「如月先輩!!!!」
「龍幻!! !!」
俺は咄嗟に如月先輩の前に出た。助からないとか、死ぬとかそんなこと考える余裕なんてなかった。ただ、如月先輩を助けるのに必死で。
「単独行動の許可はまだ下りてないはずよ、アレン」
「……チッ。案外早かったなァ、羽音華」
俺の顔に触れる寸前ギリギリのところで炎は水に包まれ消えた。
「羽音華って、まさか……」
俺は聞き覚えのある名前に驚きを隠すことは出来なかった。目の前にいる少女の姿を見て、俺は彼女の名前を叫ばずにはいられなかった。
「暁月!!」
「……」
「羽音華。呼ばれてるのに返事しなくていいのか?」
「別に。貴方には関係ないでしょ。それよりも帝王様がお怒りよ、ほら帰りましょ」
「めんどくせぇナ。わかったよ」
暁月は聞こえているはずの俺の声に一切の反応を見せない。アレンと会話をするなり、いきなり門のようなものが出現する。
「どうやら魔界に帰るようです。龍幻、貴方がアレに触れることは出来ませんよ」
「っ……そんなこと、知ってます」
本当は何も知らない。ただ俺は暁月を連れ戻そうと魔界について行こうとしていた。その行動は俺が動く前に如月先輩にバレてしまった。
せっかく暁月に会えたのに、ここで俺はじっと立ち尽くすことしか出来ないっていうのか?
今まで手がかりなんて見つからなかった。もう会えないと思っていた相手が今目の前にいるっていうのに。
次はいつ会えるか、そもそも会えるかなんて、そんな保証もどこにもないというのに……。
「羽音華。アイツはお前のなんなの?」
「……センパイよ。とても大好きな」
「そのわりにクールだなァ、お前」
「……センパイ。次はもっと強くなっててくださいね。そうしないと私に瞬殺されちゃいますよ」
暁月は俺のほうを一瞬だけ見た。その瞳は血の色のように赤い目。俺が初めて会ったときに見た綺麗で宝石のような青い目じゃない。
あの目は本気で俺を殺そうとしている。あれは、俺の知っている暁月じゃない。以前とはまるで別人だ。
「暁月。お前に何があったのかわからない。だけど、俺は約束した。だから、次こそは絶対にその約束を守る。お前がその約束を忘れていたとしても、俺は……お前を助けてやる!!!!」
「つまり、瞬殺されてもいいってことですね?センパイってホント甘ちゃんなんですね。私は貴方の敵。それは未来永劫変わりませんから」
「自称人間、テメェの魔導書は次に会った時に必ず奪う。それとそこの人間、お前の力も本気じゃねぇみたいだし、今度はタイマイでやろうぜ。次に会う日まで俺様以外のやつに殺られるんじゃねぇぞ」
アレンと暁月が門の中に入ると、門は俺たちの前から跡形もなく消える。
俺たちは暁月に助けられた。だが、これはわざと生かされたんだ、そう思うには十分すぎるくらいだった。
「如月先輩、傷は大丈夫ですか?」
「回復魔法で完治しました」
「魔力は底を尽きたはず……。もしかして、暁月ですか?」
「……わかりません。でも、おそらくそうでしょうね」
「……」
暁月は如月先輩の傷を治した。別人なはずなのに、どうして……?
もしかしたら、俺と話した時の優しい暁月の意識が戻った?いや、そもそも完全に消えたわけじゃないのかもしれない。
まだ戻せる。暁月を助けることは出来る。
「如月先輩。俺が安心しきってアレンに隙を見せたせいで如月先輩に怪我を負わせてしまった。本当にすみませんでした」
俺たちは勝ちを確信した時点で負けていたんだ。正確には俺だけが。口には出していないものの、相手の大魔法を防いだから、心のどこかで大丈夫だと思っていたのかもしれない。
そんな俺とは裏腹に如月先輩は俺とは真逆のことを考えていたと思う。だって、如月先輩は勝敗がついたと思ったあとでも、アレンからは決して目を離さなかったから。
アレンに背を向けたときは俺を逃がすためだったから、その隙を狙われ攻撃された。仮に俺がアレンと同じ立場でもそうしている。
「謝らなくていいんです。貴方が新しい魔法を覚えてくれたお陰で彼の攻撃を防ぐことが出来たんですから。あんな攻撃を防御も無しに食らっていたら僕だけではなく、貴方の命すら危うかったですから。今回は本当に助かりました、ありがとうございます」
