半官半民でいく公益財団法人ダンジョンワーカー 現代社会のダンジョンはチートも無双も無いけど利権争いはあるよ

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ダンジョンってこうやって出来るんですね(吐血)7

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「やっぱりねぇ。おおかたダンジョンのモンスターを脅しに使って金儲けしたいってところでしょ」
「金儲けなど。我々が世界を管理し、邪魔する者にはご退場願うだけさ」
 悪役は悪役らしく、役に酔う男の姿を舞は滑稽だと笑う。それもすぐに乾いてため息に代わり、
「あっそ、じゃあ勝手に頑張って勝手にくたばってて。私は帰るから」
「どこへ行くつもりだ?」
「用済みでしょ、これ以上何させようってのよ。あんたたちと違ってこっちは雇われの会社員なの、こんなところで遊んでいるなんて上司にバレたら立場が悪くなるじゃない」
 今更だった。そして少しは気にするようになっただけ成長しているとも言えた。
 ……ま、大人しく帰してくれるとも思えないけど。
 このままお疲れ様でしたと見逃してくれるなんて虫のいい話、そうは問屋が卸さない。男性、それに後ろに控える男たちは一斉に銃口を舞に向ける。
「お前にはまだ利用価値がある、例えば――貧者の水とかな」
「欲かくといいことないわよ? 今更かもしれないけどね」
「どういう――!?」
 異変に気付いた男性の行動は早かった。状況を確認する前に発砲、銃口を煌めかせ爆音撒き散らし弾を乱射する。狙いは舞、そしてその横に鎮座する石像だった。
 しかし弾は舞に当たらず、子鼠のように素早く石像の裏に陣取ったため、盾となって銃雨に晒された石像から甲高い衝突音がドラムを叩き散らすが如く奏られる。
 表面は削れ、それでも未だ影形を残す石像は、その材質からは到底想像できないほど滑らかに腕をあげる。動く、動いたのだ、弾倉尽きて替えの弾倉に手を伸ばした後ろの男性目掛け鉾を投擲する。光の尾をひいて最短距離をまっすぐに伸びるそれは反応すら儘ならぬ男性の腰から上を引きちぎり壁に縫い付ける。絶命必至の一撃は鎖も無いのに手元に戻り、2投目を可能としていた。
「――何をした!?」
「何ってコアにお願いして敵対生物と認めて貰っただけよ。残念なことに完全無差別だから私も狙われるけどね!」
 その言葉通り、舞が隠れていない方の石像が照準を向ける。大きな的はいくらもあるというのに、あえて小さい方を狙うとは玄人好みなのだろう。
 投げられる寸前、コアを間に置くようにゴキブリの如くカサカサと逃げ惑う。相手は更新されていくとはいえ現状ダンジョン内最強のモンスターであるが、コアを守る役割のガーディアンでもあるため自分から護る物を破壊するような行為は取れず、電気が走ったようにビタと止まる。その穴を埋めるための2方向からの射撃も、もう片方は乱獲に勤しんでいるため功を奏さない。
 いかな最強と言えど明確な弱点があれば手玉に取ることなど容易いと、甘い考えでほくそ笑む舞の鼻先を金の鉾が通過する。甘皮1枚だけを剥ぎ取る職人技に冷や汗を浮かべながら目を向ければ、本来壁に突き刺さっているはずの鉾が中空でピタリと止まり、自らの意思があるように標的を舞へと定めていた。
『分かりやすく言えば魔法だよ』
 そういえば銘がなんか言っていたなと、思い出す。今じゃなくていいことに気を取られているうちに鉾が迫り、間一髪のところでかわしていた。
 喧騒に悲鳴、場が混沌としてきた中で、唯一静寂を保っていた人物が口を開く。
「……夜巡さん……」
「状況考えて口開け、バカ!」
 瀕死の人間に対して無体な言い方であるが集中を解けばこの世からさよならするのだから仕方がない。
 残り少ない命を削り、波平は顔を舞に向ける。もはや泣く力もないが潤んだ瞳には後悔の念が浮かんでいた。
「死にたく……ないよ……助けて……」
「虫のいいこといって……素直に死んでおけば良かったって言っても聞かないからね」
 舞とて出来ないことはある、むしろそちらの方が多いのだが、出来るのであれば全力でやる、それが彼女だった。
 様子を見ながら舞は跳ぶ。後ろから迫る鉾の殺意に身を震わせながら、唯一の武器、空中で折り曲げた足を伸ばしてコアにドロップキックを浴びせていた。
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