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「か、かかかかカレル!?」

 セツが困惑しきった声をあげる間も、カレルの手は止まらず、セツの下着を剥ぎ取った。
 性器が解放され、空気に触れる感覚がする。カレルの手によって、カレルの眼前で。
 カレルと性的なことをする時点でそりゃあもう性器のひとつやふたつ——当然ひとつしかないのけれども——晒すことにはなるのだろうとは思っていたけれど、腹も決めていたつもりだけれど、やはり想像と現実は違う。青い瞳に自身の性器が捉えられている現状に、セツは変な汗が全身に滲むのを感じた。
 そんなふうにセツの頭は今にも沸騰して破裂しそうなほどにいっぱいいっぱいになっているのに、あろうことか、カレルは綺麗に整えられた爪先で、セツの性器の根から先までをつうっとなぞった。

「ひ」

 ぞわわっと全身に走った感覚に、セツの唇からは自分でも聞いたことがないようなひどく上擦った声があがった。それとともに、撫でられたことを素直に感じ取ったセツの性器がわずかにたちあがる。

「か、カレル、待って、そんなもの触っちゃ、よくない」

 セツは必死に訴えるが、カレルは聞き入れてくれることなく、今度は手のひら全体でセツの性器に触れ包みこんだ。それをゆっくりと上下に扱いていく。

「っ、ん……あ、っ……」

 刺激を与えられた性器は硬度を上げていくとともにだらしなく涎を垂らす。カレルに扱かれるたびに、くちゅくちゅとした淫靡な水音が増幅していく。
 それはカレルの手が、セツにとってこの世の何よりも尊く美しい存在が、セツによって汚されていっている事実を伝える音でもあった。鼓膜が揺らされるたびセツの奥底では、ひどい背信行為をしてしまっているような冷えた恐怖が疼いた。なのに、セツの性器は萎えないどころかむくむくと育っていく。セツの肉体はどんどんと熱を高めていく。勝手に溢れる情けない声だけでも抑えようと唇を噛み締めてすぐ、カレルの顔がセツのすぐそばに近づいてきた。
 わ、きれい。
 さっきまで沸いていた頭がいっきに静まるほど見惚れて、一瞬。
 セツの唇にやわらかな熱が触れた。
 へ、と出そうになった声は、出なかった。出口が塞がれていたからだ。
 カレルはセツにキスをしていた。
 大きく目を見開くと、今までにない距離で視線が重なった青空の瞳に、セツは自分の心臓が一瞬止まった気がした。その縁がほんの少し綻んだように見えたとき、セツの唇にざらりとぬめったものが触れた。びっくりして反射的に唇を開くと、侵入してきたそれがセツの歯列をなぞった。上から下、その形をくまなくたしかめるように。
(これ、カレルの舌……?)
 それ以外にありえないのだけれど、信じがたかった。そうして惑う間にも、カレルの舌はセツの舌を絡め取り、じゅう、と吸い上げた。

「んっ……ぅ、う……」
「ん……」

 カレルの舌に翻弄されるほどに、頭の奥が重く痺れる感覚がした。
 自分の口腔がカレルに支配されているようだと思うと、腹の奥に熱いなにかがいっきに溜まり落ちていく感覚がした。
 カレルの詰まった呼吸がそばで響くたびに、もっと聞きたいと思った。
 ぼうっとした頭で、自分も舌を動かせばもっとカレルの声を聞けるだろうかと思って、蠢くそれに拙く答えてみた。
 すると、カレルは青い瞳を、わ、と見開いた。

「んっ!?」

 緩やかになっていたセツの性器を扱く手が、一気に激しくなる。セツの口腔を支配する舌も、まるで蹂躙するがごとく蠢く。

「ん、っ、んんん、っ」

 上に下に、くちゅくちゅと濡れた音が響く。微弱で激しい不思議な電気が絶えず流されているような未知の感覚が走る。塞がれた唇からは、迫り上がる喘ぎも吐き出せなければ酸素も取り込めず、頭がぼうっとしていく。なにも考えられなくなって、ただただ感じるものだけを追いかけて、駆けのぼっていき——セツの視界にぱっと白いものが弾けた。

「んぁ、ッ」

 絶頂の弾みに顎が逸れ、少しずれた唇の隙間から甲高い声があがる。張り詰めていたセツの性器が一気に解放される。
 緊張と弛緩に飲まれ脱力した体がベッドに沈む。腰と腹の震えは止まらず、頭はまだふわふわとしていた。
 と、いつの間にかじんわりと濡れていた眦に、やわらかなものが触れる感覚がした。ちゅ、と音が聞こえて、キスをされているらしいと気づいた。

「かれる……」
「セツ」

 青い瞳がセツを見下ろす。

「お前は」

 薄い唇がなにかを模りかけて、解ける。

「……今はいい」

 カレルはそうぽつりと零すと、体を起こした。

「ちゃんと予行練習の目的を果たさないとな」

 なぁ、セツ?——そう囁いたカレルは、纏っていたタキシードを脱ぎ捨て、トラウザーズを寛げた。
 そこに晒されたのはすでに膨らみを持ったカレルの性器だった——そしてあろうことか、カレルはセツの白濁を受けた手ひらで自らを包み込んだ。
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