上 下
34 / 115
幕間章 勇者の弟子、アイレウスの葛藤

勇者の弟子、アイレウスの葛藤②

しおりを挟む
最初はお城。
城の中の宝物庫には大量の魔石や魔武器が眠っている。そこを狙われたらしい。
次は城内の主要施設。
重犯罪人を確保していた魔牢や、他国との連絡手段として用いられていた対話水晶。
王室の守備を行っていた結界魔法の地点などが破壊されたらしい。
そこが終わると、ゴーレムは城下町に下りてきた。
王立魔法研究所。
王立騎士団本部。
王立騎士団養成所。
魔道ギルド。赤・青・緑・黒のそれぞれの教団本部。錬金術ギルド。冒険者ギルド。
マフィアの隠れ家や、奴隷商人の館。大きめの道具屋。武器屋。
とにかく王国のシステム中枢を壊滅的に破壊して、その瓦礫を漁っていた。
その後は、国内に入り込んだ魔物と壮絶な戦いを繰り広げていた。
グランフォール王国は防御の要となる国だった。
背後に連なるカオス連峰、さらにその背後に位置する邪龍の巣窟『死を降らす山』そこには人間では到底歯が立たないような、凶悪な魔物が数多く生息している。
王国という結界が、山から人里に巨大な魔物が降りて来ないように防いでいたのだ。

しかし、白の大壁の一部が破壊され結界に綻びが生まれた。
そのせいでかなりの量の魔物が城下町へと侵入してきたのだった。
数十体にも、数百体にも上る魔物達とゴーレムの戦いは壮絶を極めた。
あのゴーレムは昼夜問わず戦い続け、ことごとく勝利していた。
自身の数十倍もの大きさを誇る魔物や魔獣、魔龍を相手に一歩も引かず。
己の体のみを武器として戦うその姿は、凄惨を極めた。

いつしか、魔物達も諦めたのか下山しなくなる。そのうちゴーレムは動きを止めた。
そしてゴーレムは襲撃から3カ月後、城下町から真っすぐ西へと姿を消したのだった。
多くの兵士や冒険者達が追跡を行ったが。赤い砂漠にゴーレムが足を踏み入れた時、大半の冒険者達は追跡を断念した。
命令に忠実な兵士達も、赤い砂漠で犠牲になったらしい。
赤い砂漠は直線距離であれば1週間もあれば、横断出来るらしいが危険が伴う。
千人単位の人間が協力して横断を開始して、全滅するかしないかで砂漠を突破出来るかどうかといったところ。そんな場所だ。
追跡に成功した者は、いなかった。
しおりを挟む

処理中です...