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第六章 波打ち際のゴーレム

第五十七話 ゴーレム視察

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 オレはファイティングポーズを取って、手でバッテンを作って下がるジェスチャーをした。
伝わったかな?

「我らも戦えます!」
「森守様に危険なことはさせられません!」
「オレ達にあなたを守らせてください!」
「森守様!」
「「「「「森守様!」」」」」

 だーかーらー。いまから森に入るんですよ?もう夜なんですよ?一体何時間畑を解毒してたと思ってるんですか!夜の森は危険だって学校で習いませんでしたか!?学び舎っぽい場所もあったでしょ!?
 コボルトだっているかもしれないんだし!こんな人数守れません!大体、汚染の原因が動物だったら追いかけなきゃ行けないんだから。人数多かったら逃げられちゃうかもでしょ。言っとくけどオレ足遅いからね!生身の頃の方が早かったくらいだからね!
 オレは両手でバッテンを作って再度下がれとジェスチャーを両手で行った。
 どうやって説得しようか。やっぱり口が欲しい。



 結局実力行使にすることにした。
とは言っても乱暴するわけのもいかない。
ということで、全員並べることにした。
並べ並べ!と指で地面を刺して腕を大きく左右に振った。
おお、通じた通じた。
次に一人一人の間隔をもっと広げさせた。
両手でこう、手のひらを外に見せて閉じて広げて閉じて広げて。
上手く通じたので満足。オレの頷きにみんなも安堵の表情を浮かべる。
オレがしゃべれないのも大変だけど、みんなもオレが何を伝えようとしてるのか必死に考えてくれているみたいだね。うん、協力的でいいよ。みんな好きになりそうだ。

オレは水の魔法を使い拳大(オレの拳の大きさ)の水玉を大量に空中に作った。そして投げ飛ばした。

「うわっ!」
「つめた!」
「ええ?」
「せいっ!」
「ふっ!」

うん、避けられたのは3人だけですか。
オレは3人を指さして手招き。残りの連中にはシッシッと手を前後に振った。

「森守様は足手まといはいらないとおっしゃっている。ここは大人しく下がってくれ」
 
ジュード!いい仕事するじゃねえか。
ちなみにジュード君は合格しました。素晴らしい身のこなしでしたね。
あとこの間怪我しちゃった子。回復魔法で治してもらったのかな?すでに足には包帯もない。

「人狼族のシェーンです!先日は有難うございました!せめてもの恩返しが出来ればと思います!」

背筋を伸ばして、挨拶をするシェーン。うーん。背も高いしスタイルもいいね。長い金色の髪は清潔感ただよう美人さんだ・・・男じゃないよね?
水の玉を刀で見事に半分にしていました。太刀筋見てないけど、あの一瞬で刀を抜く素早さは申し分ない。

それとさっき名推理した人間の男の子。こいつは唯一障壁魔法で攻撃を止めたから採用。オレが使えない回復魔法使えたら申し分なしですね。

「僕はライオットです、村では魔法師をしております。僕に治せなかった病を治して頂きまして有難うございました!」

背丈は低いけど、比較的近い距離からの魔法攻撃を一瞬で防いだ判断力と魔法の発動速度。いいですね。聞けばシェーンの足の怪我も治したのは彼らしい。
攻撃魔法は使えるのかな?
オレは手の平に発火魔法を撃つと、首を傾げた。
通じるかな?

「攻撃魔法は習得出来ていません。魔法使いは貴重ですから生存と生活を優先した魔法のみ使用可能です」
 
 むう、役に立つか微妙になってきた。
 でもジュードとシェーンが怪我した時に、治してくれる存在は有り難い。
 でもライオットが怪我したらと考えると、むむむむむ。

「回復魔法は我も弱いが使用出来ます。この者も大掛かりな狩りの時には森の中を共に歩き回る故ご心配召されるな」
 
 オレの悩みを察したのか、ジュードが言ってくれた。
 まあそれなら平気か。
 でも流石に夜ですから、今日行くのはやめにしようか。
 やはり身振り手振りでそれを教えると、3人とも頷いてくれた。

