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八話
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◇◇◇
あれから一週間後。ついに復讐の時が来た。
「隼人さん」
「紫音、緊張してるのか?」
「いいえ。今は安心しています」
「何故だ?」
「だって隣には隼人さんがいるじゃないですか」
「……そうだな」
私たちは控え室で手を繋いでいた。もうすぐ始まる。私の復讐が。
隼人さん、ありがとう。今では隼人さんに感謝という言葉じゃ足りないほど感謝をしている。
隼人さんが私の恋人で本当に良かった。こうして復讐するチャンスが出来たんだから。隼人さんと恋人同士の私に怖いものなんて何一つない。
さぁ、パーティーの始まりだ。
「この度は私主催のパーティーにお越しいただき誠にありがとうございます。立食式ですのでご自由にお好きなものをお取りください。絶品料理の数々をお楽しみいただけると幸いです」
隼人さんが壇上で挨拶をする。私は一人で食事を楽しんでいた。立食式でA5ランクのお肉って……さすが神宮寺グループのパーティーだ。と、感心しながら食事を楽しんでいると、「お姉さん、一人?」と声をかけてくる男性がいた。
「……」
二度と声を聞きたくない男性だ。そう、相手は公孝。私の元彼だ。数ヶ月前まで付き合ってたくせにもう私のことを忘れてしまったの?
隼人さんには感謝しなきゃね。元彼がわからないほど別人みたいに綺麗になったのだから。
「一人ではないですわ。連れのものがいますの」
「ふーん。近くにそれらしい人はいないけど、もしかして嘘? 嘘は泥棒の始まりなんだぜ~」
「あら。貴方は嘘がお嫌いですの?」
お嬢様口調なんて私には不釣り合いだけど、ここは別人を装うため仕方のないこと。どうせあとで最高のネタばらしをするんだ。今は怒るのを我慢しなきゃ。
「嫌いだねぇ~。お姉さん聞いてくれる? オレの元カノなんかさぁ、オレに尽くすって言って最後はオレのこと見捨てるんだぜ? あれだけオレのことが好き好き~って言ってたくせにひどくね?」
「……それは貴方がお金の無心をしていたから愛想つかして逃げたのでは?」
「え?」
「紫音! 遅くなって悪い」
「紫、音……だと?」
「いえ。隼人さんは挨拶回りをしていたのですから仕方ないですわ」
「おい。お前まさか……」
「行きましょう隼人さん」
「そうだな」
「待てよっ……!」
気付くのが遅くない?
私は公孝を無視して隼人さんと共に壇上のほうへと足を進めた。私が別人になって驚いたって顔をしてた。でも驚くのはまだこれから。
「お食事をお楽しみ中のところ大変申し訳ない。ここで私の婚約者の紹介をしよう」
「やだ……婚約者ですってー!」
「うそぉ~。ワタシ、隼人様が独身って聞いて、このパーティーに参加したのに!」
「隼人さま、恋人がいたんですかぁ!?」
飛び交う雑音。それはすべて私をいじめてきた女性たちの声だった。やっぱり隼人さんを狙ってパーティーに参加したんだ。
私、あんな人たちに負けたくない。私の心の炎はメラメラと音を立てながら燃えていた。嫉妬なんて醜い感情だろうか。隼人さんに嫌われてしまうだろうか。
「紹介しよう。私の婚約者の……」
「皆様、初めまして。神宮寺隼人さんの婚約者、露川紫音といいます」
「ウソでしょ……!?」
「露川!? アイツがなんでここに?」
「っていうか隼人様とどうやって知り合ったの? 悔しー!!」
「おい紫音! 説明しろよ! なんでテメェが御曹司と婚約してやがる!!」
「……っ」
パーティー会場に響き渡る怒号。私は公孝の声に思わず震えてしまった。
「紫音、大丈夫だ。俺がいる」
「隼人さん……」
心強い味方だ。隼人さんは公孝がもし会場で暴れたときのために専属執事を会場内に何人も待機させていた。
隼人さんの執事は単なる世話係ではなく隼人さんのボディーガードもしているため力の強い方が勢揃いしている。
そんな人達に囲まれれば、さすがの公孝も会場で好き勝手に暴れることは出来ないだろう。
