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第七章 ゴーレムと鯨と海底の都

第六十五話 ゴーレムはやはり止まらない

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 白い真珠のような色合いの障壁を抜けると、熱い歓迎がオレを待っていた。

『ゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!』

 火炎放射だ!なるほど、セルジアの言う通りだ。
 体にまとわりついていた海水が一瞬で蒸発した。
 オレは火炎放射を全身で受けながら、周りを確認する。
 結構な数の砲台がこちらに向かって炎を放っていた。
 炎の中をゆっくり歩き、一番近くにあった火炎放射を発射している砲台を掴むと持ち上げて他の砲台に投げつける。

『ボゴオオオオオオオオ!』

 炎が辺りに蔓延していく。

「な!この火力で溶けない氷牙魔人だと!」
「相当な上位魔人だ!炎を増やせ!」
「フレイムオクトパスも出すんだ!迎撃しろ!」

 んー?半魚人以外も結構いるな。あれが水魔族って連中か?
 オレは火炎放射を放つ砲台をまた掴んで、放り投げる。

「がああああああ!」
「熱い!焼ける!助け・・・」
「みず、水路に飛び込め!」
「あいつむちゃくちゃだあああああ!」

 無茶苦茶でごめんなさいね。
 オレは砲台を更に投げ込もうとすると、少し高いところから再度火炎放射を受ける。
 オレに火炎放射をぶつけて来ているのは・・・タコ?
 さっき言ってたフレイムオクトパスってやつか?
 水路の水を操作して、炎にぶつけてみた。

「嫌がってるぞ!炎をもっと増やせ!」
「火の魔石をありったけ持って来い!」
「魔石だけじゃ無理だ!魔晶石も用意しろ!」
「おら!タコども!もっと火吐け!」

 アイスピラーーーー!!!

『ズバババババババババ!』

 少し小さめの氷柱を広い範囲で落とす。
 ほれ、逃げれ逃げれ。
 頭に直撃でもしない限りこれなら死なないでしょ。

「氷の魔法だ!障壁を張れ!」
「奴隷ども!出番だ!」

 奴隷?ああ、結構な数の人魚さんが水路から顔を出した。
 みんな表情が硬いな。首輪は・・・やっぱりつけられてるか。
 張られた障壁に拳を叩きこんで障壁を吹き飛ばす!
 半魚人や命令している側の水魔族、たぶんあの肌が黒いエラ持ち人間がそうだろう。そいつら目がけて氷柱を落とす!

 アイスロック!

 地面に落下した氷柱と氷柱をくっつけて氷の檻を作成。これで半漁人やら水魔族やらを閉じ込める。
 
 氷結の槍!

 さっき考えた。
 氷の槍を手に作って、フレイムオクトパス目がけて放り投げる。
 これを食らったら一瞬で凍り付くぜ?

『ズバン!』

 ああ!タコさん貫通しちゃった!やべ、力加減ミスった!あ、でも貫通したところから凍り出してる!セーフ!
 貫通した先の建物に槍が刺さって凍りつきだしてる!誰もいませんよね!?
 失敗は成功の母と言うじゃないか!次はもっと慎重に。

『ズバンッ!』

 ああ、タコさん柔らか過ぎ!
 今度こそ!

『ズッバーン!』

 二度あることは三度あった!
 くそう、次だ次。

『ズバン!』
『ズバンッ!』
『ズッバーーーーーン!!!!』

 この力加減むじいいいいいいいいいいいいい!!!
 てかタコ柔らかすぎだ!
 槍鋭すぎだ!
 棒!棒状にして投げつけてやる!
 ・・・・・もうタコはいなかったよ。
 破壊されてもなお命令に従い障壁魔法をかけようとしていた人魚や海人族の連中の首輪を外して逃がすことにする。
 これでもう自由だ。一旦都の外に出そう。

「!」
「おお、ありがたい」
「お前は一体?」

 雷鯨セルジアの友人だよ。セルジアも外で戦っている。終わったら呼ぶから都の外で待っててくれ。

「念話!氷牙魔人ではないな?」
「私達の仲間がたくさん捕まっているんです!私達だけ逃げる訳には!」

 こっからもっと派手になると思うから。

「しかし」

 ほら、お客さんが増員だ。逃げるのが嫌ならせめて安全なところに。なるべくオレから離れててくれ。

「く、わかった」
「すまん!」

 オレの探知魔法の範囲に、遠くから大人数が集まってくるのが見えている。

「あいつ!奴隷共を解放してやがるぞ!」
「させるか!あの氷牙魔人を破壊するんだ!」
「もっと火の魔石を出すんだ!」
「フレイムオクトパスが凍らされてるぞ!相手は普通じゃない!火力を集中!」
『おお!』

 グラビティロケットパンチ!!