 オレ達は明日、森に向かうことになる。
 同行出来ないメンバーは明日、この麦畑を整える作業をさせるらしい。
 結構動き回ったので、麦踏み荒らしちゃいました。貴重なご飯ですからね。ほんとごめんよ。



 広場に寝っ転がってたオレに子供達が群がってきてた。
 屋根のあるところが落ち着かない訳じゃないですよ?以前にも少しありましたが、実は少々疲れてました。村の畑を丸々解毒したからでしょう。
 いつの間にか人気者です。でもお年寄りの人たちが気を遣って離してくれます。オレ重いから危ないもんね。子供は嫌いじゃないけど、お年寄りたちはもっと森守様を敬えって言い聞かせています。

「おはようございます森守様」
「お待たせいたしました」
「僕たちはいつでも出られます」

3人とも無事に合流。集合時間なんか決めてなかったけど、皆さま真面目に朝一番に集まってくれました。出発しましょうか。
3人をお供に、一旦村の外に。おお、探知が使える!感知もいける!
詳しくはわからないけど、村はツタが生い茂っていて中に入れないような森に見える。その侵入出来ないような森を覆うように散白石の塀が張り巡らされているから村の場所が分からなくなることはなさそうだけど。



浜辺の方向はコボルトとの遭遇が考えられるので、ジュードの案内の元比較的近場の狩場に向かうことになった。

「我々が良く口にするラビットベアの生息地域です」

 ラビットベア?わあ、どっちかなあ・・・まあこのパターンはベアだよなあ。

「いました、ラビットベアです」

 声を潜ませながら、ジュードが教えてくれる。
や、別に狩る訳じゃないから隠れなくてもいいよ?
 そこでは熊のような大きさのウサギが木を蹴り倒していた。
 オレと同じくらい・・・オレ熊サイズだもんね。
予想が離れました。しかし足腰強そうだ。
 蹴り倒した木の葉をむしゃむしゃと食べている。
 上から眺めてたウサギのご飯のシーンって可愛かったけど。下から眺めるとすごい光景なんだね。前歯堅そうだ。
 感知を使っても、特に反応は見られない。

「少し大型ですが、仕留めましょうか?」

 いらなそうかなー。
 感知には引っかからないから今は倒してもしょうがない。
 オレは首を振ると次の狩場に足を運ぶことにした。
 シェーンが少し残念そうだ。耳が垂れててしゅんとしてる。
 あいつ美味しいのかな?



 次は少し深めの森、といっても木々の先からまだ浜辺は見える。
 ここら辺ではイノシシやネズミなどが捕れるらしい。
 オレが木々を避けながら歩くから、進行速度はかなり遅い。
 ご迷惑かけてすいません。
 小型の動物だから、オレに反応してすぐに逃げ出してしまう。
 感知の範囲に入ってきてくれないのが難点だ。
 感知よりも広い範囲で調べられる探知の魔法を使おう。
 
今更ながら説明すると、探知魔法は把握できる範囲内の物の形が分かる魔法だ。頭の中に3DMAPのようなものが浮かぶ。
 それに対して感知の魔法は、対象を絞ってそれがどこにあるか分かる魔法だ。
 併用して使うと、MAP内に赤い点などマークが生まれるイメージかな。
 グランフォール王国を破壊した時は大き目の魔力を有する物を感知するために。
 砂漠越えの時には生き物が付近に近づいて来たら分かるように感知を使っていた。
 サソリは小さすぎたせいで感知に反応しなかったようだ。
 探知も感知もおおざっぱなので、ある程度大きい生き物が動かないとはっきりとは分からない。しかし、感知の場合対象を絞り込めばある程度の情報が手に入る。
 探知の魔法で対象を探し、感知で調べる方法を取るのが今回は正しいかな?



 探知を凝らして生き物を探し、引っかかったら近づけるだけ近づいて感知で毒を調べる。
 毒をもっている生き物が、結構いて困った。
 これはもしかして、もっと根本的な部分に毒の原因があるのではないだろうか。生き物でも植物とか怪しいね。
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