【R18】彼女が友だちと寝ていたから

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第33話 【R18】左近1

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 ……つまんねぇな。
 馴染みのクラブで左近は独りごちていた。
 時間は既に深夜を過ぎている。しかしフロアで騒ぐ人は多くいた。
 ギラギラと光が交差する。けたたましい音楽が熱気を生んでいた。
 皆が浮世ふせいを忘れて乱痴気騒らんちきさわぎをする様を、左近は二階のソファー席から冷めた目で見つめていた。
 ……はぁ。
 軽いため息が漏れる。溜まるばかりの鬱憤うっぷんを飲み込むように前に置かれたグラスに口をつけるが、気持ちが晴れることは無い。
 その両隣には名も知らぬ女が座っていた。そこそこ整った顔でどこそこ短い際どい服を身にまとっている。手慰てなぐさみでその胸を揉んでやれば押し付けるように身体を預けてきた。
 近頃こういう女が増えてきたと、左近は口を曲げていた。ただの遊びに色を添えて、過度な刺激と優越感を味わう。その出汁に使われていることがまた苛立ちを誘っていた。
 ……そっちがその気ならいいさ。
 夢見がちな女を雑に使い捨てるのには慣れていた。それでも見向きもされない下の賑やかしよりはマシとしたたかになれるのが彼女達だ。気分が乗らなくとも、下半身は若さ故の暴走を見せていた。
 その後ろで、地面を舐める男性を見ていた男達がいた。揃いの衣装でひそひそと話す様子が左近の耳にも入る。 

「左近さん、今日は一段と荒れてんな」

「女か?」

「いや、実家のことらしいぜ」

 実家。
 それを聞いた瞬間、左近は急に立ち上がっていた。きびすを返すと足を踏み鳴らし、鼻息荒く男達を睨みつける。
 息を強く吸い込む。吐き出す先は決まっていた。

「言いたいことがあんなら正面からかかってこいやっ!」

「っ!? すみません!」

 蜘蛛の子を散らすように、雑な一礼の後男達は逃げていった。

「ったく……」

 本当につまんねぇよ。
 ソファーに座り直した左近は大きく舌打ちをしていた。その様子に隣の女達が嘲笑する。
 握った拳の振り下ろし先は見つからず、左近はただただ手を揉むしか無かった。





「ちょっと待って!」

「えっ?」

 プロローグじみた話を夕凪は声を荒げて遮っていた。
 いつものリビングでいつものテーブルには八人が座っている。大人六人に子供二人、あとのチビ達は既に自室で就寝していた。
 夕食後、家事子守りを終えた大人達が晩酌をしている時、リビングにある大型のテレビでゲームをしていた夕凪と晴海は声をかけられていた。
 その日は珍しく六人が揃っている日だった。飲食業で働く左近は今日が休みで、写真家の一紗も家にいる。他も出張などなく、理由もなく揃うことが珍しかった。
 そんな折、談笑していた大人の中で夕凪が昔の話を聞いているという話題になって、それに興味を持ったのが左近だった。
 なかなか平日に顔を合わせる機会の少ない彼は、それを埋めるようによく話す。大して大きくない夕凪より少しだけ背の高い、小柄で穏和おんわという中性的な顔立ちがつい先程語った彼の過去と乖離かいりしすぎて理解が追いつかなかった。 

「それ、誰の話?」

「僕だけど?」

「キャラ変わりすぎじゃん」

「昔はやんちゃだったからねぇ」

 そういう問題かといぶかしげな目を向けるが左近はとぼけて視線を外していた。
 ……ありえないでしょ。
 豹変ひょうへんと言うには生易しく、もはや別人と言われた方が納得出来る。それをやんちゃの一言ですます神経を疑っていた。
 絶句する夕凪に、

「ベッドの中では今もやんちゃ坊主だけどな」

 そう茶化したのは一紗だった。
 それを隣で聞いていた海が咎める。

「はしたないわよ……今更か」

「えっと、話続けていい?」

 左近はそう言って苦笑いを浮かべていた。




 暗い部屋の中で淫靡いんびな水音が響き渡る。
 続いて肉を叩く音、そして艶のある声が反響していた。

「あっ、だめっ! いくっ……」

 うつぶせに眠る海の背中に身体をつけるようにして和が腰を振る。薄く差し込む月光に腰を上げるたびに愛液に濡れた陰茎がてらてらと光を反射させていた。
 足を伸ばして顔を枕にうずめる海は奥をつかれるたびに肩を震わせていた。ゆっくりと大きくかき混ぜられた膣からはだらだらとだらしなく愛液を飛ばしている。
 和は数回の挿入の後、子宮をこじ開けるように深く肉棒を差し込んでいた。ぐりぐりと尻を動かして子宮口を撫でまわすように余韻に浸った後、その背中に倒れこむ。

「はぁ……もう限界」

 浅く、激しい呼吸の後、大きく息を吸う。溜まった疲労ごと大きく吐き出すと、目の前にある彼女の頭に軽く唇を触れさせていた。

「んっ、はぁ……もうちょっとしない?」

 射精の脈動がおさまったあと、海が顔を上げて提案していた。それに和はゆっくりと首を横に振る。
 既にゴムを着けての吐精は三度していた。体力の限界よりも和は壁に掛けられた蓄光ちっこうの時計の針を見て、

