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第九章 ゴーレム、体を張る

第八十二話 ゴーレムと赤い蟻

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 探知の魔法で蟻人族を逃さない様に後を尾行する。尾行じゃないか、ただ追いかけているだけだ。
 向こうも追いかけてくるのが分かっているからか、働き蟻がたびたび追加される。それを順繰り片付けながら司令蟻を追いかけると文字通りの蟻の塊が見えてくる。
 探知に人間の反応が多数入って来る。先ほどの冒険者ギルドより人数が更に多い。
 やはり結界を張って立てこもっているようだ。
 そしてそこには司令蟻達が5体、5人か?
 オレが追い回していた蟻人族もそこに合流している。

 清蓮、おそらく敵の本隊と思われる場所についた。今までで一番敵が多いし司令蟻も多い。

『了解しました、お待ちください。ゴートさんが司令蟻は全滅させないで周りの蟻を倒すにとどめておくようにとの事です』
『テイツォにゃ! アイレインから聞くにそこは街の代表達の集会所らしいにゃ! お偉いさんが隠れているにゃ!』

 中には冒険者ギルド以上の人が避難しているみたいだ。

『アイレインがお願いしてきたにゃ! 家が近いから家族が避難してるかもしれないって』

 了解、とだけ伝えておいてくれ。

 念話をしながらも蟻が群れで襲い掛かって来る。オレはアイスワールドで敵を倒しつつ、前進を試みるが前に出ることが出来ない。
 出来るだけ働き蟻はここで削りたいから敵が来るのは別にいいのだが、でかい攻撃をすると結界を破壊しちゃうかもしれない。

 ぬう、ジレンマだ。

 剣を振り回して敵を薙ぎ払い、体当たりをしてくる蟻達の攻撃は避けれずにくらう。その顎で噛みついて来る敵も多いが、アイスワールドで凍らせて粉々にしていく。
 こうやって愚直に突撃してくる蟻をいつまでも相手にするしかないな。やろうと思えば全部吹き飛ばせるけど、それをするとこの辺が更地になっちゃうし結界も持たないだろう。

『シオ様! 蟻達に動きがあります! 東の方角へ徐々に移動していくようです』

 なるほど。じゃあ追いかけるようにオレも東に移動するか。

『ゴートさんが冒険者ギルドに向かいました。街内に残った蟻の掃討するチームを作るそうです。猫もそちらに同行しています』

 了解。まだ敵はかなりの数がいるから警告したほうがいいな。テイ、聞こえる?

『聞こえるにゃ! ゴートと冒険者ギルドについたにゃ! ゴートがギルドマスターと話をするにゃ』

 冒険者ギルドの周りの敵はある程度減らしたけど、まだまだ数が多いはずだ。そこら辺を考慮した人選をするように言ってくれ。あとオレに攻撃してくるなって事と極力近寄らないよう伝えておいて! 邪魔だし凹むから!

『にゃあ、確かに戦ってるシオは危険にゃ。でもあんまり大技を出すのはやめるにゃ。家屋に逃げ込んだ人がまだいるかもしれにゃいにゃ』

 気を付けるよ。

『お前は今どこにいるにゃ?』

 街の中央部のでかい建物の近くだな。視界が蟻で埋まってるくらい敵が多いからまだこっちには近寄らないようにした方がいい。

『了解にゃ! 伝えるにゃ!』

 オレはこの建物の周りの敵をある程度片付けたら蟻の追撃に向かうから、そっちの解放が済んだら連絡をくれ。オレも移動する前に連絡する。

『にゃ!』

 清蓮とテイツォに連絡を終えると、オレの体に強い衝撃が走って横側に吹き飛ばされた!
 
 くそっ! 突然なんだ!?

 側面に顔を向けると、そこには今までの蟻よりも二回り以上大きいサイズの真っ赤な蟻が3匹いた。
 その1匹がオレの体を顎で挟み込むと、オレを持ち上げる。

 重力魔法、解除!

 咄嗟に体の軽減を抑えて抵抗する、流石に重量オーバーだったのかオレを放す。
 オレは地面に落とされた後、再び重力魔法で体の重さを軽減させて姿勢を正す。
 真っ赤な蟻達がこちらを睨んでいるように見える。
 まあ蟻だから見られているだけなんですけど。
 一匹が体当たりを掛けてくる!
 動きが早く避けられない為、オレは赤蟻の顎を両手で抑え込んで踏ん張った。
 先ほどと違い吹き飛ばされなかったが、少し後ろに押し出された。
 足元が少しめり込む。

 アイスワールド!

 オレが魔法を発動する瞬間に、赤蟻は首を振るってオレの手から逃げるとそのままその場から飛びのいた。

 蟻ってジャンプなんか出来るんだ?

 静観していた他の二匹は近くの建物を顎で挟み込んで持ち上げる、そしてそれをオレ目がけて投げ込んできた。
 飛んできた建物を拳で粉砕する。しかし、その建物の影から先ほど飛びのいた赤蟻が顔をしならせて顎の側面でオレを薙ぎ払った!

 くそ、いい威力じゃねえか!

 重力軽減する間もなく吹き飛ばされて、建物を貫通して横の通りまで吹き飛ばされた!
 体にダメージはないが面倒だな。

 崩れていく建物の上から赤蟻が顔を出すと、尻を向けてオレに勢いよく振り下ろしてきた! 針が見える! 蟻に針なんか付いてるのか!

 オレの体に針は刺さらず、地面にめり込む!

 チャンス!

 拳を蟻のお腹にぶち込む! 甲殻を潰して腹の中まで腕が入る! お腹の部分は結構柔らかい!

 爆発!

 腹の中で炎の魔法を発動させて、赤い蟻のお腹が吹き飛んだ。
 まだピクピク動いているが、こいつはもうダウンだろう。

 オレは残りの二匹に目……のような空洞を向ける、しかしその二匹は踵を返してその場から離れていった。そして入れ替わるように大量の黒い色の通常サイズの蟻がオレに群がって来る!

 結局こいつらの相手か! アイスワールド!

 かなりの数に囲まれて圧し掛かられたタイミングで氷結魔法を発動し、オレの周りの蟻達を凍らせて片付けた。

 蟻達が凍り付き霧散してようやく視界が晴れると、周りに蟻達の姿は見当たらなかった。

『大半の蟻達が街から逃げていきます! シオ様! やりましたね!』

 清蓮か。

『はい。ジエイカンさんから遠くを見える魔道具をお借りしました。街中のほぼすべての地区から蟻達が撤退していきます!』

 わかった、逃げてない残った連中は……。

『そっちは任せるにゃ! 軍団でいにゃいにゃら地元の連中が踏ん張るにゃ!』

 オレはとりあえず連中が逃げてった先に行く。また戻って来た時は街中よりも外で迎撃したほうが戦いやすいからね。ついでに逃げて来る蟻を適当に片付けるよ。

『ゴートに伝えるにゃ! シオ!ご苦労様だにゃ! 蟻を追い払うにゃんてすごいにゃ!』

 かなりの数に逃げられたから、また来るかもしれないけどね。
 念のため見張ってるよ。夜通し動いてたんだから、みんなは適当なタイミングで休むといいよ。

『頼むにゃ!』
『分かりました、合流してから休みますね』

 こっち来るの?

『シオ様の近くが一番安全でしょうから』

 なるほど。
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