あれから一週間後。ついに復讐の時が来た。
「隼人さん」
「紫音、緊張してるのか?」
「いいえ。今は安心しています」
「何故だ?」
「だって隣には隼人さんがいるじゃないですか」
「……そうだな」
私たちは控え室で手を繋いでいた。もうすぐ始まる。私の復讐が。
隼人さん、ありがとう。今では隼人さんに感謝という言葉じゃ足りないほど感謝をしている。
隼人さんが私の恋人で本当に良かった。こうして復讐するチャンスが出来たんだから。隼人さんと恋人同士の私に怖いものなんて何一つない。
さぁ、パーティーの始まりだ。
「この度は私主催のパーティーにお越しいただき誠にありがとうございます。立食式ですのでご自由にお好きなものをお取りください。絶品料理の数々をお楽しみいただけると幸いです」
隼人さんが壇上で挨拶をする。私は一人で食事を楽しんでいた。立食式でA5ランクのお肉って……さすが神宮寺グループのパーティーだ。と、感心しながら食事を楽しんでいると、「お姉さん、一人?」と声をかけてくる男性がいた。
「……」
二度と声を聞きたくない男性だ。そう、相手は公孝。私の元彼だ。数ヶ月前まで付き合ってたくせにもう私のことを忘れてしまったの?
隼人さんには感謝しなきゃね。元彼がわからないほど別人みたいに綺麗になったのだから。
「一人ではないですわ。連れのものがいますの」
「ふーん。近くにそれらしい人はいないけど、もしかして嘘? 嘘は泥棒の始まりなんだぜ~」
「あら。貴方は嘘がお嫌いですの?」
お嬢様口調なんて私には不釣り合いだけど、ここは別人を装うため仕方のないこと。どうせあとで最高のネタばらしをするんだ。今は怒るのを我慢しなきゃ。
「嫌いだねぇ~。お姉さん聞いてくれる? オレの元カノなんかさぁ、オレに尽くすって言って最後はオレのこと見捨てるんだぜ? あれだけオレのことが好き好き~って言ってたくせにひどくね?」
「……それは貴方がお金の無心をしていたから愛想つかして逃げたのでは?」
「え?」
「紫音! 遅くなって悪い」
「紫、音……だと?」
「いえ。隼人さんは挨拶回りをしていたのですから仕方ないですわ」
「おい。お前まさか……」
「行きましょう隼人さん」
「そうだな」
「待てよっ……!」
気付くのが遅くない?
私は公孝を無視して隼人さんと共に壇上のほうへと足を進めた。私が別人になって驚いたって顔をしてた。でも驚くのはまだこれから。
「お食事をお楽しみ中のところ大変申し訳ない。ここで私の婚約者の紹介をしよう」
「やだ……婚約者ですってー!」
「うそぉ~。ワタシ、隼人様が独身って聞いて、このパーティーに参加したのに!」
「隼人さま、恋人がいたんですかぁ!?」
飛び交う雑音。それはすべて私をいじめてきた女性たちの声だった。やっぱり隼人さんを狙ってパーティーに参加したんだ。
私、あんな人たちに負けたくない。私の心の炎はメラメラと音を立てながら燃えていた。嫉妬なんて醜い感情だろうか。隼人さんに嫌われてしまうだろうか。
「紹介しよう。私の婚約者の……」
「皆様、初めまして。神宮寺隼人さんの婚約者、露川紫音といいます」
「ウソでしょ……!?」
「露川!? アイツがなんでここに?」
「っていうか隼人様とどうやって知り合ったの? 悔しー!!」
「おい紫音! 説明しろよ! なんでテメェが御曹司と婚約してやがる!!」
「……っ」
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「紫音、大丈夫だ。俺がいる」
「隼人さん……」
心強い味方だ。隼人さんは公孝がもし会場で暴れたときのために専属執事を会場内に何人も待機させていた。
隼人さんの執事は単なる世話係ではなく隼人さんのボディーガードもしているため力の強い方が勢揃いしている。
そんな人達に囲まれれば、さすがの公孝も会場で好き勝手に暴れることは出来ないだろう。
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