儀式に失敗してロリっ子サキュバスを召喚し、ロリコンに目覚めてしまった俺の末路は

星空永遠

文字の大きさ
上 下
3 / 34
一章

2話 料理スキルが欠落している?そんな馬鹿な。

しおりを挟む
……俺は夢を見ているんだろうか。現実を受け入れられず、意識は朦朧としていた。
そうだ。これはきっと夢。
目覚めれば、この悪夢から抜け出せるんだ。

だから俺はもう一度、この言葉を言い放った。

「ルリエ。これはなんだ」

「何って、朝ごはんだよ。お兄ちゃんには何に見えるの?」

「……」

現実は時に残酷である。と、いう文字が俺の頭を駆け巡った。

そう、俺は童貞を卒業するため、昨晩ルリエを召喚した。だが、俺の失敗により未完成なサキュバスを呼んでしまった。

非情だと思う奴もいるかもしれないが、俺はルリエを置いて帰ろうとしていた。しかし、ルリエのワガママと可愛い上目遣いのせいで止むなく一日泊めることなってしまい、今に至る。不覚にも、あのオネダリはクるものがあった。だが、決して勘違いしないで欲しい。俺はロリコンではない。

ルリエにはフワフワベッドを貸してやった。どうせベッドが良いと駄々をこねるのが容易に想像出来たからだ。帰りが夜中だったせいで、眠気も限界だったこともあり、家に着くや否や俺は床で寝た。
そのせいで体中が痛くて、悪夢を見ていた。が、今の状況こそが悪夢なのではないかと、現実を受け入れられない自分にもう一度問いかけていた。

自分を住まわせれば家事全般をするというルリエの申し出。それに俺は惹かれてしまった。後悔先に立たず。まさにこの言葉が相応しい。

どうして俺は気づかなかったんだろう。こんなに小さい子が料理スキルがあるなんて思っていたのか?いや、もしかしたら、と可能性はあったんだ。だけど、今はそれを微塵も感じさせない。俺の予想が正しければ、きっと料理だけではなく洗濯や他の家事全般も無理かもしれない。

こんなことなら泊めるんじゃなかった……と、少しの後悔をしつつも、俺が泊めなかったらどうなっていたんだという不安に駆られていた。そういう意味では、俺がこうして泊めることに意味があったのかもしれない。

幸い、顔だけは美少女なルリエだ。夜中に1人でフラフラ道を歩こうものなら酔っぱらいのサラリーマンやロリコンと呼ばれるオジさんに声をかけられていたかもしれない。そうなればルリエは無事に明日を迎えることが出来なかったはずだ。

召喚したのが俺なんだから多少の罪悪感はある。というか、冷静に考えるとそれしかない。それなのに俺は泊めるだけとか……住まわせるのは無理だって。いや、それよりも今の俺の置かれた状況の方が重要。

目の前にあるのはダークマター。いや、黒焦げの何か。ルリエは朝食だと言っている。それは当然といえば当然かもしれない。誰がダークマターだと言って、相手に料理を出すだろうか。嫌がらせ行為だとしても、こんな手の込んだイタズラはしない。イタズラは多少可愛さがあって笑い話で済む。が、これはそうはいかない。

見た目からしてもヤバい香りしかしないのだ。
幸い今日の講義は2限からだから時間はまだある。腹も空いてる。

……食えば美味いんだろうか?ふと、そんな疑問が浮かんだ。

「お兄ちゃん、食べないの?
ルリエ、頑張って作ったんだよ」

やめてくれ。そんな捨てられた子犬のような目で見られたら、何か悪いことをしているんじゃないかという感情が沸々と湧いてくる。

「た、食べる。……いただきます」

俺は覚悟を決めた。頑張って作ったなんて言われたら食べなければならない気がしてきた。一人暮らしを始めてから、誰かに手料理を振る舞われるなんて機会はなかった。よくよく考えてみれば、母親以外の女にこんなふうに優しくされたのも生まれて初めてかもしれない。

目を瞑り、ダークマター(朝食)を口にした。見た目さえ見なければいけると自己暗示をしていた。

モグモグ。……なんだろう。このなんとも言えない味は。薄いわけでも辛いわけでもない。案外いけるのでは?と思った俺が馬鹿だったんだ。それは前触れもなく襲ってきた。口の中を支配する。苦い、しょっぱい、マズいの三連コンボ。

