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幕間章 神官テイツォは猫弁でしゃべる

神官テイツォは猫弁でしゃべる③

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「良く戻った。勇者アイレウス」
「はっ、ですがジョルド国王。自分は勇者などと呼ばれる器にはございません」

 謁見の間にゃ、出発したときよりもずいぶん豪華ににゃっているにゃ。

「お主の働きは、十分に勇者と呼ばれるものだと思うがな。青い月の神官テイツォもご苦労であった、良くアイレウスを守り共に帰ってきてくれた」
「ありがたいお言葉ですにゃ、光栄ですにゃ」
「うむ。だがあれも一緒に戻るとは・・・ちと想定外の事態だな」
「申し訳ございません。あれを止める力が、自分にはまだ・・・・」
「構わん、あれを止めれる人間がいないのは十分にわかっておる。それで?」
「ご報告致します。赤い砂漠の更に奥、ポイット村の外れの原始の森にてあれの作られたと思しき工房とあれの製作者を発見致しました」

 アイが国王に報告を始めたにゃ。
 国崩しの工房と思しき場所を見つけたこと、そこにいた製作者と思しき人間を退治したこと。
 その工房を調査して、他に人が住んでいる気配がなかったこと。工房の中で神々しいまでの金属や見たことのない器具を見つけたことにゃどにゃど多岐に渡ったにゃ。

「あれはやはり、人の手で造られたということか」
「あのゴーレムの製作に使ったと思われるレポートのようなものを見つけました。見たこともない字で書かれていますが、念のために持ってまいりました」
「真か!」
「は、お納めください」
「よくぞ、よくぞやってくれた。これが解析出来ればこの国は安泰だ」

 それは国崩しを作るつもりってことかにゃ?そんなことが出来るのかにゃ?そもそもゴーレムはドワーフの国の専売特許にゃ。技術は手に入っても再現出来たという話は聞いたことにゃいにゃ。

「・・・・して、あれは今何をしておるのだ」
「自分の仲間であり師『蛮勇のゴート』が付いております」
「報告によると、街の中を闊歩してゴート殿の指示に従い瓦礫の撤去を行っているようだ」
「は?」

 アイが驚いた顔をしているにゃ。にゃーも驚いたにゃ。でもゴートの言うことは旅の間も聞いてくれていたにゃ。深く考えることでもにゃいのかもしれにゃいにゃ。

「・・・旅の間、あれはこちらの言葉を聞いていました。正直、あれのおかげで砂漠も走破出来たと思っています」
「お主ら、赤い砂漠を渡ってきたのか!確かに・・・・ポイット村からこちらに戻るまで、日にちが合わないとは思ったがまさか・・・」
「あれがこちらに戻る意思を示し、そのまま砂漠越を行ってしまったので・・・危険だとは思ったのですが仕方なく」
「うむ、すまぬ。恐ろしい旅をさせてしまったようだな」
「それも、あれのおかげで無事突破出来ました。命を助けられました」
「あれが、人を助けるのか」
「はい、あれはゴーレムです。この国を襲ったのも製作者である主人の指示かと。その主人がいない今、何を思って行動しているのかは不明ですが」

