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第一章【青の月の章】出会い〜14歳
第23話「クルミ色の浅葱さん」
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「あーっと。オレの知り合いがコソコソと女と会ってるみたいでさ。もしかして君のことかなーって」
「どうして私だと思うの?」
「えー、そこまで聞いちゃうー?」
気になることはどこまでも追究する。
時々度が過ぎてしまうのはわかっていたが、腑に落ちないままでいるのは後で悶々としてしまう。
すぐに解決できることは何とかした方がいいというポリシーであった。
「目かな~」
「目?」
「最近アイツ、木彫りの兎なんか作っててさ。急になんだと思ってたんだよ」
確実に彼のことだとわかり、私は恥ずかしくなって両頬を包んで隠す。
目の前の男はポカンとし、やがてニヤニヤと八重歯を見せて笑い出した。
「やっぱアイツの女か」
「べ、別にそういうのでは……。あなたこそ何? コソコソと探ってるの?」
「コソコソしてるのはそっちだと思うけどなぁ」
ずいぶんとズケズケ聞いてくるので足蹴りにしてやりたいと思った。
私も人にはこれくらい聞いてしまうので、コホンと咳をして苛立つ心を鎮める。
チラッと男の姿を見て、年齢は彼と同じか少し下かと判断した。
(クルミみたいな髪色ね。見た目は悪くないわ)
だが好みではない、とスパッと切り捨てる。
クルミ色の髪をハーフアップに結んでいるが、長さが短いので外ハネが目立つ。
目は大きく、八重歯が目立つのでまるでリスだと思い、想像して笑ってしまった。
「ふ~ん」
男は目を細め、首を傾げるとすぐにニヤッとして私の手首を掴む。
「きゃっ!?」
「こんなところから抜けだしてさ、どこに行くつもりだった?」
「えっ……そ、それは……」
連れ戻されるかもしれない。
そう思って私は男の手を振り払おうとしたが、見かけによらず男の力は強い。
今まで彼しかまともに交流したことがないので、男性とはこうも力強いものなのだと知り怖くなった。
それに男は気づき、すぐに手の力を抜いて目線を合わせてくる。
「ごめんな。普通の女の子には痛かったよな」
「平気……です」
「? 急にしおらしくなった……」
大して人と関わりがなかったので、大事なことを忘れていたと私は口ごもる。
女性の美徳は上品に、しとやかに、だ。
母に「年頃になったら言葉に気をつけなさい」と言われていたと思い出す。
ちゃんと丁寧に話そう。
身を守るにはそれも一つの武器だと、恐怖を飲み込んで男と向き合った。
「街に出るつもりだったんです。欲しいものがあるんです」
「それは街じゃないと手に入らないの?」
「……そうです。だからここでのことは忘れてください」
そう言って私はいち早くここから退散しようと男から離れる。
「待って。オレも一緒に行く」
「えっ!?」
「女一人で出歩くのはあぶねーからさ!」
この男は遠慮のない人だと呆気にとられていると、ニコニコして男は私に並んで歩き出した。
「オレ、浅葱っていうんだ。君は? 名前を聞いてもいい?」
「……時羽です」
「時羽ちゃん。おっけ、じゃあさっそく街へ行こう!」
「わっ!」
浅葱の足取りは軽く、やたら楽しそうに鼻歌をうたっている。
あまりに弾んだ明るさなものだから、気を張っているこちらがバカらしく思えてクスッと笑った。
***
それから浅葱とはお互いのことを話し、街に着くと私は探し物のためにあちこち見回していた。
「時羽ちゃんの欲しいものって何?」
「えっと……紐なんですけど」
「紐?」
紐といっても色んな紐があるので、浅葱には想像出来ずにキョトンとしている。
私は私でどう説明したら良いかわからず、「えーっと」と曖昧に考えて言葉にしていった。
「髪をくくる紐です。でも紐を使って自分で作りたくて」
「組紐のこと?」
「! そうです! それです!」
「おおぅ……」
ようやく答えが出て目を輝かせると、オーバーリアクションに浅葱は目を見張っていた。
それから「うーん」と顎に指先をあてて目を閉じ、その場をグルグル回りだす。
せわしない人だと眺めていると、目がカッと開いて人混みの奥を指さした。
「たしかこの先に反物屋があった! そこなら売ってるかも!」
比較的、宮に近い商店が並ぶ道だ。
宮から離れれば離れるほど、庶民の暮らしが浮き彫りになっていく。
離れた場所には野菜売りや農具に武器といったものを扱う店が多くあり、近くになれば反物屋と上品な店が増える。
万が一を恐れ、あまり近づかないようにしていたが、目的のものはそこにしかないのなら致し方ないと諦めた。
「そこに行きたいです。浅葱さん、案内していただけますか?」
「お、おう。それはもちろん」
人混みに流されないよう浅葱は私の袖を掴んで歩いていく。