「ぐあ!」
「があっ!」
「ぐふっ!」

 オレは拳を発射させて、敵の一団。仕切ってた人とその前方を走ってた半魚人を、纏めて吹き飛ばした。
 オレは走りこんで(遅いけど)自分の拳を回収して腕に再装着。
 自分自身の周りの温度を氷点下以下まで一気に凍らせて、先ほど吹き飛ばした半魚人や水魔族の死体を氷漬けにして踏み砕く。

「ひい!」
「ば、化け物だ!」

 戦意を喪失して慌てて逃げ出す連中が出て来た。
 いいね、どんどん逃げてくれ。





「よお、お前ら。どこに行く気だ?」
「ひいっ」

 何かの骨で造ったのだろうか?刺々しい鎧を着て、鬼が持つような棍棒をてにした大男が出て来た。身長はオレと同じくらい、大男だ!首輪に鎖をつないで、何人もの人魚を引きづって歩いてきた。
 黒い肌で耳が尖っている。こいつは水魔族じゃなく普通の魔族か?それともダークエルフ的な種族でもいるのか?
 どっちにしても、ボスっぽい!
連れだって引きずられている人魚達は皆若い女性の人魚だ。全員全裸で首輪しかつけさせて貰えていない。
 オレの頭のどこかが冷え切った気がした。
 こいつは特に許しちゃいけないヤツだ。

「いやいや、どこに行ってもいいがよ?こいつが壊れる様をしっかり見てってからでもいいんじゃねえか?」
「だ、旦那!」
「行けるんですか!この化け物相手に!」
「当たり前よ!なあ!お前ら!!」

 男の声と共に、オレの歩いていた道の両脇の水路から20人もの水魔族の男が姿を現せた。
探知で気づいてたけどね。
 どいつもこいつも、同じような小ぶりの棍棒を持っている。その棍棒は火や雷などを纏っている。
 やっぱりオレは『氷牙魔人』と思われているようだ。
 見た事無いけど、そんなに似てるのかな?

「いいかお前ら!氷牙魔人ってのはこう壊すんだ!やれ!」

 周りの水魔族達が一斉に動き出した!
 どいつもオレに向かって武器を振り下ろす!
 効くか効かないかで言えば効かないだろうが、こええ!
 こんなおっさん達の群れに襲われるのはグランフォールの兵士に囲まれえた時以来だ。
 オレは障壁の魔法を張って、その攻撃を弾く!

「障壁魔法だと?人魚共!中和しろ!」
「「「は、はい」」」
 
 人魚達の顔が恐怖に引きつりながら、オレの障壁魔法に介入してくる。
 こんなことも出来るのか。だがそれでも障壁は切れない。

「何してやがる!さっさと中和しろ!」

 男が人魚の鎖を乱暴に引っ張って、その首を引っ張り上げる。
 ああ、こいつはダメだな。許せない。
 オレは障壁の魔法を解くと、全身をその棍棒で殴られることを甘んじて受けた。

「いいぞ!てめえら、欠片も残さずぶちこわせ!」
「「「「「おお!」」」」」

 鎖を手放した!
 オレはその瞬間を逃さず、男に向かって腕を振り抜く!

 グラビティロケットパンチ!!!!!

 過去一の速度を持って、オレの目の前にいた水魔族の男を吹き飛ばしながら奥の大男の体にオレの拳が吸い込まれていく!

「ぐぷっ」

 男の体に、オレの拳が叩きこまれそのまま大きな穴を開けた。
 拳は男の体を貫通すると、背後の建物を吹き飛ばした!

「なっ!」

 オレの周りに群がっていた男たちは、突然の事態に動きを止める。

 フレイムバーナー!

 最大火力で、しかも範囲を小さく一瞬にして発動。
 オレの周りの男たちの体を一瞬にして焼き尽くすと、炎の余韻も残さずに消し炭にした。
 地面に焦げ目だけを残し、男たちは消えた。
 近くの水路から、激しく蒸気が沸いている。

「え?きゃっ!」

 オレは周りを無視して、人魚達の首輪を解除する。
 もう大丈夫。水路の下に解放した仲間達がいるからそちらに合流して。

「は・・・い」

 オレは魔法の袋からスペアの腕を取り出して、大男の残った体を掴みあげて持ち上げた。

「てめ・・・・・氷・・・人・・・じゃ・・え・・」

 よく聞き取れないな。お腹に風穴を開けたからうまくしゃべれないのだろう。
 オレは持ち上げたその大男をゆっくりと頭上で握り潰した。
 赤い血しぶきがオレの体に降り注ぐ。

「あ、が・・・や。げは・・・・・」

 だんだんと声が小さくなっていく。だが男の生命力もすさまじく、まだ死なないようだ。
 周りにいた半魚人や水魔族が凍り付いてこちらに視線を向けてくる。
 ここで、一気にこいつらの戦意を挫く!
 オレは力いっぱい頭の上に持ち上げた男を握りつぶして、その血を頭から浴びた。

「ああ・・・・うあああああああああああ!!!」
「嘘だ!カースロード将軍がやられた!」
「勝てる訳ねえ!逃げろ!」

 辺りに悲鳴がこだまして、オレの周りにいた半魚人や水魔族達が一気に逃げ出した。
 原型も分からないくらいになった肉片を地面に捨てると、オレは自分の腕を回収する。
 これで大体終わったかな?
 その考えは甘かった。オレの体に真っすぐ、一本の槍が高速で降り注いだ!
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