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第15話 一紗7
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「ちょっと待ってよ!」
せっかくまとまった話に異を唱えたのは海だった。拳を握り、首を振る彼女は顔を赤くしていた。
……はぁ。
一紗はため息をつく。阿呆なのか、阿呆だろうな。そんな感想を思い浮かべながら彼女を見ていた。
「あのさ、お前が何か言う立場にあると思ってんの? 謝りたくてここに来たんだろ、ならもういいから。気に入られるように頑張れよ」
「さっきから何様なのよ!」
「だから彼女だって。分かるだろ?」
一紗はそう言って身体を倒す。布団に身体を預けて、和の股に頬擦りをしてみせる。
「ちょっ!?」
その行為に和は恥ずかしがって逃げるように腰を捻る。逃げるなよと、猫なで声で一紗追いすがるが、足を立て壁を作られて拒まれていた。
「お、おぉ……」
その様子に感嘆の声を上げた晴人が海に睨みつけられていた。
「変態! 何してんのよ!?」
「何って、ナニだろ」
激昂する海に一紗が退屈そうに答えていた。
もはや挑発する気も起きない。視野狭窄具合に、こいつはここで切っておかないと後々不和の元になるだけと感じていた。
……躾けるか。
一紗は立ちあがって拳を作る。一発ぶん殴れば立場が分かるだろう。
「海」
それを止めたのは和だった。身体に布団を巻き付けて上体を起こした彼は、一言ごめんと謝罪して、
「海が僕のことを好きでいてくれていることはうれしいんだ。でも同じくらい晴人のことを好きでいてくれてうれしいとも思ってる」
「和……」
晴人は熱でうるんだ瞳を和に向けていた。
……友情だよな? 友情なんだよな!?
若干バラの香りを漂わせながら、和は言葉を続ける。
「だから今だけはどっちかを切り捨てるような選択をしないでほしいんだ」
「……そんなの、変よ」
「変だよね、わかってる。でもそれが一番しっくりきちゃったから」
和の言葉に、海はうつむくばかりで答えようとしない。
……ふーん。
気持ちはわからないでもない。和が言っていることはただの先延ばしで、海は和を愛している。その間に一紗が入ることが許しがたいのだ。
とはいえ気持ちはわかるが実感はない。所詮人間は他人の人生丸々背負うことなどできず、結局は我慢を強いるのだ。それならそれなりの関係性でお互い自由にしていればいい。
そう提案されているのだから、一も二もなく飛びつけばいいのにと、一紗は二人を見てそう思っていた。
「お願い。もうあんな暴力みたいなセックスはしたくないんだよ」
「そういうプレイもありだな」
「今は黙ってようね」
突如現れた筋肉が一紗の視界を遮っていた。
なんだこいつはと、その背中を見つめる。山のように逞しいそれは一種のセックスアピールと言って過言では無い。
だらだらと話し合いを続けている二人に飽きて、一紗は晴人の背中に指を添える。服の上から腰までを撫でると、うひゃっと奇声を出していた。
「一紗」
「なんだよ。話はまとまったのか?」
指をもう一周させていると今度は打ち震えるような振動が返ってくる。分厚い筋肉をしているくせに感度がいいようで、一紗は悦楽の笑みを浮かべていた。
「ちょ、たんまたんま」
「ん、立ってきた?」
「ねえ、この子どういう子なの!?」
