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最終章 ゴーレムはゴーレム

第九十二話 ゴーレムはゴーレム

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「…勝ったのか、シオ」
「激戦だったようだな」
「シオ様! お体が!」

 ボロボロにひび割れてもなお、両の足で立っていたオレの前………そこには、マイオールが血だらけになって倒れ伏していた。

「やあ、おじ………さん」
「マイオール、良い様になったな」
「男前、だろ?」
「ふん。お前が過去に滅ぼしてきた国々の者たちが見たらさぞ喜ぶだろうな」
「ハハ………、彼らの…命は…非常に、美味しかった。よ」
「貴様っ」
「勇者…か、私の首を取る…かい?」
「当然だっ! 今まで何人の命を貴様の都合で殺して来たと思っている!」
「そう、だね…じゃあ、あげるよ………首じゃないけど」

 そう言うと、マイオールは自分の右目に指を突っ込んだ!

 何を!?

「があああああ!!」

 マイオールは自分の目を握りつぶすと、そこから強烈な光が迸る!

 やばそうだ! 障壁!!

 咄嗟に三人の前に立ち障壁魔法を張った!

「なんだ!?」
「くっ!」
「自爆!?」

 やはりか!

 轟音を伴った閃光が広がり、オレ達を守る障壁を包み込んだ!
 衝撃が障壁を揺さぶる!
 慌てて張った障壁が悲鳴をあげ始めた。

 不味い!

 オレは慌てて三人に覆いかぶさるようにして地面に追いやる!
 障壁が割れた!

「きゃああああああ!」
「ぐうっ!」
「シオ!」

 大丈夫だ! オレの体はそんなに軟じゃない!

「ですがシオ様! 体から破片が!」

 清蓮の指摘通り、ヒビ割れたオレのボディから細かい破片が体から落下し始める。
 ついでに腕が折れた!

「ぐうっ!」

 悪いゴート!

 腕が折れたせいでバランスが崩れてゴートに伸し掛かってしまった。

「気に、するな。それよりも、体を小さく保て」

 少しだけでも体を浮かせようとしたが、衝撃に背中を押されて態勢を変えることも難しい。

「シオ様! お顔のヒビも!」

 分かってる! でもそれどころじゃねえんだよ!

「ですが!」

 ビギギギギ!

 背中側から異音が聞こえて来た。

「があっ!」
「シオ! ゴートさんが!」

 くそっ! どうすりゃいいんだよ!

「シオ! 絶対に動くな! 俺は死なない!」

 口から血吐いて何言ってるんだ!

「魔族はこの程度じゃ死なん! 俺を信じろ!」

 つってもよ!

「良いから…動くな! そのまま伏せていろ…」
「ゴートさん………ですが! このま………」

 突如、オレの視界が真っ暗になり音も消えた!
 なんだ!? 何が起きた!?
 くそっ! 訳わからねえ!
 ………顔が壊れたか、取れたか。そうか、信じるぞゴート。
 周りの状況が分からなくなった今、オレに出来る事は動かない事だけだ。
 オレは三人を守る!
 動かない!
 守る!
 オレはゴーレムだ! ゴーレムだから動かない!

 ………。
 ………………。
 ………………………………。
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