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第二章 悪逆非道、邪悪なゴーレム

第二十一話 ゴーレム、勇者を圧倒する

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「あの硬さ、それに魔法の威力。尋常ではないな」
「先生もそう思いますか」
「ああ、これは避難の時間稼ぎに徹した方がいい。ゴーレムなら受けてる命令も単調だろう。『王族を皆殺しにしろ』とかだと洒落にならんが」
「どうすれば」
「相手は動きが遅い。近接戦闘で翻弄するぞ!手でも足でも攻撃をして弱点になりそうな場所を探すんだ」
「はいっ!」

アイレウスが剣をオレに振り下ろす。オレはこれも体で受ける!防御なんかしない!壊せるんなら壊してくれ!

「お前!なんでこんなことをする!」

聞かれてもしゃべれねえよ!

「だんまりか・・・・」

アルドとアイレウスの剣は何回もオレの装甲を撫でている。だが、深い傷は入らず細かい汚れが増えるばかりだ。
オレも無抵抗ではない。腕を振り回し、アルドを捕まえようと追い回す。

「どおおおおおおおおりゃあああああ!」

アルドがオレの腹に思いっきり蹴りを入れる!
オレの体が一瞬だけ宙に浮いた。
なんつう脚力だ。
アルドはそのままオレの足を払いバランスを崩させる。
上手い!このまま押さえつけろ!
オレ自身の体が熱を帯びた。
これは・・・まさか!

「離れろ!」
「はい!」

アルドとアイレウスは一緒に後方に飛び上がる。
オレの全身は強力な炎に包まれていた。
オレはゆっくりと立ち上がる。

「すごい熱だ」
「これがフルパワーか?」

まだだよ!だから逃げろって!
オレを中心に大爆発が起きる!

『ドゴオオオオオオオオオオオン!』

自分を中心に爆弾でも爆発したのではないのかと、そう思えるほどの広大な範囲に爆炎が広がっていく。

「ぐうっ!」
「先生!」

アルドは盾を構えてその爆炎を避けた。
アイレウスはアルドの後ろで、その背中を抑えながら回復魔法を放つ。
爆炎が収まると、オレの中心から何もかもが消し飛んでいたかに見える。
いや、二人は無事だ。

「くっ、はっ」

アイレウスが倒れこむ。こいつはもうだめだな。念動で遠くに飛ばそう。

「小僧!」
「せん・・せい・・・」

呟きを残して戦線離脱。その光景にアルドが目を見開く。

「お前がやったのか・・・何故?」

殺したくねえからだよ!今の爆発で何人死んだんだよ!数も数えられねえ!
アルドも念動で動かそう、片膝でやっと立っている状態なら邪魔にならないだろうけど。それでも攻撃して来たら倒さないと行けなくなる。こいつらじゃオレに傷をつけるのが精いっぱいだ。

「戦うまでもないということか!木偶人形が!舐めるなよ!」

オレの念動を引きちぎった!こんな力がまだあるのか!

「我が魂のすべて!叩きこんでくれる!」

アルドの持つ剣が黄金に染まる・・・いや、アルド自身が黄金の光に包まれだした。

「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

アルドの体を覆う光が安定すると、その光がすべてその手に持つ剣に集約された。

「受けよ!我が最高の一撃!」

男が飛び上がると、オレに向かってその剣を振りかざした!
オレの肩口に剣が当たり、その剣先が大地を両断する!
その威力に『聖剣』と呼んでいたその剣の刀身にもヒビが走る!
・・・・オレの肩口には、剣が少しだけ食い込んだだけだった。
ダメか!
オレは左腕を前に出してアルドの体を掴む。

「ぐう、クソ」

離せ!もういい!こいつにオレは邪魔出来ない!
ミシミシと音を立てて、アルドの着ていた純白の鎧から金属片が剥がれ落ちてくる。
ダメだ!ダメだ!!!!ダメだああああああああ!!!!!!!
嫌な音がした。



オレの手の中で、勇者アルドの体が握りつぶされた瞬間だった。
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