 王が難しい表情を浮かべているにゃ。国に壊滅的な被害を貰たしたゴーレムが人助け、とはにゃんとも繋がらないはにゃしだとはにゃーも思うにゃ。

「・・・わかった。今日はもう下がれ。ゆっくり休んで旅の疲れを癒すがいい。テイツォもだ、あとで褒美をとらそう」
「「ははっ」」

 緊張したにゃ。でもご褒美は嬉しいにゃ。

「テイツォ、ありがとう」
「にゃあ、大したことにゃいにゃ」

これでアイとの旅もおしまいにゃ。こいつは単純にゃけど、気持ちのいい奴にゃ。もう仲間にゃ。

「また何かあったら教会に応援を頼むよ。その時はよろしく頼む」
「任せるにゃ!アイはそそっかしいにゃ、にゃーが助けてやるにゃ」

 アイは苦笑すると、手を出してきたにゃ。
 握手にゃ。
 ひとまず教会に戻るにゃ。司祭様にも挨拶にいくにゃ。





司祭様に報告にいったにゃ。
あとでアイにも話を聞きに行くつもりだそうにゃ。にゃーの報告に不満がありそうだったにゃ。まったく相変わらずけしからん男だにゃ。
国崩しが瓦礫の撤去を行っていると話を聞いて、あとで様子を見に行くことにするにゃ。旅の直後ということで、しばらく教会のお仕事はお休みしてていいとのことだったにゃ、ご褒美にしては弱いけど休んでいいということで好きに行動するにゃ。
教会の寮に帰り、普段着に着替えるにゃ。
でも久しぶりにベッドで寝たくなっにゃ、今日はそのまま寝ることにするにゃ。
ああ、ご飯も食べたいにゃ。教会のご飯は量が少ないから街に下りていっぱいだべるにゃ。旅の途中で稼いだお金と今回の報酬で懐はあったかいにゃ。お魚が食べたいにゃ。
下層の冒険者向けの酒場に行くことにするにゃ。ここの食事はいつも大盛りにゃ。

「久しぶりにゃ、魚定食大盛り頼むにゃ」
「おおテイちゃん!久しぶり!帰って来たんだね、よかったわー」

 マスターの奥さんがにゃーの顎下を撫でてくれたにゃ。ふにゃあ、相変わらずてくにしゃんだにゃ。

「お帰りテイちゃん。ご飯か?」
「そうにゃ。今日帰って来たばっかりだったから贅沢するにゃ!」
「うちの食事を贅沢って言ってくれるのはテイちゃんくらいなもんだ。待ってな!飛び切りのを食わせてやる」
「にゃあ!楽しみだにゃ!」

にゃーは久しぶりに、あったかいご飯を満喫したにゃ。

「国崩しがまた出たらしい」
「ああ、聞いたぜ。瓦礫の撤去を行ってるらしいな。何を考えているんだか」
「考えてなんかないだろ?蛮勇のゴートが命令しているらしい。主従の契約を結んだんじゃないか?」
「だとしたらいいんだけどな。あいつがまた暴れ出したら、今度は俺も街を去るぜ」
「そうだな、今のうちに荷物を纏めておいた方がいいだろう」

 国崩しの噂が広まっているにゃ。まああいつ目立つから仕方にゃいにゃ。

「テイちゃん、私たちは大丈夫かしら?」
「大丈夫にゃ。国崩しはもう国崩しではにゃいにゃ」
「は?」
「あいつは国にゃんか崩さにゃいにゃ。いい奴にゃ」

にゃーの一言に酒場が凍り付いたにゃ。

「何言ってんだ獣娘?国崩しだぞ?わかってんのか?」
「お前らこそ分かってにゃいにゃ。にゃーはあいつの心に触れたにゃ。あんにゃかにゃしみを持つヤツが自分から暴れ出すわけにゃいにゃ」
「でもゴートが操ってるんだろ?なら・・・」
「それこそにゃ、あの人は確かに魔族にゃ。でもあの人が見境なしにその斧を振るってきたとでも思うのかにゃ?ただの殺戮者がにゃをはせられほど、冒険者の世界は甘いのかにゃ?」
「それは・・・」
「ごちそうさまにゃ。美味しかったにゃ。また来るにゃ」
「え、ええ・・・テイちゃん。その、本当に大丈夫なのかしら」
「大丈夫にゃ。にゃーが月に誓うにゃ」

 あいつはもうにゃかまにゃ。にゃかまの悪口は聞いてて気持ち悪いにゃ。むかつくにゃ。今日は家に帰って寝るにゃ。
 にゃ?国崩しの様子を見に行くの忘れてたにゃ。まあいいにゃ明日にゃ明日。
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