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第二章 悪逆非道、邪悪なゴーレム

第十九話 侵略者『ゴーレム』

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『ゴオオオオオオオオオオオオン!』

『オレ』の拳の一撃で、市街地を守る外の壁の一角が吹き飛んだ!
くそ!やめろ!
『オレ』の歩みが止まらない!
建物があれば建物を破壊し、真っすぐ。ただ真っすぐに
人がいれば・・・人も踏み越えて真っすぐに。
くっそ!逃げろ!逃げてくれ!
ここにきて分かった。オレのボディは異常だった!

「いたぞ!食い止めろ!」

やめろ!邪魔するな!
勝手にオレの手から火炎放射の魔法が発動する。
一瞬にして、衛兵と思われる格好をした男たちを炭へと変えた。

くそっくそっ!

「3班!4班!左右に展開!回り込んで攻撃だ!」

近寄るな!逃げてくれ!
衛兵の男たちがオレに剣を叩きつけてきた!
その剣はことごとく折れて先端が宙に舞う。
その折れた剣の先端を『オレ』は念動の魔法で操作してそのまま男たちの首筋に刺した。
吐き気はしない。胃が無いからだ。
目を背けることも出来ない。瞼がないからだ。
顔を背けようとしてもそこら中に人間がいる。
男たちの絶望的な表情がオレの目をとらえる。
しゃべれれば!逃げろと!邪魔さえしなければ攻撃はしないと!
ただそれだけでも伝えたいのに叫びたいのに、口が無い。
悲鳴がそこら中から聞こえる。
耳を塞ぎたいが両手は魔法を撃つのに使っている、人体を引きちぎるのに使っている!
オレの意思が一つも介入出来ない。『オレ』が勝手に動く。
間近にいた男の体を腕で軽く振り払う。
それだけでその男の体はひしゃげて横に飛んでいった。
道も関係なく、真っすぐに城に向かう。
広場に出た。

「全員構え!撃て!」

左右正面から魔法の光が飛んでくる。
あまりの種類の多さに、どんな魔法が飛んできているのかもわからない。
オレの体にどれも直撃する!

「これで壊れろ!」

そうだ、壊れろ!!

頭ではそう思うが、はっきり言って壊れる気がしない。
魔法を弾いている。オレの装甲は魔法が効きにくいらしい。
爆炎と砂煙と轟音の中、『オレ』は歩みを止めずに爆裂火球の魔法をそこら中に解き放っていた。
くそ!勝手に魔法も出る・・・歩くのも止まらねえ!
ジジイの命令だ。

『真っすぐ城に』『邪魔者は消せ』

くっそおおおおおおおおおおおお!

粉塵も収まらない中、人々の悲鳴と怒号が世界を支配する。
広場を抜けた先には、城が見える。

「通さん!」
「破壊する!」

来るな!
オレは障壁の魔法を広く張った!
成功だ!
障壁が邪魔をしてオレの歩みの『邪魔』が出来なくなった!
これなら『邪魔者』にならない!
近寄れないし、魔法も飛んでこない。
何人殺したかわからないが、とりあえずこれで平気だろう。
相変わらず歩くのは止まらないが、これで足止め出来るはずだ。
『オレ』が一歩歩くごとに、前にいた衛兵達が押し出される。
よし!いいぞ。

「障壁を破壊しろ!あのゴーレムに止めるんだ!」

余計なことをするな!見逃せ!近寄るな!

「おおおおおおおおおおおおお!」
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