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第二章 悪逆非道、邪悪なゴーレム

第十八話 ゴーレム、城に辿り着く

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今晩はみなさん。オレです。
志雄です。ゴーレムです。
困りました。
何が困ったかって?
無事、お城の見える位置に到着しました。
この間の村での一件で、やはり人里は危険だと判断して人里の近くは森の中などをそそくさと移動してようやくたどり着きました。
砂漠地帯でサソリに襲われ。
山岳地帯で巨人に襲われ。
森林地帯で獣に逃げられ。
寝る間も(必要ないけど)惜しんでただただ歩み。
一日中どころか、もう10日近く休みもせずに疲れた(疲れません)体に鞭打って。
文句も言わずに(口がないです)目的地が見える位置までたどりつきました。

見てください。この絶景!
天をも貫かんばかりの高い山の麓!
そびえ立つは雄大な古城!
石造りの建物が連なる古い街並!
まさに中世ヨーロッパが舞台のような、あのファンタジー世界が広がっている!
そこかしらから喧噪が聞こえてくる賑やかな城下町!
めっちゃ人いるじゃねえか!過去一だよ!今までの村の中で一番の規模だよ!どうすんだよ!
古くからある城っつったから廃城だと思ってたよ!!
これ、あれだろ!もう首都!!国の中心!
城下町こっから見てもギリギリ端から端まで視界内に納まんないからな!
何万人住んでんだ!ここに一人で城に乗り込んで死体漁りとか不可能だろ!
・・・・帰るか。
爺さんに無理でしたって言えばいいべ。
・・・・・・・ダメだ、足が動かん。
うああああああああああああああああああ!!!!!!どうしよう!
とりあえず城下町の検問までいっとく?
順番待ちの列出来てますけどね!
そして多分、色々聞かれたりお金払ったりして中に入れるか入れないかみたいな感じなんでしょうね!
無理だよ、こちとらクチナシですよ!しゃべれませんよ!?
お金もないですよ!
順番待ちにゴーレムとか普通に並んでないかなあ・・・並んでないなあ。

『そろそろ見つかったかの?』

おお、爺さんちょうどいいところに!てか近くにいるのか?

『儂とお主は魂でつながっとるからの。距離も種族も関係なしに念話が可能なんじゃ』

そうなんだ!てか爺さん!城に入れねえよ!

『お?なぜじゃ?』

検問!普通に入れないでしょ?オレ、ゴーレムだよ!

『なんじゃ、そんなことか』

そんなことって・・・普通に通して貰えるのかよ。

『当然じゃ、お主は儂の最高傑作じゃ。簡単に通れるわい』

なんだよ先にそういうことは教えておいてくれよ。

『そんなことで10日も費やしてたのか。まったく無益な時間を過ごしおって』

悪かったって。

『まあ、確かにお主は人間じゃったからの。こういう自体は避けたいと思うのは当然の思考か』

は?何を言ってんだ?

『じゃが儂の悲願でもある。早急に『魔龍神の躯』が欲しいのじゃ』

ああ、それを取りに来てたんだよな。

『そうじゃ、そしてそれを入手するためにお主を作ったんじゃからの』

は?

『今すぐ外壁を破壊して市街地に入れ、真っすぐ城に向かい『魔龍神の躯』を取って戻って来い。邪魔者はすべて消せ』

ちょ、体が・・・。
てめえ!

『ふぇっふぇっふぇっ、早めに頼むぞい』

この悪党がああああああああああああああ!
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