「駄目だよ。明日一紗を一限いちげんに連れていかなきゃだから」

「……保護者かよ」

「えっ、なんで?」

 聞き返した和に海は顔を背けていた。そしてそのまま彼の腕の中から抜け出すと、

「なんでもない。おやすみ」

 掛布を羽織って背を向けていた。

「えぇ……」

 一人残された和は、ほうけた顔でしばらくその背中を見つめていた。




「んあぁ」

 翌朝。
 パンとサラダ、それにスープの並べられた食卓に四人の男女が座っていた。
 一人を除いて三人は手を合わせると、目の前の食事に取り掛かる。ゆっくりと味わいながらの食事は、代り映えのしない食べ物でも暖かみを感じられていた。
 残る一人は半分閉じた眼で食卓を見つめていた。伸ばした手は汁物へと向かうが、途中で掴んだスプーンは掬った物の重さに耐えきれずに皿を叩くに終わっていた。
 あっと声を上げる和は布巾を持って少しだけ飛び散ったスープを拭う。その間、原因の一紗はうつろな目でその動作を眺めていた。

「ほら、こぼすよ。ちゃんと起きて」

「う」

 もはや返事なのかなんなのかよくわからない声を上げる一紗に、和はスプーンをしっかりと握らせる。力の入っていない手でまた食べようとする彼女を、介護のように支えていた。
 その様子を向かいで見ていた晴人は、パンをかじりながらつぶやく。

「ほんと朝が弱いな」

甲斐甲斐かいがいしく世話する方もする方だけどね」

 海が皮肉を言うと、一紗が一口食べたことを確認した和が苦笑しながら、

「世話って、ペットじゃないんだから」

「似たようなもんでしょ。少なくとも見た目はね」

「そうかなぁ」

 徐々に動きが安定してきた一紗を横目に、和は首を傾げていた。
 と、突然晴人が声を上げた。 

「あ、そうだ」

 彼は残ったスープを飲み干してから、

「ペットで思い出したんだけどさ。『狂犬』、大学辞めるらしいよ」

「へぇ。四年の中途半端な時期なのに変ね」

 通じ合う二人に和はしばらく黙っていた。
 そして、

「『狂犬』?」

「あれ、知らないの?」

 首を横に振る彼を見た海が視線を晴人に向ける。

「言ってなかったか?」

 おかしいなぁと呟いた彼は、納得のいかない表情で頭を描いていていた。
 その仕草にもう、と言葉を漏らした海は和に向かって掌を突き出していた。そしてそのうち親指と小指をたたみ、三本の指を立てて、

「大学にいる特に関わらない方がいい三人の事よ。『大淫婦だいいんぷ』、『狂犬』、『貴公子プリンス』。本当に知らないの?」

「初耳だなぁ」

「そんなわけないはずなのに」

「なんで?」

 和の疑問に海は視線をずらす。
 ゆっくりと、船をぎながらも食べ進める一紗がそこにいた。
 彼女はだいぶ時間が経ってから注目を集めていることに気付いて、一つ大きな欠伸あくびをしていた。きつく目を閉じた後、しょぼくれた目を開いた彼女に海はため息をついて、 

「だって、『大淫婦』って一紗の事だもの。知ってて話しかけたんじゃないの?」

「あれ、そうなの?」

 和が尋ねると一紗は小さく首を振って、

「……私も知らんぞ」

 どうにか絞り出すように答えていた。

「当事者だからね。仕方ないんじゃないか?」

 晴人がフォローを入れると、一紗は大きく息を吐く。
 まだ残っているがそれが彼女の食べ終わりの合図だった。食いかけの残飯はサラダを和が、残りを晴人がいただく。それがいつもの流れだった。

「で、そのワン公と王子様はどんな奴なんだ?」

 腹に手を置く一紗が尋ねる。軽く口を拭う彼女を見て、海は説明を続けていた。

「『狂犬』は元々茶道の家元の子でね。なんでか知らないけど勘当かんどうされてからは夜な夜な街に出て誰彼構わず喧嘩を吹っ掛けるらしいわ。『貴公子』の方は本人はすっごくいい人なんだけど、その取り巻きがねぇ。親や祖父は政治経済界で名のある人で本人もモデルやらタレントやらやってるから。学内非公式ファンクラブの連中が壁作ってて近寄れないんだけど、不用意に接触しようとしたら何されるかわかんないわ」

「……大学の話だよね」

「残念なことにね」

 海はあほらしいと苦言をていしていた。
 
「なるほど」

 話を聞いて、一紗は短い感想を述べていた。
 何がと聞く和に、今日初めての笑みを見せた彼女は、

「『狂犬』とやらには興味があるな」

「『貴公子』の方はいいの?」

「良い奴ほどつまらないものはないさ」

 そういうものかなと首を曲げる和に、一紗はそういうものだと笑っていた。

「ちょっかい出すのはやめときなさいよ。殴られても知らないからね」

「わかったわかった」

 軽く流すような言葉に海は一抹の不安を表情に出していた。
 絶対碌なことにはならない。そんな確信が目に浮かんでいた。
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