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第二章
7話
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俺と紅蓮は中学一年の初夏に初めて会った。
「授業なんて、かったるい。なんで、あんな簡単な授業のために息苦しい教室に居ないといけないんだ……?」
そう呟いては屋上で一日の半分を過ごしていた。
俺は所謂不良というやつで、教師と目が合うたびに説教を受けていた。
だが、星ヶ丘中学で俺の成績は常に上位だったため、まわりからは天才だと言われていたが、授業を毎回サボるため、全体の評価はあまり良くはなかった。
しかし、俺の威圧感に押されてか、誰も強く怒るものは居なくて、俺は教師達から見放されていた。
友好関係も上手くいかず、学校では一人で教室にいるのも苦痛。
そのため、学校の屋上で過ごしていたのだ。
そんな時だ、アイツに出会ったのは……。
「神崎冬夜。今は1時間目がもう始まってる。今からでも間に合うから、僕と一緒に教室に行こう」
「あ……? 誰だよ、お前」
「僕は如月紅蓮。神崎とは同じクラス。先生から頼まれたから、授業を受けさせようと思って此処に来た」
「俺は授業なんか行かねえよ……」
それが紅蓮との出会いだった。
それからというもの、紅蓮は毎日のように俺のとこに来ては授業に受けるように言った。
「だから、行かねえって以前にも断っただろ!? 俺のことなんか放っておけよ! なんで俺に構うんだ! 教師だって俺のことを見捨ててる。お前だって、教師に言われたから、俺に構ってるだけなんだろ!?」
その時の俺は、こんな言葉を言ったら、相手が傷つくんじゃないかという、人を気遣うという感情を持ち合わせてはいなかった。
そのため、言いたいことを言葉にしていた。
「僕は君を見捨てたりしない。教師たちは君がろくでもない大人になるって言ってる。けど、僕はそうは思わない。どうして、そうやって突き放そうとする? もう自分自身を傷つけたりしないでほしい……」
「っ……」
俺はその時の紅蓮の言葉に救われた。誰もが、俺のことをろくでもない大人にならない、問題児などと陰口を言って蔑んだ。
でも、紅蓮だけは違った。だから、俺は紅蓮と友人になったんだ。
気がつけば、俺と紅蓮は学校以外のことも話すようになっていた。
「冬夜、僕は中三になったら、この学校の生徒会長になる。だから、冬夜は僕のサポートとして生徒会副会長になってほしい」
「風紀委員長の次は生徒会長か。会長になったら何かしたいことでもあるのか?」
「それは秘密。でも、なってくれる? 副会長に」
「ああ、お前が本当に会長になれたらな」
その時は軽い冗談で返事をした。
生徒会長になるには学年一位を中三まで維持しなければならない。いくら頭の良い紅蓮でも、ずっと一位は無理だろうと俺はどこかで思っていた。
だけど、俺と紅蓮が中三になった時、紅蓮は本当に学校の生徒会長になった。
でも、俺は生徒会副会長にはなれない。
何故なら、もうすぐ親父の仕事を手伝うため、今日フランスへ旅立つからだ。
紅蓮にはそのことを伝えていなかった。
空港に着き、フランスに行く飛行機が来るまで待っていると
「冬夜!」
「紅蓮、なんで此処に?」
「先生から聞いた。お父さんの仕事を手伝うためにフランスに三年間留学するって」
「ごめんな、紅蓮……生徒会副会長になれなくて」
「ううん、大丈夫。でも、生徒会副会長の席はずっと空けておくから」
「そんなことが出来るのか?」
「出来る。……だから、僕が高校三年になった時、高校の生徒会長になったら、その時は今度こそ生徒会副会長になってくれる?」
「ああ、そんなことがお前に出来るならいいぜ」
それから三年後、俺がフランスから帰国したとき、紅蓮は本当に高校の生徒会長になっていて、副会長の席を俺のために空けていた。
実をいうと俺は紅蓮のことがこの時、既に好きになっていたのだ。
だからこそ、フランスに留学して、紅蓮に対する恋心を忘れようと思っていた。
男同士ということもあり、結ばれるのは不可能だと思っていたからだ。
だが、そんな俺が忘れようと思っていた恋心も、紅蓮が俺の為に生徒会副会長の席をずっと空けていたことで、俺は紅蓮に対する恋心がさらに高まってしまった。
