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わくわくのダンジョン研修

第28話 わくわくのダンジョン研修 2

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「えい」

 ゆっくりとした動作で近づいてきたスケルトンが、手に持った箒で私に殴りかかって来た為、複雑骨折にします。
 早々に倒れ伏すと、スケルトンは薄まり箒を残して姿を消しました。
 部屋の端っこでスケルトンが復活を果たします。
 復活したスケルトンが地面に落ちた箒を拾うと、再び私に殴りかかって来ました。

「えい」

 私は再び、スケルトンを破壊します。

「困りましたね、裏口から入れば攻撃されないと聞きましたし…去年も一昨年もこんな事無かったと思うのですが」
「そうだな、多分だが…あの子が人間なのが原因じゃないかな? ダンジョンの経営者側に人間が関わる事なんてないからな」
「あれ? ですが表口の受付の方達や売店の売り子さんなんかは人間界からのアルバイトだったり社員だったりしませんでしたっけ?」
「そうなんだが、彼らは裏口側には来ない。経営側にも関わらせてないし、問題があるといけないからモンスターの居住エリアから離した人間界側の出入り口周りの施設しか利用してないんだ」
「ですと、やはりダンジョンの機能が原因ですかね」
「すまんな。ダンジョン組合発足以降は配布されたマニュアルを元にダンジョンを作っているからその辺はよく分からないんだよな。Q&Aにも載ってなかったし、親父に聞いても知らないそうだ」
「ですか。佐々木くん、ちょっといいですか?」
「はい」

 問題の私が呼ばれました。
 そうなんです。先ほどから私だけが、清掃スケルトンやお茶汲みスケルトンに攻撃をされています。
 先生やダンジョンマスターさんが挨拶と説明をしている最中に横合いからちょくちょく殴ってくるわけでして、都度都度手加減して殴っているのですが、彼らは余りにもカルシウム不足のようで簡単に骨折します。

 ここでは別にいいのですが、今回の研修のメインでもある『フロアボス研修』ではフロアボスの待合室で待機をしながら冒険者達を待ち、迎撃するか倒されるかの研修です。

 フロアボスの中には正規雇用のモンスター社員もいますが、ダンジョンマスターがダンジョンの能力で作成したボスもいるそうです。
 ここのスケルトン達と同じように、私に攻撃をしてきます。
 念のため試したのですが、こちらに振り向いて襲い掛かって来ました。
 まあ戦闘員の皆さんが抱えて部屋の外まで連れて行きましたが。

「このままですと、佐々木くんは研修に参加出来ませんね。どうします?」
「ああ、やはりですか。なんとかならないですか?」
「済まないな、こんな自体初めてで正直どう対処するかわからん。徘徊モンスターのユニークボスでもやるか?」
「それだと普通の徘徊モンスターと冒険者の両方を相手にしないといけないですよね…」
「そうだなあ、しかしフロアボスだと待機部屋にいてもらわないといけないしなあ。社員モンスターだけのフロアもあるが、あそこは冒険者が辿り付かないほどの下層だしな…」
「それですと、研修ではなくてフロアボスとの交流会になってしまいますね…」
「折角停学中に無理矢理ねじ込んで貰ったのに、参加出来ないですか」
「ほほう? 君、停学中だったのか! 優秀じゃないか」
「ええ、そうなんですよ。しかも停学中にも関わらず、出たい授業があるからとこちらに交渉してくるくらいなんですよ。
学園長に話を通して、学園側が用意する専用クエストを受けることを条件にここに連れて来れたのですが、どうしましょうか?
 流石に依頼主にも話を通してしまった為、ダンジョンに参加させられないというのは此方としても誠意が無いといいますか」
「ですが、結局参加出来ないんですよね…」

 悲しいです。ダンジョン内にいるまだ見ぬ筋肉モンスター達を真近で見る機会が失われるなんて悲しすぎます。

「そうだな…冒険者側で参加するのはどうだ? 襲われるのならば倒す方に周るしかないだろ。フロアボス体験は出来ないが、戦闘訓練にはなるはずだ」

 ダンジョンマスターからそんな提案がありました。

「なるほど! それなら参加出来ますね!」

 スバらしい案です! 浦安の巨大テーマパーク内のダンジョンに入って以来! 実に5,6年ぶりのダンジョンです!

「や! ちょっと待って下さい。佐々木くん、ダンジョン攻略となると冒険者に混じるって事ですよ? 分かっているのですか?」

 ?

「つまり、人間の側に立って戦うということですよ? ダークネスマッスルは先日の事件で大きく顔が報道されているのですから、変身して中に進入したら結局冒険者達と敵対する形になる事が簡単に予想出来ます! 冒険者とモンスターの両方を相手にするのは危険じゃないですか! 生徒にそんな危険な事はさせられませんよ! 許可出来ません!」
「あ、じゃあダークネスマッスルにならないで入りましょうか」
「おお、お嬢ちゃんが今話題のダークネスマッスルなのか…随分とイメージと違うな」
「お嬢ちゃんではありませんが…まあそうです。結構楽しかったですよ」
「わはははは! フロアモンスター達の中でも話題に上がってたぞ! 是非とも腕試しに来ないかとな。最下層まで着たらオレが相手になるぞ!」
「流石に魔王種の人たちと戦うのはしんどいと思いますけれども、まあ頑張りたいです!」
「おう! ここのダンジョンを人間界に繋げて以来40年! まだ誰もたどり着いてないけどな! わはははは!」
「ですから! 危険だと言っているんです! ダンジョンですよ!? 死んだらどうするんですか?」
「あれ? 復活系アイテムとか売ってないです?」
「売ってるぞ」
「帰還もありますよね?」
「おう、在庫も潤沢だ。ダンジョンだからな! 抜かりはないぞ」
「あ、そうでした。忘れていましたね…それならば…いや、でも…待って下さいね? 念のため学園長へ報告を致しますので」

 鬼蜘蛛先生は携帯を取り出すと、電話を掛け始めました。
 なんでしょう、先生が説明をする度に受話器越しから笑い声が聞こえてくるのですが。

「許可が出ましたね。でもソロで入るのはダメですよ? 仲間を募って入るようにして下さい。先生も上に付いていってダンジョン攻略のアイテムを購入します。表口に出る準備をしますので先に上がっていて下さい」
「ああ、それならダンジョンのオリエンテーションを受けて待ってるといい。そこそこ勉強になると思うぞ。セナ、案内してやれ」
「畏まりました、こちらへどうぞ」

 最初に案内してくれたセナさんに連れられて移動となります。
 ダンジョンの入り口があるロビーまでの直通通路があるそうなので、そこを利用するそうです。
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