僕らは、ただ一つの愛を誓う

星空永遠

文字の大きさ
上 下
12 / 16
第二章

12話

しおりを挟む
「それと、明日からは生徒会も忙しくなるから、遅刻しないように」

「……?なんで、明日からは忙しくなるんだ?」

「忘れたの、冬夜。一週間後は高校の文化祭だってこと」

「……あ……」

夏休みに肝試し大会やら、紅蓮が神崎紅などということを知ってから、紅蓮のことで頭がいっぱいで、他には何も考えていなかった。

季節は十月下旬、高校は文化祭や体育祭の時期だ。
俺達の学校は文化祭と体育祭が一年ごとに交互にある。
去年は体育祭だったため、今年は文化祭。

俺は中学三年から去年の高校二年まではフランスに留学していたので、こうして高校行事に参加するのは初めてだ。

高校生になってからの紅蓮は俺がいない間の学校行事はどんなふうに過ごしたんだろうか。

俺以外の友人と文化祭を楽しんだり、体育祭では一位などをとり、クラスのみんなの注目の的だったのだろうか。……いや、そんなことはないだろうな。

紅蓮は断然のインドア派で運動に関しては、どのスポーツをとっても、人並みくらいだ。

特に皆で団結し、汗水流す熱血するものに関しては苦手だ。むしろ、紅蓮が汗水流し、スポーツの類をしてるところを俺は見たことがない。

友好関係に関しても、堅物生徒会長ということもあり、後輩などは紅蓮のことを怖がっている。同級生ですら、紅蓮のことを「会長」と呼び、慕っているようにも見えるのに、俺以外に心を開き、話せる友人などいないんじゃないか?

中学の頃、俺が紅蓮と友人になったばかりの頃に、「俺以外に仲のいい友達はいないのか?」と聞いたら、「一人で何でも出来るから、仲のいい友人は冬夜以外必要ない」と言っていた。

あれは本音ではないことも本当は見抜いていた。
紅蓮は友人を作らないんじゃない……作れないんだ。

コミュニケーションが苦手な紅蓮は自分から年の近いやつに話しかけることが苦手だ。
俺の場合は問題児で、紅蓮が風紀委員長という立場だったため、また違ったのだろう。

そして文化祭当日、俺と紅蓮は文化祭を一緒に回ることになった。
生徒会は校内の見回り、というの口実として紅蓮は俺と回ることを許してくれた。

クラスのシフトは生徒会の見回りや文化祭まで準備を人よりも頑張ったと気を使ってくれたクラスメイトが抜いてくれた。
これで心おきなく紅蓮と文化祭を楽しめる。

「じゃあ、まずは朝飯からだな。紅蓮、行くぞ」

「そんなに急がなくても、ご飯は逃げないよ、冬夜」

「わかってるっての」

好きな奴と文化祭を回れるだけでも嬉しいんだよ。って、紅蓮には伝わっていないようだ。ただ、紅蓮もいつもより表情が柔らかかったので、それなりには文化祭を楽しみにしていたようだ……良かった。

俺と紅蓮は朝飯を食べてからは甘い物などを食べたり、展示を見て回ったりした。
クレープが食いにくい、写真部が撮った猫が可愛い、天文部より紅蓮、お前のほうが星座に詳しいななどと会話をした。