責めに耐え切れなくなった晴人が、脱兎のごとく距離をあけて部屋の隅へと逃げていた。
硬い感触が手に残っている。一紗は煽るように舌にで指先を舐めていた。
「……へ、変態じゃん」
「……否定はできないかなぁ」
海と和が目を細めて見つめていた。
二人してひどいことをいう。ちょっと人より性欲が強くて快感に弱いだけなのに。
一紗は少しむくれていた。後で必ずわからせてやると心に決めて。
「あの……」
「なに?」
声をかけてきたのは晴人だった。部屋の隅で居心地悪そうに丸まっている彼は顔を上げ、
「名前は何というのでしょうか?」
「名前? 郷田 一紗だけど?」
「さとだ……あ、あぁ」
一人頷く晴人に、海が尋ねる。
「どうしたのよ?」
「あれだよ、校内で噂の郷田」
「……うわっ」
声を上げ、海は途端に眉をひそめていた。
その反応から好意的でないことだけはわかる。一紗はむっと唇を突き出して、
「慣れてるからいいけどさ。流石に面と向かってする態度じゃないだろ」
腰に手を当て、不機嫌さを表すように鼻を鳴らしていた。
すまん、と謝る晴人に対して、海はそっぽを向いていた。
……負け犬め。
心の中で揶揄して見せるが同じ土俵で戦う必要も無い。一紗はほくそ笑んだまま和に抱き着いていた。
「そろそろ話も終わっただろ。帰れ帰れ」
「……あんたはどうするのよ?」
「普通聞く? デリカシーがないな」
ぷちっと血管の切れた音がした。
それほどに海は顔を真っ赤にして、それでも掴みかかってくるようなことはしなかった。ただ鼻息荒くにらみつけた後、一周回って冷めたように冷静さを取り戻していた。
「怖いな」
「怖いよ」
男二人はしみじみと感想を零していた。
「……わかった。私も覚悟決めたわ」
「遅い」
「うっさい」
海はそういうと部屋の中を徘徊しだしていた。
何を、と思う前にクローゼットを開き、その中から女性ものの下着を取りだしていた。
そしてそれを一紗に投げ渡すと、
「私もここに泊まるわ」
「えっ?」
「駄目なの?」
いや駄目だろ、と一紗は思っても口には出さなかった。
家主は和だ。その意見をまずは聞いてから。否定するならばそれからだった。
その和は下唇を噛んで、隣にいた晴人に目を向けていた。助けてと訴えかける目を晴人はただ首を横に振って答えにしていた。
「な、なんで?」
和が聞く。
海は一紗を見ると、指を差して、
「こんなのと一緒にいたら和が駄目になるわ」
「人を指差すな」
「とにかく。こんな奴に負けたくないの!」
気持ちを吐露すると同時に海は瞳に涙を浮かべていた。
「泣くぐらいならやんなよ」
「……う、うっさい」
めんどくさい。これだから女は嫌なんだ。
同情の余地なんてまるでない。床にへたり込んだ海を一紗はひどく冷めた目で見つめていた。
一旦二人を帰した後、一紗はベッドに横たわっていた。
隣には和がいる。しかし二人ともしっかりと服を着ていた。
梃子でも動かないという海を帰すために、和が今日はこれ以上何もしないと約束したせいだった。
一紗はそれに不満を感じていたが日付が変われば約束は果たしたことになる。時計の短針が十二を指すのを今かと待っていた。
「……一紗は帰らないの?」
横に寝る和が見つめていた。
「家ないし」
「は?」
「あれ、言ってなかった? 家賃滞納で追い出されたから帰るとこないんだよ。だからここに住むって」
「言ってない」
あれ? そうだったっけ?