そして、今、その恋心が紅蓮によって、燃え上がったのだった。
「授業なんて、かったるい。なんで、あんな簡単な授業のために息苦しい教室に居ないといけないんだ……?」
そう呟いては屋上で一日の半分を過ごしていた。
俺は所謂不良というやつで、教師と目が合うたびに説教を受けていた。
だが、星ヶ丘中学で俺の成績は常に上位だったため、まわりからは天才だと言われていたが、授業を毎回サボるため、全体の評価はあまり良くはなかった。
しかし、俺の威圧感に押されてか、誰も強く怒るものは居なくて、俺は教師達から見放されていた。
友好関係も上手くいかず、学校では一人で教室にいるのも苦痛。
そのため、学校の屋上で過ごしていたのだ。
そんな時だ、アイツに出会ったのは……。
「神崎冬夜。今は1時間目がもう始まってる。今からでも間に合うから、僕と一緒に教室に行こう」
「あ……? 誰だよ、お前」
「僕は如月紅蓮。神崎とは同じクラス。先生から頼まれたから、授業を受けさせようと思って此処に来た」
「俺は授業なんか行かねえよ……」
それが紅蓮との出会いだった。
それからというもの、紅蓮は毎日のように俺のとこに来ては授業に受けるように言った。
「だから、行かねえって以前にも断っただろ!? 俺のことなんか放っておけよ! なんで俺に構うんだ! 教師だって俺のことを見捨ててる。お前だって、教師に言われたから、俺に構ってるだけなんだろ!?」
その時の俺は、こんな言葉を言ったら、相手が傷つくんじゃないかという、人を気遣うという感情を持ち合わせてはいなかった。
そのため、言いたいことを言葉にしていた。
「僕は君を見捨てたりしない。教師たちは君がろくでもない大人になるって言ってる。けど、僕はそうは思わない。どうして、そうやって突き放そうとする? もう自分自身を傷つけたりしないでほしい……」
「っ……」
俺はその時の紅蓮の言葉に救われた。誰もが、俺のことをろくでもない大人にならない、問題児などと陰口を言って蔑んだ。
でも、紅蓮だけは違った。だから、俺は紅蓮と友人になったんだ。
気がつけば、俺と紅蓮は学校以外のことも話すようになっていた。
「冬夜、僕は中三になったら、この学校の生徒会長になる。だから、冬夜は僕のサポートとして生徒会副会長になってほしい」
「風紀委員長の次は生徒会長か。会長になったら何かしたいことでもあるのか?」
「それは秘密。でも、なってくれる? 副会長に」
「ああ、お前が本当に会長になれたらな」
その時は軽い冗談で返事をした。
生徒会長になるには学年一位を中三まで維持しなければならない。いくら頭の良い紅蓮でも、ずっと一位は無理だろうと俺はどこかで思っていた。
だけど、俺と紅蓮が中三になった時、紅蓮は本当に学校の生徒会長になった。
でも、俺は生徒会副会長にはなれない。
何故なら、もうすぐ親父の仕事を手伝うため、今日フランスへ旅立つからだ。
紅蓮にはそのことを伝えていなかった。
空港に着き、フランスに行く飛行機が来るまで待っていると
「冬夜!」
「紅蓮、なんで此処に?」
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「ごめんな、紅蓮……生徒会副会長になれなくて」
「ううん、大丈夫。でも、生徒会副会長の席はずっと空けておくから」
「そんなことが出来るのか?」
「出来る。……だから、僕が高校三年になった時、高校の生徒会長になったら、その時は今度こそ生徒会副会長になってくれる?」
「ああ、そんなことがお前に出来るならいいぜ」
それから三年後、俺がフランスから帰国したとき、紅蓮は本当に高校の生徒会長になっていて、副会長の席を俺のために空けていた。
実をいうと俺は紅蓮のことがこの時、既に好きになっていたのだ。
だからこそ、フランスに留学して、紅蓮に対する恋心を忘れようと思っていた。
男同士ということもあり、結ばれるのは不可能だと思っていたからだ。
だが、そんな俺が忘れようと思っていた恋心も、紅蓮が俺の為に生徒会副会長の席をずっと空けていたことで、俺は紅蓮に対する恋心がさらに高まってしまった。
そして、今、その恋心が紅蓮によって、燃え上がったのだった。
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