人懐こい印象だが、こうして後ろ姿を見れば背が高いとわかる。
すれ違う人たちより頭一つ分出ており、緋月と同じくらいだとぼんやりと眺めた。
「どうして私だと思うの?」
「えー、そこまで聞いちゃうー?」
気になることはどこまでも追究する。
時々度が過ぎてしまうのはわかっていたが、腑に落ちないままでいるのは後で悶々としてしまう。
すぐに解決できることは何とかした方がいいというポリシーであった。
「目かな~」
「目?」
「最近アイツ、木彫りの兎なんか作っててさ。急になんだと思ってたんだよ」
確実に彼のことだとわかり、私は恥ずかしくなって両頬を包んで隠す。
目の前の男はポカンとし、やがてニヤニヤと八重歯を見せて笑い出した。
「やっぱアイツの女か」
「べ、別にそういうのでは……。あなたこそ何? コソコソと探ってるの?」
「コソコソしてるのはそっちだと思うけどなぁ」
ずいぶんとズケズケ聞いてくるので足蹴りにしてやりたいと思った。
私も人にはこれくらい聞いてしまうので、コホンと咳をして苛立つ心を鎮める。
チラッと男の姿を見て、年齢は彼と同じか少し下かと判断した。
(クルミみたいな髪色ね。見た目は悪くないわ)
だが好みではない、とスパッと切り捨てる。
クルミ色の髪をハーフアップに結んでいるが、長さが短いので外ハネが目立つ。
目は大きく、八重歯が目立つのでまるでリスだと思い、想像して笑ってしまった。
「ふ~ん」
男は目を細め、首を傾げるとすぐにニヤッとして私の手首を掴む。
「きゃっ!?」
「こんなところから抜けだしてさ、どこに行くつもりだった?」
「えっ……そ、それは……」
連れ戻されるかもしれない。
そう思って私は男の手を振り払おうとしたが、見かけによらず男の力は強い。
今まで彼しかまともに交流したことがないので、男性とはこうも力強いものなのだと知り怖くなった。
それに男は気づき、すぐに手の力を抜いて目線を合わせてくる。
「ごめんな。普通の女の子には痛かったよな」
「平気……です」
「? 急にしおらしくなった……」
大して人と関わりがなかったので、大事なことを忘れていたと私は口ごもる。
女性の美徳は上品に、しとやかに、だ。
母に「年頃になったら言葉に気をつけなさい」と言われていたと思い出す。
ちゃんと丁寧に話そう。
身を守るにはそれも一つの武器だと、恐怖を飲み込んで男と向き合った。
「街に出るつもりだったんです。欲しいものがあるんです」
「それは街じゃないと手に入らないの?」
「……そうです。だからここでのことは忘れてください」
そう言って私はいち早くここから退散しようと男から離れる。
「待って。オレも一緒に行く」
「えっ!?」
「女一人で出歩くのはあぶねーからさ!」
この男は遠慮のない人だと呆気にとられていると、ニコニコして男は私に並んで歩き出した。
「オレ、浅葱っていうんだ。君は? 名前を聞いてもいい?」
「……時羽です」
「時羽ちゃん。おっけ、じゃあさっそく街へ行こう!」
「わっ!」
浅葱の足取りは軽く、やたら楽しそうに鼻歌をうたっている。
あまりに弾んだ明るさなものだから、気を張っているこちらがバカらしく思えてクスッと笑った。
***
それから浅葱とはお互いのことを話し、街に着くと私は探し物のためにあちこち見回していた。
「時羽ちゃんの欲しいものって何?」
「えっと……紐なんですけど」
「紐?」
紐といっても色んな紐があるので、浅葱には想像出来ずにキョトンとしている。
私は私でどう説明したら良いかわからず、「えーっと」と曖昧に考えて言葉にしていった。
「髪をくくる紐です。でも紐を使って自分で作りたくて」
「組紐のこと?」
「! そうです! それです!」
「おおぅ……」
ようやく答えが出て目を輝かせると、オーバーリアクションに浅葱は目を見張っていた。
それから「うーん」と顎に指先をあてて目を閉じ、その場をグルグル回りだす。
せわしない人だと眺めていると、目がカッと開いて人混みの奥を指さした。
「たしかこの先に反物屋があった! そこなら売ってるかも!」
比較的、宮に近い商店が並ぶ道だ。
宮から離れれば離れるほど、庶民の暮らしが浮き彫りになっていく。
離れた場所には野菜売りや農具に武器といったものを扱う店が多くあり、近くになれば反物屋と上品な店が増える。
万が一を恐れ、あまり近づかないようにしていたが、目的のものはそこにしかないのなら致し方ないと諦めた。
「そこに行きたいです。浅葱さん、案内していただけますか?」
「お、おう。それはもちろん」
人混みに流されないよう浅葱は私の袖を掴んで歩いていく。
人懐こい印象だが、こうして後ろ姿を見れば背が高いとわかる。
すれ違う人たちより頭一つ分出ており、緋月と同じくらいだとぼんやりと眺めた。
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