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第三章 決闘を前に

第四十七話

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ミルフェスは大いに警戒していた。その成果か単純な取り越し苦労だったのか、金曜日は何事もなく午後のクラスごとの授業の時間になっていた。
光とミルフェスは活動内容を知らないため、とりあえずSクラスのメンバーが集まるプレハブ小屋まで足を運んでいた。

「お、ちゃんと来たね。感心だ」
「授業だから普通くるでしょ」

本当に感心していたのだろう。ベルはツッコミを入れてきたレオをじと目で睨んだ。
実際問題、今現在この場にいるのは光とミルフェスを含めて5名である。

「ええと、今日は金曜日ですか。どうも長期休みのあとだと曜日感覚が狂いますね」

そんな視線を受け流しつつ、レオが言い訳がましく言葉を綴る。

「普段は金曜日にどんなことをしていらっしゃるんですか?」
『基本的に反省会だな』

ミルフェスの丁寧な質問にセシルが答えた。相変わらずフル装備である。

『毎週月曜日と木曜日に大掛かりな作業というか、任務があってな。火・水・金曜日はそれぞれの反省会や、その反省を生かした訓練を行っている』

昨日ぼかされた活動内容のことをいっているのだろう。光とミルフェスは怪訝な表情を浮かべた。

「シルフィと美鈴は揃って射撃Aクラスの手伝いに呼ばれたよ。だからこれで全員だね」

事前に話が通っていたようで、ベルは投げ出された足をばたつかせながらつまらなそうに告げた。短いスカートが少しばかり暴れている。

「それじゃあ・・・とりあえず今日のところは、それぞれ基礎訓練を個別にすることにしませんか?組んで体を動かしたい人がいれば適当に組んでもいいですし」

そんなベルを見ないようにしながら、レオが提案をする。その言葉に3人が首を縦に振った。

「じゃあそういう方向で、クーラーボックスに冷やした飲み物を入れておきますから必要な方は適当に持っていってください。テーブルの上に置いておきますね」

レオは言いながらプレハブ小屋に向かっていった。本当に気配りの出来る良い好青年である。
光はプレハブ小屋から少し離れたところで素振りを始めることにした。
光は八房の柄に手をかけると魔力を込めた。突如空中に刀が生み出される。
分剣複牙である。生み出した刀を持たずに虚空で刀を振るう。
分剣乱舞。八房の持つ能力の一つで、生み出した分剣を自在に操作する能力だ。
オリジナルの八房は手で振るわなければならないが、分剣は手で持たずに光の思うままにコントロールすることが出来る。
光は刀を持たずに、両手で刀を持っているように手を前に出して刀を操作した。
刀の軌道は光が普段手に持って扱う刀と同じように、光が腕を上下させるのと連動するように刀も上下する。
何度も何度もそれを繰り返し、光は腕を振るうのを止めた。
背筋を伸ばし、姿勢良く。光はまっすぐ立って虚空の刀を操作する。
今まで手の動きに合わせて動いていた刀だが、同じ軌道を上下し続けている。
腕を振るわず、体を動かさずに頭の中で刀を操作。
光は刀を追加した。虚空からもう1本刀が出現、光の手前で刀が止まる。
光はその刀も操作し始めた。
二本の刀が光の意思を受けて右に、左に。上に下にと、さまざまな角度で空中を動き回った。
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