上 下
1 / 1

どうやら私の兄は攻略対象らしい。

しおりを挟む
どうやら私の兄は攻略対象らしい。

突然電波的な発言をして申し訳ないが事実なのでどうしようもない。

私が住むこの世界は前世で妹に勧められていた乙女ゲームの世界だ。

私がそれに気づいたのは魔法学校に通い始めた頃、この国の第一王子の顔を拝見した時だったのだが、まぁ、それはどうでもいいので置いておこう。

前世で妹に勧められた時、妹の推しペアであった主人公ヒロインと第一王子の顔だけは覚えさせられた。

その程度の知識だったため、この世界について気づくのは遅かった。

どうするかなぁと考えたのだが所詮モブだからいいかと普通に生活していた。

そんな私の兄であるヨハン・ウィリアムが攻略対象であるということを知ったのは数日前のことだ。

----------------------------------------------------------

「ユリア...女性がもらって喜ぶ物とはなんだろうか。」

「お兄様、それは人それぞれでしてよ?それに、その女性の性格や好みを把握して気持ちを込めて贈るのが大切なのではないかと思われますが。」

「そ、そうか...。令嬢の貴公子であるお前が言うならそうなのだろうな...。」

「なんですか、その令嬢の貴公子って...。」

「私が物を贈りたい相手は“サクラ・イザワ”という迷い人の優しく温かい女性なんだ。彼女は花が好きで、名前の“サクラ”も花の名前らしい。あぁ、あと本を読むのが好きとも言っていた。この世界の文字も直ぐに覚えて今では王立図書館に毎日通っているんだ。」

「はぁ...華麗に私の疑問を聞かなかったことにしていただきありがとうございます。...そうですね、花と本が好きなのでしたら、栞などはいかがでしょうか。」

「しおり?とはなんだ?」

「本を中断する際に挟んでおき、続きを読む際に簡単に開けるという物ですわ。花を魔法で枯れないようにして魔法を加えた紙で挟むだけですので、不器用なお兄様でも作れますわ。」

「たしかに、それなら私でも作れそうだな!だが、贈り物に手作りとは女性からすると貰いづらいのではないだろうか...。」

「お兄様、それはありえませんわ。お兄様のような不器用な方が精一杯作られたものですのよ?お兄様が優しく温かいと思う女性なら嬉しく思ってくれますわ。」

「そ、そうだな。では、早速気に入ってくれそうな花を買ってくる!」

「お兄様、ちょっとお待ちください。花なら私の温室で育てたものを提供させていただきますわ。お兄様では、花言葉のような女性の中では大切なものが分からないでしょう?それで、変な言葉が贈られては女性が可哀想ですわ。」

「た、たしかに...。わかった、頼む...。」

「お任せ下さいませ。それでは、花の準備をしますので、また明日来てください。」

「あぁ、ありがとう。」

----------------------------------------------------------

後日談になってしまうが、兄は不器用ながら頑張って作った栞を彼女に贈った。

彼女は栞を見て涙を流して喜んでくれたそうだ。

兄はその涙に戸惑ったそうだが、抱きしめて泣き止むのを待っていたらしい。

これは兄から聞いたのではなく、何故か私の部屋に来ている第一王子から聞かされた。

彼女が泣いた理由はきっと、この世界では存在しないはずの“桜”の花がこの世界では使われていない“栞”という形で手元に来たからだろう。

現在、兄は彼女とお出かけ中である。

幸せそうでなによりだ。

どうやら私の兄は攻略対象で、私の姉になるであろう方は主人公ヒロインらしい。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

柚穏
2019.08.05 柚穏

面白かったです! …てかこれを授業中ばれずに書けたのが凄いですね♪( ´▽`)
勉強も更新も頑張ってください!

綴
2019.08.10

ありがとうございます!後ろの席だからできることですね笑

解除
なみなみ
2019.01.21 なみなみ

読みやすかったです、王子が何故いるのかも気になりました。

綴
2019.01.21

ありがとうございます!そのうち、第一王子目線での話を書く予定ですのでその際に何故いたのかがわかると思います。

解除

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。