「そんなの……。俺は未だにいきなり新しい魔法を使えたのだって何故だかわからないし。如月先輩は結界を張りながら戦ってたのもあるから、やっぱり俺がいなくて一人ならきっとアレンにも余裕、いや、互角に戦うことだって出来てただろうし。だからお礼を言われることなんて何も。というか、俺のほうが助けてもらいましたから」
戦闘中は敵が戦闘不能になるまでは気を抜いてはいけないと、今回で痛いほど学ぶことができた。
俺のせいだ。アレンの言うとおり、如月先輩は俺がいなければ本気の力を出せたんだ。
強くなりたい。誰かに守られるだけの俺じゃなくて、誰かを、大切な人を守れるくらいの力がほしい。
「それならお互い様と言う事ですね。……貴方は僕のことを過大評価しすぎている部分があるようですね。もしも仮に結界を張っておらず、貴方もいなかったとしても、彼と互角に戦うことは今の僕では難しいかもしれません。……僕は強くない。だから、もっと強くなりたいと思っています。貴方を守ると言ったわりに情けないところばかりを見せてしまったので」
「如月先輩は情けなくなんかないです。俺はまだ如月先輩のことを何一つ思い出せない。なのに、こんな俺を全力で守ってくれた。それだけで俺は嬉しいんです。俺も強くなりたいです。暁月のことを助けるって約束しましたから。それに守るべき人が家で待ってるんです。その子のためにも俺はもっと……」
そうだ。今後ルリエを狙う敵が現れたとき、今のままじゃルリエを守ることはできない。俺は決めたんだ。大切な人をこれ以上失いたくないと。
「……なにか事情があるみたいですね。その事情について深く追求するつもりはありません。ところで貴方は誰かと同居でもしてるんですか?」
「あ、えっと……一応、女の子と。そういえば、ルリエの名前を出した途端にアレンの声色が変わったような……」
ルリエ様。アレンはたしかにそう言った。だけど普通のサキュバスであるルリエがそう呼ばれるのは違和感しかない。
それに、結局アレンから情報を聞き出すことは出来なかった。アレンが俺の魔導書を狙う理由も全部はわからなかったし。暁月を助けることすらまだだというのに。
人間だと思っていた俺が魔導書を使えること、そして、さきほど目の前で起きた出来事の数々が未だに夢なのではないかと疑うほど俺には信じ難いことだらけで既に頭は爆発寸前だった。
「「!?」」
「せめて俺を半殺しにしてから倒れるべきじゃね?自称人間は魔力が空っぽ。そこの人間は自称人間を支えるので精一杯って感じがヒシヒシと伝わってくるぜ。フッ。ハハハッ!!こんなんで俺様が倒れるわけねぇだろ。残念だったな、人間。その顔、そそるなぁ。それで、戦意喪失出来たら……俺様に聞きたいことがあるんだっけ?」
「龍幻。貴方だけでも逃げてください。……それなりに分かっていたとはいえ、これは想定外でした。自分の情報不足です。あとの責任は僕が取りま……っ!!!!」
「如月先輩!!」
俺を逃がそうと背を向けた一瞬、アレンが放った炎の玉が如月先輩の身体を襲った。
「僕は平気で、す。貴方は早くここ、から……」
「俺様が逃がすと思ってんのか?お前の魔導書諸共燃やし尽くしてやる。今から第二ラウンドの始まりだァ!!」
「如月先輩!!!!」
「龍幻!! !!」
俺は咄嗟に如月先輩の前に出た。助からないとか、死ぬとかそんなこと考える余裕なんてなかった。ただ、如月先輩を助けるのに必死で。
「単独行動の許可はまだ下りてないはずよ、アレン」
「……チッ。案外早かったなァ、羽音華」
俺の顔に触れる寸前ギリギリのところで炎は水に包まれ消えた。
「羽音華って、まさか……」
俺は聞き覚えのある名前に驚きを隠すことは出来なかった。目の前にいる少女の姿を見て、俺は彼女の名前を叫ばずにはいられなかった。
「暁月!!」
「……」
「羽音華。呼ばれてるのに返事しなくていいのか?」
「別に。貴方には関係ないでしょ。それよりも帝王様がお怒りよ、ほら帰りましょ」
「めんどくせぇナ。わかったよ」
暁月は聞こえているはずの俺の声に一切の反応を見せない。アレンと会話をするなり、いきなり門のようなものが出現する。
「どうやら魔界に帰るようです。龍幻、貴方がアレに触れることは出来ませんよ」
「っ……そんなこと、知ってます」
本当は何も知らない。ただ俺は暁月を連れ戻そうと魔界について行こうとしていた。その行動は俺が動く前に如月先輩にバレてしまった。
せっかく暁月に会えたのに、ここで俺はじっと立ち尽くすことしか出来ないっていうのか?