おそらく起きたばかりで、意識がはっきりとしていなかったせいだろう。
ガツン!と目が覚めるほどの衝撃。正直、誰もいなかったら今すぐトイレに直行なのは間違いないくらいの味だ。ここまでいえば想像出来るかもしれない。嘔吐しても、他の何かを食べたとしても消えないくらいパンチのある味。

多少の料理下手な女の子は可愛い?そうだな、許せる。が、これはお世辞でも美味いと言えない。むしろ、吐きたくなる料理選手権!なんてものがあれば、ブッチギリの1位を取れるほどにはある。って、そんな料理大会は死んでも参加したくないけどな。

「どう……かな?」

「う、うま……うん、悪くないよ」

やはり言えなかった。ルリエのどうだろうという不安な顔を見たら、マズいとはとてもじゃないが口に出来ないし、かといって美味しいといえばたらふく食わされそうで、それで言葉を選んでの選択がこれだった。

「ルリエもまだ味見してないんだ。食べようかな」

箸を持ち、ダークマター(料理名を聞いてないから何かわからないもの)を掴もうとしていたルリエに俺は待った!と言いながら、テーブルをバンッ!と叩いた。

「!?お、お兄ちゃん?」

「あ、悪い」

ルリエは泣きそうになっていた。料理を食べようとしてテーブルをワケも分からず叩かれたら驚くのも当たり前だよな。でもな、そんなものを口にしてはいけない。たしかに本人が食べて味を確認するのも今後のことを考えるといいだろう。

しかし、ルリエの性格を考えると、俺にこんなものを食べさせた、という罪悪感に駆られ、それがトラウマの原因になってしまう可能性だって十分にある。だったら、俺の胃袋が悲鳴をあげて、講義どころではなくなる……ほうがマシだ。

ただ、俺は聞き逃してはいかなかった。ルリエが味見をしていないという事実に。
普段から料理をしない俺がいうのも変な話だが、人に出すものなら味くらいは予め見ておこうぜ……と、俺は心のなかでツッコミを入れた。

「ル、ルリエの料理、気にいってさ。俺が全部、た、食べてもいいか?」

スラスラと言葉は出てこない。体が拒絶しているのがヒシヒシと伝わってくる。SOSを出しているが、それを俺は無視することにした。妙にたどたどしい俺の態度にルリエは気付く事ができるだろうか。

「ホントに!?わーい!お兄ちゃんに褒められた。
じゃあルリエの分も全部あげる、はいっ」

ドォォンと俺の目の前にルリエの分のダークマター。まだ俺の分も残ってるが、全て食いきれるだろうか。

「食い終わったら、俺がルリエの分を作ってやるからな。だから少し待っててくれるか?」

「うん、待つ。お姉ちゃんにもねぇ、ルリエの料理食べさせたことがあるんだぁ。
でも、男の人で食べさせたのはお兄ちゃんが初めて。
ルリエの料理を気にいってくれてありがとう!お兄ちゃん大好きっ!」

「お、おう」

お礼を言ったあとすぐにルリエは俺に抱きついてきた。……良かった。トラウマにさせないようにできて。ホッと安堵しつつも、ダークマターのノルマが俺を苦しめているのもまた事実。

だが、大好きと愛の言葉を囁かれては頑張らないわけにはいかない。俺は涙を流しながらガガガッとかき込む。単純でチョロいのは俺も同じだ。それがルリエにとって、好きという本当の意味を理解していないとわかっていても、俺は女に好きだと言われるだけで勘違いしてしまいそうになるほどの男なんだ。

童貞はこんなやつなんだ。女に優しい言葉をかけられようものなら、これでもかというくらい大袈裟に騒ぐし、最終的には俺に気があるんじゃね?的な自分に都合の良いように解釈することもしばしば。とはいっても、俺にはそんな経験は皆無といっていいほどない。

ルリエには、他の男に不用意に好きだとか言わないように注意しておかないとな。ルリエの何気ない一言で犠牲者(ロリコン)が出ないためにも。

ルリエには、お姉ちゃんがいるのか。途切れる意識の中、俺はルリエの姉を想像していた。きっと、さぞかし綺麗でエロ美人なお姉さんなんだろうな……。

俺が料理を覚えよう。そう決めた瞬間だった。
そうすれば、ルリエも俺も美味しくご飯を食べることができる。

そして俺はダークマターを完食後、意識を失った。
結局、ルリエが作った料理名がなんだったのかは不明のままだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...