思い返しても、どちらかわからない。一紗はしばらく虚空を見つめた後、
「泊めてよ」
「……いいよ」
やっぱり優しいな。
一紗は眉を顰める和の手を握り、口元へと近づける。これくらいなら約束の範囲外だと判断して。
「……本当にあいつのこと許すの?」
「海?」
「うん」
返答はすぐにはなかった。
和はうーんと喉を鳴らして、目を細めていた。そして握っている手を強く握り返して、
「本当によくわかんなくなっちゃった。一紗にはほだされてるし、海も好きなのは本当。晴人が実は海を好きなことも知ってたし、そう考えるとちょっと安心してたんだ」
「安心?」
一紗の疑問に和はうん、と頷く。
「友達の好きな人を奪っちゃった。晴人が好きだったのは付き合ってから気づいたんだけど、どっかで罪悪感感じてたんだよね。それでも友達でいてくれてることには感謝してたし、かといってじゃあ身を引きますってのもおかしな話じゃん」
「そりゃそうだ」
「だからなんか納まるところに納まった感じ? あー自分でも何言っているかちょっとわかってないや」
ごめんね、と謝る和に、一紗は手を伸ばしていた。
無防備な頭に手を乗せる。髪を梳くように撫でて、
「気にしすぎ」
ただ一言告げる。
悩んで悩んで、独りでは答えを出せなくて。思考がこんがらがって最終的に出した答えが一紗に相談をするということだった。もうその時点で冷静とは思えない。
「そうかな?」
納得いかない表情の彼に、一紗はそうだよと答える。
「恋愛を知って何年経った? まだ正解を出せる年じゃないんだよ。だったらとりあえず今は全開に手を伸ばして、後で取捨選択していけばいいじゃん」
「そうかな……」
「他人がどう思うかなんて気にすんな。恋愛に正解はないとか言うくせに浮気は駄目とかいうダブスタがまかり通ってるんだ。私からしたらよっぽど馬鹿に見えるね」
極論だなぁ、と和は笑みを浮かべていた。
職業に貴賤はないと言いつつ娼婦は下に見られる。純愛を謳っておいて妾、内縁がまかり通る。初恋が実らないなら世の中全員ビッチと同じだ。誰もが自分を棚に上げて他人を責める世の中なのだから、多少後ろ指差されるくらいなんてことなかった。
「これからどうしたい?」
一紗は見つめ返していた。
答えは、すでに知っていた。それを彼から聞きたくて、そう尋ねていた。
「……もとに戻れるかな?」
「無理」
「無理なの!?」
「だって私がいるから」
数秒の間を置いて、和は声を殺して笑っていた。笑いすぎて辛そうに咳き込むほどに。
……笑いすぎだろ。
ちょっとだけ不愉快に思って、じゃれあうように一紗は脛を蹴る。
「うっ……」
「もっといい方法教えようか?」
顔を歪ませてもだえる和を無視して、一紗は提案する。
「共同生活するの。もっと大きな家に引っ越して」
「なんで?」
「私がここに泊まっていると元カノが怒るだろ? かといって私は帰る家がない。現状マッチョ君は蚊帳の外。全部解決するにはそれ以外ある?」
「……本音は?」
「たまにマッチョ君を味見したいな」
「……そこは三人で相談して決めてね」
せっかくまとまった話に異を唱えたのは海だった。拳を握り、首を振る彼女は顔を赤くしていた。
……はぁ。
一紗はため息をつく。阿呆なのか、阿呆だろうな。そんな感想を思い浮かべながら彼女を見ていた。
「あのさ、お前が何か言う立場にあると思ってんの? 謝りたくてここに来たんだろ、ならもういいから。気に入られるように頑張れよ」
「さっきから何様なのよ!」
「だから彼女だって。分かるだろ?」
一紗はそう言って身体を倒す。布団に身体を預けて、和の股に頬擦りをしてみせる。
「ちょっ!?」
その行為に和は恥ずかしがって逃げるように腰を捻る。逃げるなよと、猫なで声で一紗追いすがるが、足を立て壁を作られて拒まれていた。
「お、おぉ……」
その様子に感嘆の声を上げた晴人が海に睨みつけられていた。
「変態! 何してんのよ!?」
「何って、ナニだろ」
激昂する海に一紗が退屈そうに答えていた。
もはや挑発する気も起きない。視野狭窄具合に、こいつはここで切っておかないと後々不和の元になるだけと感じていた。
……躾けるか。
一紗は立ちあがって拳を作る。一発ぶん殴れば立場が分かるだろう。
「海」
それを止めたのは和だった。身体に布団を巻き付けて上体を起こした彼は、一言ごめんと謝罪して、
「海が僕のことを好きでいてくれていることはうれしいんだ。でも同じくらい晴人のことを好きでいてくれてうれしいとも思ってる」
「和……」
晴人は熱でうるんだ瞳を和に向けていた。
……友情だよな? 友情なんだよな!?
