儀式に失敗してロリっ子サキュバスを召喚し、ロリコンに目覚めてしまった俺の末路は

星空永遠

文字の大きさ
上 下
13 / 34
一章

12話 ルリエと一つのベッドで

しおりを挟む
朝8時30分。俺は二度寝しようとベッドの中にいた。

「こうやって、お兄ちゃんと寝るのは初めてだね」
「そ、そうだな」

そう、ルリエと一緒に。シングルベッドだから狭いと思っていたが、ルリエが小さいから案外二人でも大丈夫そうだ。

って、そうじゃない。俺は互いの息が当たるくらいの近い距離にドキドキしていた。だって、ルリエからは甘い匂いがするし。おかしい、俺と同じシャンプーを使っているはずなのに。

近くで見ると、ルリエってまつ毛も長いんだな。二重でクリクリしてるし、肌も白くて全くといっていいほど荒れてない。それは化粧なんか必要ないってほど。

俺がルリエのことをじっくりと見ていると、バチッと目が合う。そんな視線から、ルビー色の綺麗な瞳から俺は目を逸らすことが出来ずにいた。

いつもなら視線を合わせても何も感じないはずなのに。いや、少しは思ったりする。けど、いちいち可愛いなどをルリエに言っていたらキリがないとわかっているから言わない。

毎回のように同じ言葉を使えば、それは価値のないものへと変わってしまう。だから、仮に心から思っていたとしても気軽に言わないほうがいい。

それに俺はイケメンでも白馬の王子でもないんだし、こっ恥ずかしいセリフなんか吐けるものか。

キザだと思われるのは嫌だし、なにより、そういうのはイケメンだからこそ許されるしトキめくってもんだろ。

俺に言われても、ルリエだって嬉しいわけがないんだ。

「ルリエのことはいないものだと思って、お兄ちゃんはゆっくり休んでいいよ」
「……」

それは無理があるぞルリエ。隣にいたら嫌でも視界に入る。別にルリエと寝ることが不快というわけじゃない。

むしろ、こんな一大イベントは俺の人生で一生に一度体験できるのも奇跡くらいの確率で。俺自身こんなことはないと、とうに諦めていたくらいだからな。そんな俺に、夢にまで見た展開が今到来とあらば眠れるものも眠れない。

普段なら子供に欲情なんか……と思っているところだが、今のルリエは妙に大人っぽく見えるのは気の所為だろうか。きっと、俺によるフィルターがかかってるに違いないと自身を言い聞かせていた。そう思わないと、俺は間違いなくロリコンになってしまうから。

もしかしたら、もう既に手遅れの状態まできているかもしれないが。

「私は、龍幻がイヤじゃないなら毎日だってこうして寝たい」
「それは駄目だ!」

「どうして?やっぱりイヤ?」
「そういうわけじゃない」

やはりルリエはわかってない。毎日ルリエと一緒に寝るなんて、どうにかならないほうがおかしい。男女が同じ屋根の下暮らしてて何も起こらない今だって不思議だというのに、ベッドで……ルリエが仮になんとも思っていなくとも、こっちは平常心でいられるほど、俺は人間できていない。

「ルリエ。先に教えておくとだな……男女がこんなことをするのは変なんだぞ。
付き合ってる同士がしたらおかしくはないかもしれない。けど、それは何かしら起こっていて、互いに同意の上でっていうか、その……」

異性と手を繋ぐ以上やったことがない俺がルリエの上に立とうとするのは、上から目線にしても駄目だ。本当に何様のつもりなんだ俺は。それもこれもルリエが男女のあれこれに疎いせいだ。

「さっき龍幻は私と寝ることを同意してくれたよ」
「それはそうだが、そうじゃなくてだな……」

「知ってる。そのくらい知ってる」
「え、ルリエ、今なんて?」

「流幻は私を子供だと思い込みすぎ。私だって、いつまでも子供じゃないよ」

まさかルリエにそれを言われる日がやってくるなんてな。正直、驚きすぎて言葉がでない。子供だと思っていたのは事実だ。けれど、それを思っていたのは俺だけ。

ルリエは一日でも早く、一秒でも早く大人になろうと努力をしていたんだ。
それなのに俺は……ルリエにいっちょ前に怒ったりして、本当に馬鹿だ。

「私は見習いでもサキュバスなんだよ。それに私の主は龍幻だもん。ここは主じゃなくて獲物って言ったほうがいいかな?私は私なりに頑張ってるんだよ。それとも、お兄ちゃんは私が子供のままのほうがいい?」

「……そんなことあるわけないだろ。ごめんな、さっきは変なこといったりして」

どうしよう。こんなにも頑張っていたなんて知らなかった。俺がいない間にルリエは勉強してたんだな。それは俺が思ってる以上に大変で、困ることもあっただろう。

今はルリエを叱るんじゃない、褒めるべきなんだ。それが主としての俺の役目。

「ルリエ、俺のためにありがとな」
「どういたしまして。でも、抱き枕の代わりとして私を使っていいって言ったのはホントだよ。今はサキュバスの課題よりも、純粋にお兄ちゃんが心配なんだもん」