今まで手がかりなんて見つからなかった。もう会えないと思っていた相手が今目の前にいるっていうのに。
次はいつ会えるか、そもそも会えるかなんて、そんな保証もどこにもないというのに……。
「羽音華。アイツはお前のなんなの?」
「……センパイよ。とても大好きな」
「そのわりにクールだなァ、お前」
「……センパイ。次はもっと強くなっててくださいね。そうしないと私に瞬殺されちゃいますよ」
暁月は俺のほうを一瞬だけ見た。その瞳は血の色のように赤い目。俺が初めて会ったときに見た綺麗で宝石のような青い目じゃない。
あの目は本気で俺を殺そうとしている。あれは、俺の知っている暁月じゃない。以前とはまるで別人だ。
「暁月。お前に何があったのかわからない。だけど、俺は約束した。だから、次こそは絶対にその約束を守る。お前がその約束を忘れていたとしても、俺は……お前を助けてやる!!!!」
「つまり、瞬殺されてもいいってことですね?センパイってホント甘ちゃんなんですね。私は貴方の敵。それは未来永劫変わりませんから」
「自称人間、テメェの魔導書は次に会った時に必ず奪う。それとそこの人間、お前の力も本気じゃねぇみたいだし、今度はタイマイでやろうぜ。次に会う日まで俺様以外のやつに殺られるんじゃねぇぞ」
アレンと暁月が門の中に入ると、門は俺たちの前から跡形もなく消える。
俺たちは暁月に助けられた。だが、これはわざと生かされたんだ、そう思うには十分すぎるくらいだった。
「如月先輩、傷は大丈夫ですか?」
「回復魔法で完治しました」
「魔力は底を尽きたはず……。もしかして、暁月ですか?」
「……わかりません。でも、おそらくそうでしょうね」
「……」
暁月は如月先輩の傷を治した。別人なはずなのに、どうして……?
もしかしたら、俺と話した時の優しい暁月の意識が戻った?いや、そもそも完全に消えたわけじゃないのかもしれない。
まだ戻せる。暁月を助けることは出来る。
「如月先輩。俺が安心しきってアレンに隙を見せたせいで如月先輩に怪我を負わせてしまった。本当にすみませんでした」
俺たちは勝ちを確信した時点で負けていたんだ。正確には俺だけが。口には出していないものの、相手の大魔法を防いだから、心のどこかで大丈夫だと思っていたのかもしれない。
そんな俺とは裏腹に如月先輩は俺とは真逆のことを考えていたと思う。だって、如月先輩は勝敗がついたと思ったあとでも、アレンからは決して目を離さなかったから。
アレンに背を向けたときは俺を逃がすためだったから、その隙を狙われ攻撃された。仮に俺がアレンと同じ立場でもそうしている。
「謝らなくていいんです。貴方が新しい魔法を覚えてくれたお陰で彼の攻撃を防ぐことが出来たんですから。あんな攻撃を防御も無しに食らっていたら僕だけではなく、貴方の命すら危うかったですから。今回は本当に助かりました、ありがとうございます」
「そんなの……。俺は未だにいきなり新しい魔法を使えたのだって何故だかわからないし。如月先輩は結界を張りながら戦ってたのもあるから、やっぱり俺がいなくて一人ならきっとアレンにも余裕、いや、互角に戦うことだって出来てただろうし。だからお礼を言われることなんて何も。というか、俺のほうが助けてもらいましたから」
戦闘中は敵が戦闘不能になるまでは気を抜いてはいけないと、今回で痛いほど学ぶことができた。
俺のせいだ。アレンの言うとおり、如月先輩は俺がいなければ本気の力を出せたんだ。
強くなりたい。誰かに守られるだけの俺じゃなくて、誰かを、大切な人を守れるくらいの力がほしい。
「それならお互い様と言う事ですね。……貴方は僕のことを過大評価しすぎている部分があるようですね。もしも仮に結界を張っておらず、貴方もいなかったとしても、彼と互角に戦うことは今の僕では難しいかもしれません。……僕は強くない。だから、もっと強くなりたいと思っています。貴方を守ると言ったわりに情けないところばかりを見せてしまったので」
「如月先輩は情けなくなんかないです。俺はまだ如月先輩のことを何一つ思い出せない。なのに、こんな俺を全力で守ってくれた。それだけで俺は嬉しいんです。俺も強くなりたいです。暁月のことを助けるって約束しましたから。それに守るべき人が家で待ってるんです。その子のためにも俺はもっと……」
そうだ。今後ルリエを狙う敵が現れたとき、今のままじゃルリエを守ることはできない。俺は決めたんだ。大切な人をこれ以上失いたくないと。
「……なにか事情があるみたいですね。その事情について深く追求するつもりはありません。ところで貴方は誰かと同居でもしてるんですか?」
「あ、えっと……一応、女の子と。そういえば、ルリエの名前を出した途端にアレンの声色が変わったような……」
ルリエ様。アレンはたしかにそう言った。だけど普通のサキュバスであるルリエがそう呼ばれるのは違和感しかない。
それに、結局アレンから情報を聞き出すことは出来なかった。アレンが俺の魔導書を狙う理由も全部はわからなかったし。暁月を助けることすらまだだというのに。
人間だと思っていた俺が魔導書を使えること、そして、さきほど目の前で起きた出来事の数々が未だに夢なのではないかと疑うほど俺には信じ難いことだらけで既に頭は爆発寸前だった。
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