若干バラの香りを漂わせながら、和は言葉を続ける。
「だから今だけはどっちかを切り捨てるような選択をしないでほしいんだ」
「……そんなの、変よ」
「変だよね、わかってる。でもそれが一番しっくりきちゃったから」
和の言葉に、海はうつむくばかりで答えようとしない。
……ふーん。
気持ちはわからないでもない。和が言っていることはただの先延ばしで、海は和を愛している。その間に一紗が入ることが許しがたいのだ。
とはいえ気持ちはわかるが実感はない。所詮人間は他人の人生丸々背負うことなどできず、結局は我慢を強いるのだ。それならそれなりの関係性でお互い自由にしていればいい。
そう提案されているのだから、一も二もなく飛びつけばいいのにと、一紗は二人を見てそう思っていた。
「お願い。もうあんな暴力みたいなセックスはしたくないんだよ」
「そういうプレイもありだな」
「今は黙ってようね」
突如現れた筋肉が一紗の視界を遮っていた。
なんだこいつはと、その背中を見つめる。山のように逞しいそれは一種のセックスアピールと言って過言では無い。
だらだらと話し合いを続けている二人に飽きて、一紗は晴人の背中に指を添える。服の上から腰までを撫でると、うひゃっと奇声を出していた。
「一紗」
「なんだよ。話はまとまったのか?」
指をもう一周させていると今度は打ち震えるような振動が返ってくる。分厚い筋肉をしているくせに感度がいいようで、一紗は悦楽の笑みを浮かべていた。
「ちょ、たんまたんま」
「ん、立ってきた?」
「ねえ、この子どういう子なの!?」
責めに耐え切れなくなった晴人が、脱兎のごとく距離をあけて部屋の隅へと逃げていた。
硬い感触が手に残っている。一紗は煽るように舌にで指先を舐めていた。
「……へ、変態じゃん」
「……否定はできないかなぁ」
海と和が目を細めて見つめていた。
二人してひどいことをいう。ちょっと人より性欲が強くて快感に弱いだけなのに。
一紗は少しむくれていた。後で必ずわからせてやると心に決めて。
「あの……」
「なに?」
声をかけてきたのは晴人だった。部屋の隅で居心地悪そうに丸まっている彼は顔を上げ、
「名前は何というのでしょうか?」
「名前? 郷田 一紗だけど?」
「さとだ……あ、あぁ」
一人頷く晴人に、海が尋ねる。
「どうしたのよ?」
「あれだよ、校内で噂の郷田」
「……うわっ」
声を上げ、海は途端に眉をひそめていた。
その反応から好意的でないことだけはわかる。一紗はむっと唇を突き出して、
「慣れてるからいいけどさ。流石に面と向かってする態度じゃないだろ」
腰に手を当て、不機嫌さを表すように鼻を鳴らしていた。
すまん、と謝る晴人に対して、海はそっぽを向いていた。
……負け犬め。
心の中で揶揄して見せるが同じ土俵で戦う必要も無い。一紗はほくそ笑んだまま和に抱き着いていた。
「そろそろ話も終わっただろ。帰れ帰れ」
「……あんたはどうするのよ?」
「普通聞く? デリカシーがないな」
ぷちっと血管の切れた音がした。
それほどに海は顔を真っ赤にして、それでも掴みかかってくるようなことはしなかった。ただ鼻息荒くにらみつけた後、一周回って冷めたように冷静さを取り戻していた。
「怖いな」
「怖いよ」
男二人はしみじみと感想を零していた。
「……わかった。私も覚悟決めたわ」
「遅い」
「うっさい」
海はそういうと部屋の中を徘徊しだしていた。
何を、と思う前にクローゼットを開き、その中から女性ものの下着を取りだしていた。
そしてそれを一紗に投げ渡すと、
「私もここに泊まるわ」
「えっ?」
「駄目なの?」
いや駄目だろ、と一紗は思っても口には出さなかった。
家主は和だ。その意見をまずは聞いてから。否定するならばそれからだった。
その和は下唇を噛んで、隣にいた晴人に目を向けていた。助けてと訴えかける目を晴人はただ首を横に振って答えにしていた。
「な、なんで?」
和が聞く。
海は一紗を見ると、指を差して、
「こんなのと一緒にいたら和が駄目になるわ」
「人を指差すな」
「とにかく。こんな奴に負けたくないの!」
気持ちを吐露すると同時に海は瞳に涙を浮かべていた。
「泣くぐらいならやんなよ」
「……う、うっさい」
めんどくさい。これだから女は嫌なんだ。
同情の余地なんてまるでない。床にへたり込んだ海を一紗はひどく冷めた目で見つめていた。
一旦二人を帰した後、一紗はベッドに横たわっていた。
隣には和がいる。しかし二人ともしっかりと服を着ていた。
梃子でも動かないという海を帰すために、和が今日はこれ以上何もしないと約束したせいだった。
一紗はそれに不満を感じていたが日付が変われば約束は果たしたことになる。時計の短針が十二を指すのを今かと待っていた。
「……一紗は帰らないの?」
横に寝る和が見つめていた。
「家ないし」
「は?」
「あれ、言ってなかった? 家賃滞納で追い出されたから帰るとこないんだよ。だからここに住むって」
「言ってない」
あれ? そうだったっけ?