あっという間に一日は終わり、文化祭は終了した。

俺と紅蓮はシフトを抜かしてくれたクラスメイトにお礼ということで、クラスの片付けを二人ですると言って、片付けが終わるまで学校に残ることとなった。

あたりも暗くなり、本格的な片付けは明日ということで、ほとんどの生徒は帰路へ帰って行った。

「紅蓮。腹減っただろ? チョコレート、食うか?」

「ん、食べる。ありがと、冬夜」

「気にしなくていいぜ」

俺は紅蓮に紙つづみに入ったチョコレートをあげた。

「冬夜、もう一つチョコレートが欲しい」

「紅蓮、急にどうしたんだ? お前、そんなにチョコレート好きだったか?」

文化祭の片付けが人段落した頃に、紅蓮は俺にチョコレートを欲しいと言いだしてきた。

紅蓮の頬は微かだが、蒸気している気がした。
普段よりも声も高く、頬も赤く、なんだかお酒に酔った人のようになっていた。

「まさか……」

俺は2つ目のチョコレートを渡す前にチョコレートの箱の表記を見た。
そこには原料に、ブランデーと表記されていた。

「チョコレートボンボンで酔ったっていうのか……?」

「冬夜~」

紅蓮は酔った勢いで、俺に抱きつこうとしていた。

「紅蓮、やめろ」

これ以上、甘えられると俺が紅蓮、お前に触れたくなってしまう。
そんな俺の気持ちも知らず、紅蓮は言葉を続けた。

「嫌だ、冬夜に甘えたい……」

「紅蓮、今だけ少しの間だけ、このまま……」

「うん、わかった……」

紅蓮の一言で、俺は我慢できなくなり、教室で紅蓮を抱きしめていた。

どうか、このまま誰にもバレませんように……。

紅蓮の頬が赤かったのは何故だろう。
それはお酒の入ったチョコレートのせいか? それとも……。

あの時もそうだった。いきなり雨が降り出して、俺と紅蓮が雨宿りしたときに、紅蓮が愛しいあまりに紅蓮にキスをしようとした。

紅蓮は驚いた表情は見せたが、不快な表情もあからさまな拒絶もしなかった。今だってそうだ。好きでもない、ただの親友の俺に抱きしめられているんだぞ? 嫌じゃないのか?

俺は紅蓮のことが好きだから、今の状況が夢なんじゃないかと思うくらい幸せだ。

この時の俺はまだ知らなかった。

紅蓮の涙を再び見ることになるなんて .... 。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト

春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。 クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。 夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。 2024.02.23〜02.27 イラスト:かもねさま

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

【BL】記憶のカケラ

樺純
BL
あらすじ とある事故により記憶の一部を失ってしまったキイチ。キイチはその事故以来、海辺である男性の後ろ姿を追いかける夢を毎日見るようになり、その男性の顔が見えそうになるといつもその夢から覚めるため、その相手が誰なのか気になりはじめる。 そんなキイチはいつからか惹かれている幼なじみのタカラの家に転がり込み、居候生活を送っているがタカラと幼なじみという関係を壊すのが怖くて告白出来ずにいた。そんな時、毎日見る夢に出てくるあの後ろ姿を街中で見つける。キイチはその人と会えば何故、あの夢を毎日見るのかその理由が分かるかもしれないとその後ろ姿に夢中になるが、結果としてそのキイチのその行動がタカラの心を締め付け過去の傷痕を抉る事となる。 キイチが忘れてしまった記憶とは? タカラの抱える過去の傷痕とは? 散らばった記憶のカケラが1つになった時…真実が明かされる。 キイチ(男) 中二の時に事故に遭い記憶の一部を失う。幼なじみであり片想いの相手であるタカラの家に居候している。同じ男であることや幼なじみという関係を壊すのが怖く、タカラに告白出来ずにいるがタカラには過保護で尽くしている。 タカラ(男) 過去の出来事が忘れられないままキイチを自分の家に居候させている。タカラの心には過去の出来事により出来てしまった傷痕があり、その傷痕を癒すことができないまま自分の想いに蓋をしキイチと暮らしている。 ノイル(男) キイチとタカラの幼なじみ。幼なじみ、男女7人組の年長者として2人を落ち着いた目で見守っている。キイチの働くカフェのオーナーでもあり、良き助言者でもあり、ノイルの行動により2人に大きな変化が訪れるキッカケとなる。 ミズキ(男) 幼なじみ7人組の1人でもありタカラの親友でもある。タカラと同じ職場に勤めていて会社ではタカラの執事くんと呼ばれるほどタカラに甘いが、恋人であるヒノハが1番大切なのでここぞと言う時は恋人を優先する。 ユウリ(女) 幼なじみ7人組の1人。ノイルの経営するカフェで一緒に働いていてノイルの彼女。 ヒノハ(女) 幼なじみ7人組の1人。ミズキの彼女。ミズキのことが大好きで冗談半分でタカラにライバル心を抱いてるというネタで場を和ませる。 リヒト(男) 幼なじみ7人組の1人。冷静な目で幼なじみ達が恋人になっていく様子を見守ってきた。 謎の男性 街でキイチが見かけた毎日夢に出てくる後ろ姿にそっくりな男。

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

忘れ物

うりぼう
BL
記憶喪失もの 事故で記憶を失った真樹。 恋人である律は一番傍にいながらも自分が恋人だと言い出せない。 そんな中、真樹が昔から好きだった女性と付き合い始め…… というお話です。

処理中です...