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第三章 解き放たれるゴーレム

第三十一話 ゴーレムと冒険者

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「国崩しが・・・膝を折った?」
「三か月間もの間、休むことなく破壊の限りを尽くした化け物が・・・どういうこと?」
「にゃにがにゃんだか・・・」
「だが、今が好機かもしれない」

青年が折れた剣をオレに突き付けてきた。

「だめ!」

その間に立ったのは、またしてもあの女の子だ。

「メル。そいつは危険だ」

メルって言うらしい。
そうだろうな。でもごめんな、いまは体が動かねえ。
膝が笑っちゃってる。錯覚だろうけど。

「でもだめ」
「メル、言うことを聞いて?」
「メルもパパも助けてもらった!」

その言葉にエルフの女性と、戦士の男が表情を曇らせる。

「だがそいつは先生を殺したんだ!先生の仇なんだ!」
「にゃあ、確かにこいつを野放しにするのは危険だがにゃ・・・」

そう思うなら破壊してくれよ。オレもう満足だよ。

「だめ!」

メルがオレの体によじ登ってきた。
流石にこれはオレも慌てた。
オレは体を起こして、優しくメルを抱き上げて地面に降ろすことにした。

「こいつ・・・」

青年の剣が少しだけ下がった。
この男、勇者の横にいた子供か。
結構でかくなったな。何年経ったんだ?
イケメンに育ちおって。

「お前は・・・一体」

念話は通じるかな?気が付いたら使えるようになってたから試してみるか。

「魔力反応?!何をする気だ!」

メルを除く全員が武器を構えた。
警戒されてしまったか。

「コレは・・・念話だにゃ」

猫耳神官には伝わるのか?
通訳頼めるか?

「んー、漠然とした感情にゃら読み取れるにゃ。これは、悲しみと喜びだにゃあ」

会話は成立しないのか。
オレは肩を落とす。

「妙に人間臭いな。よく出来たゴーレムだな」
「そりゃあ、『国崩し』ですもの。良く出来てるんでしょ?」

エルフの女の人がオレの体を手の甲で叩いた。

「パパ?」
「前に言ったでしょ?この村も昔、国崩しに救われた過去があるのよ?」

救われた?

「オーガの群れに襲われた時。君、私のこと村に送り返したじゃない」

ああ、そういえばそんなことした気がするな。

「あの時は助かったわ。オーガの群れの足を止めたのも君でしょ?あの数のオーガに襲われたら村は半壊か、最悪全滅してたもの」

ホブさんそんなに強かったのか。ああホブじゃなくてオーガだっけ。
オーガロードってのもいたんだよな。

「だがこいつは先生を殺したんだ!兵士や街の者も!」
「石をにゃげただけの子供を攻撃したって聞いたにゃ。ごくあくひどーだにゃ」

ああ、そうだな。そうだったな。

「国中の兵士が束になっても勝てなかった。城内にいた兵士たちの半数以上は死体すら残らない有り様だったらしい」

戦士の男がオレに斧を向ける。

「だが、俺たちを攻撃しないのは何故だ?」

何故も何も、元々攻撃なんてしたくなかったし。
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