思い返しても、どちらかわからない。一紗はしばらく虚空を見つめた後、
「泊めてよ」
「……いいよ」
やっぱり優しいな。
一紗は眉を顰める和の手を握り、口元へと近づける。これくらいなら約束の範囲外だと判断して。
「……本当にあいつのこと許すの?」
「海?」
「うん」
返答はすぐにはなかった。
和はうーんと喉を鳴らして、目を細めていた。そして握っている手を強く握り返して、
「本当によくわかんなくなっちゃった。一紗にはほだされてるし、海も好きなのは本当。晴人が実は海を好きなことも知ってたし、そう考えるとちょっと安心してたんだ」
「安心?」
一紗の疑問に和はうん、と頷く。
「友達の好きな人を奪っちゃった。晴人が好きだったのは付き合ってから気づいたんだけど、どっかで罪悪感感じてたんだよね。それでも友達でいてくれてることには感謝してたし、かといってじゃあ身を引きますってのもおかしな話じゃん」
「そりゃそうだ」
「だからなんか納まるところに納まった感じ? あー自分でも何言っているかちょっとわかってないや」
ごめんね、と謝る和に、一紗は手を伸ばしていた。
無防備な頭に手を乗せる。髪を梳くように撫でて、
「気にしすぎ」
ただ一言告げる。
悩んで悩んで、独りでは答えを出せなくて。思考がこんがらがって最終的に出した答えが一紗に相談をするということだった。もうその時点で冷静とは思えない。
「そうかな?」
納得いかない表情の彼に、一紗はそうだよと答える。
「恋愛を知って何年経った? まだ正解を出せる年じゃないんだよ。だったらとりあえず今は全開に手を伸ばして、後で取捨選択していけばいいじゃん」
「そうかな……」
「他人がどう思うかなんて気にすんな。恋愛に正解はないとか言うくせに浮気は駄目とかいうダブスタがまかり通ってるんだ。私からしたらよっぽど馬鹿に見えるね」
極論だなぁ、と和は笑みを浮かべていた。
職業に貴賤はないと言いつつ娼婦は下に見られる。純愛を謳っておいて妾、内縁がまかり通る。初恋が実らないなら世の中全員ビッチと同じだ。誰もが自分を棚に上げて他人を責める世の中なのだから、多少後ろ指差されるくらいなんてことなかった。
「これからどうしたい?」
一紗は見つめ返していた。
答えは、すでに知っていた。それを彼から聞きたくて、そう尋ねていた。
「……もとに戻れるかな?」
「無理」
「無理なの!?」
「だって私がいるから」
数秒の間を置いて、和は声を殺して笑っていた。笑いすぎて辛そうに咳き込むほどに。
……笑いすぎだろ。
ちょっとだけ不愉快に思って、じゃれあうように一紗は脛を蹴る。
「うっ……」
「もっといい方法教えようか?」
顔を歪ませてもだえる和を無視して、一紗は提案する。
「共同生活するの。もっと大きな家に引っ越して」
「なんで?」
「私がここに泊まっていると元カノが怒るだろ? かといって私は帰る家がない。現状マッチョ君は蚊帳の外。全部解決するにはそれ以外ある?」
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