「っ……」

俺の親もこんな感じで俺が一人暮らしをするときに送り出したんだろうか。不安でいつも心配でたまらない、そんな気持ちで。今の俺と同じなんだろうな。

けれど、子供は親が思っているよりも早く成長するし両親が知らないところでは、意外と大人なんだということを俺はルリエを通して知った。

「龍幻どうして泣いてるの?どこか痛い?」
「いや……大丈夫だ。ルリエ、俺は今から寝るから側にいてくれないか?」

「うん、いいよ。私、龍幻が寝るまで頭を撫でてあげるね」

頭を優しく撫でられる。すごく安心する。なんだろう、急激に眠気に襲われる。俺、疲れてたのか。

これはサキュバスとしての力なのか、それともルリエにより癒やしの力なのか。そのどちらかが正解なのかは言うまでもないだろう。



「俺、いつの間に寝ていたんだ。って、もう11時……」

ルリエが隣にいるから寝れないとか言ってた奴はどこの誰だ。普段ならお腹空いたとか言ってきて俺を起こしに来るルリエが声をかけなかったから、思ったよりも寝てしまっていた。久しぶりにゆっくり休めた気がする。

……あれ?せっかく女の子と寝たのに何もせず、普通に寝てしまった。俺はチャンスを自分から棒に振ったんじゃないだろうか。

それとも、覚えていないだけで実はルリエに手を出している……なんて、俺に限ってそんなことをするとは思えないが念のため、あとでルリエに聞いてみるか。

そういえば、ルリエがいない。抱き枕にしていいと言っていたからてっきりあのまま寝たとばかり。

ごうんごうん。……これって洗濯機の音か?今日の分はまだ回していないはず。隣にしては音がうるさいし、なんだか近くで聞こえる。

ガタガタガタガタ。

次の瞬間、明らかにヤバい音がした。

ま、まさか……。
俺は、ベッドからバッ!と起き上がり洗面所に向かう。

「ルリエ、大丈夫か!?」
「龍幻、ど、どうしよう。洗剤が……泡が止まらないの」

ルリエは半泣きで、その場にペタりと座り込んでいた。どうすればいいかわからないとパニック状態だった。

「泡?って……今すぐ止めろ!」

俺はストップのスイッチを押す。

ピー。

「ルリエ、これで大丈夫だ」
「これで洗濯機、攻撃してこない?」
「してこない。だから安心しろ、なっ?」
「うん」

と、言ったものの、床は洗剤まみれで散らかっている。これは片付けが大変そうだ。

「なぁ、ルリエ。なんで洗濯機を回したんだ?」
「龍幻の役に少しでも役に立ちたくて……」

「洗濯はどのくらい入れたんだ?」
「……そこにあるやつをいっぱい」

「いっぱいって全部か!?」
「そう。そしたら綺麗になると思って」

さっきは色気があるとか成長したんだなって関心して褒めたばかりだってのに。これはデジャブだ。今のは、以前のダークマターを彷彿とさせた。

最近の俺が疲れてるのを察してか、ルリエは家事を手伝おうとしたに違いない。けれど、やはりルリエには家事スキルはないようだ。いくら人間界について勉強したとはいえ、たった数日で劇的に良くなるはずもない。

これは、もはや才能といっていいレベルなのかもしれない。ちなみに、この場合の才能は決して褒めてるとか、いい意味で使っていない。

洗剤を大量に入れたら綺麗になると考えが浮かぶ時点で根本的に間違ってるんだよな。一体、どこでこんなことを覚えてきたんだ。

もしや、ルリエの家庭は実は金持ちだったりするのか?家にはメイドが何人もいて、家事を一切したことがないとか。それなら、多少納得いくところもあるが、それにしたってこれは酷すぎる。

「ごめんなさい、龍幻。私、逆に龍幻に負担をかけてるよね」
「いや、そんなことは……」

ない。と、はっきり言えなかった。何をやるにしても不器用……ここまでいくと不器用を超えてる。それでも、ルリエは俺のために何かしようと頑張っている。それは凄く伝わるんだけどな。

「私、龍幻のためなら何でもしたいの。本当は料理も掃除とかも……でも頭では理解してても、いざ行動すると思うように出来なくて」

「そんなに落ち込む必要はない。俺だって出来ないことの一つや二つくらいあるぞ」

「本当に?龍幻にもあるの?」

「あぁ、ある。……それに俺だけじゃない。誰しも出来ないことはあるし、それこそ今のルリエと同じ考えを持つ奴はたくさんいる。だからこそ、自分に出来ることをして、互いのことを支え合うんだ。パートナーとはそういうものだぞ、ルリエ」

今の俺は、ちゃんと正論を言えているだろうか。ルリエを正しく教育出来ているか、そんな衝動に駆られる。しかし、恋人がいたことない俺が何故こんなにも熱く語れるのか不思議だ。

ルリエと数日暮らしたことによって、俺も少しは成長したってことか?そう思うことにするか。

「だから、ここは俺に任せてくれ。床に散らばった洗剤で滑ると危険だから、ルリエはリビングで待っててくれないか?」
「うん、そうする!」

どうやら、いつものルリエに戻ったようだ。落ち込んでいるルリエも子猫みたいで可愛いとは思うが、やはりルリエには笑った顔のほうがいい。

ルリエはリビングのほうに行き、俺は片付けを始めた。

「あれ?」

俺は、ふと洗面台の鏡を見た。……なんでヒビが入ってるんだ?朝起きて顔を洗ってたときは割れてなかったんだが。

縁起が悪いとか聞くし、今日にでも大家に連絡してみるか。それから黙々と床を掃除していた。

鏡にヒビが入っていた原因がまさか✕✕にあるなんて、このときの俺は知る由もない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...