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第三章【恋巡り、君と契る】
第25話「弟にからかわれる姉」
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葵斗が葉緩を好いてくれるならば、邪険に扱うのは無粋というもの。
桐哉と柚姫の想いを尊ぶのと同じように、葉緩は葉緩に向けられた想いを見つめてみたい。
(きっと、私の幸せもあっていいんだ)
藤に宿る信念は常に他者の幸せを願ってのもの。
そこに敵も味方も関係ない。
葉緩が優先したいのは、応援したい人の恋路を見守ること。
好意を邪険にするのは葉緩の信念に反することだと、佐和に責められたことでようやく腹をくくった。
「私は私の思うままに人を好きになりたいのです。だから葵斗くんを止めたいならば本人に言ってください」
警告を受けてどうするかは葵斗が決めること。
葵斗を好きになるかどうかもまた、葉緩が決めることだ。
佐和のいいなりにはならない。
「それでは、夕飯が待っておりますゆえ失礼致しまする!」
「まっ……! 待ちなさい! 裏切り者!」
「私は忍びとして優秀なので待ちませーん!」
お得意の俊足で去っていく。
もう怯えていられないと、月に向かって葉緩は強気に微笑んだ。
――恋は動き出す。いや、動かしてみようか。
さぁ、手折った枝はどこへ行く?
***
「葉緩? どうした?」
翌日、いつものように絢葉と並んで座って宗芭と向き合う。
強きに恋と向き合おうと決めたものの、わからないことが多いので渋い気持ちが残る。
一度悩めば解決するまで苦悶する……となれば、葉緩の目の下にクマが出来るのも必然であった。
「その、父上は何故母上と夫婦に?」
「……! 急にどうした!? 今まで全く関心がなかったではないか」
そのとおり、葉緩は自分事に興味がなかったので番を意識していなかった。
思わぬ質問に宗芭は一瞬冗談と受け止めるも、思い詰めた様子の葉緩に真剣さを察する。
突っ込みすぎた質問だったと葉緩は顔面蒼白になるも、親も理由があって結ばれたはずだと興味を抱く。親のことさえ、関心がなかった自身の愛想のなさを不気味に思った。
「父上は……父上の主様と母上、どう思っていらっしゃるのですか?」
価値観は人それぞれ。
だが迷いがうまれたとき、道のヒントになるとようやく気づいた。
宗芭は親であり、人生の先輩だと葉緩は忍びではなく、一個人として向き合おうとする。
見たこともない葉緩の顔に、宗芭は成長ととらえるべきか悩みつつ、ありのままを答えると決めた。
「そうだな……。主も母上も一般の人だった。二人とも比べられないくらい大切な人だ」
「……その、匂いというものを」
“匂い”、という単語に宗芭は膝を崩して畳に強く手をついた。
「お前、まさか出会ったのか!? どこの……!」
「姉上、これを」
動揺した宗芭をさえぎり、絢葉が懐から一枚の紙を取り出す。
大事な話の最中になんだと、葉緩は首を傾げながら受け取った。
中身を確認した瞬間、葉緩の目がカッと大きく開かれる。
「こ、これは!?」
「先にコピーをとってまいりました。安心して登校されてください」
「葉緩、それは何だ?」
「な、なんでもございません! 私、学校に行ってまいります!」
これは知られてはならない葉緩の事情。
宗芭の雷を想像し、葉緩は危機感をおぼえて拘束で忍び装束を制服に変える。
重い空気が一変、間抜けた状況に宗芭は咳ばらいをし、じろりと絢葉を尻目に捕らえた。
「絢葉、何を見せた」
「振り回される姉上は面白いでしょう?」
ニタリと笑ってネタバレをしようとする絢葉に、葉緩はタコのように真っ赤になって指をさす。
「絢葉! 帰ってきたら覚悟してくださいね!」
宗芭の疑いの目が直接向けられるより先に逃亡。
風の勢いにのって家から飛び出した。
絢葉の性格の悪さに葉緩は激高し、叫びたい気持ちのまま空に怒り散らした。
絢葉はやたらと葉緩が焦る姿を見て楽しむ癖がある。
弟なのだから姉を敬え! 可愛げがない!
だが勝ち目もなく、葉緩はいつも悔しいとキャンキャン吠えるしかなかった。
桐哉と柚姫の想いを尊ぶのと同じように、葉緩は葉緩に向けられた想いを見つめてみたい。
(きっと、私の幸せもあっていいんだ)
藤に宿る信念は常に他者の幸せを願ってのもの。
そこに敵も味方も関係ない。
葉緩が優先したいのは、応援したい人の恋路を見守ること。
好意を邪険にするのは葉緩の信念に反することだと、佐和に責められたことでようやく腹をくくった。
「私は私の思うままに人を好きになりたいのです。だから葵斗くんを止めたいならば本人に言ってください」
警告を受けてどうするかは葵斗が決めること。
葵斗を好きになるかどうかもまた、葉緩が決めることだ。
佐和のいいなりにはならない。
「それでは、夕飯が待っておりますゆえ失礼致しまする!」
「まっ……! 待ちなさい! 裏切り者!」
「私は忍びとして優秀なので待ちませーん!」
お得意の俊足で去っていく。
もう怯えていられないと、月に向かって葉緩は強気に微笑んだ。
――恋は動き出す。いや、動かしてみようか。
さぁ、手折った枝はどこへ行く?
***
「葉緩? どうした?」
翌日、いつものように絢葉と並んで座って宗芭と向き合う。
強きに恋と向き合おうと決めたものの、わからないことが多いので渋い気持ちが残る。
一度悩めば解決するまで苦悶する……となれば、葉緩の目の下にクマが出来るのも必然であった。
「その、父上は何故母上と夫婦に?」
「……! 急にどうした!? 今まで全く関心がなかったではないか」
そのとおり、葉緩は自分事に興味がなかったので番を意識していなかった。
思わぬ質問に宗芭は一瞬冗談と受け止めるも、思い詰めた様子の葉緩に真剣さを察する。
突っ込みすぎた質問だったと葉緩は顔面蒼白になるも、親も理由があって結ばれたはずだと興味を抱く。親のことさえ、関心がなかった自身の愛想のなさを不気味に思った。
「父上は……父上の主様と母上、どう思っていらっしゃるのですか?」
価値観は人それぞれ。
だが迷いがうまれたとき、道のヒントになるとようやく気づいた。
宗芭は親であり、人生の先輩だと葉緩は忍びではなく、一個人として向き合おうとする。
見たこともない葉緩の顔に、宗芭は成長ととらえるべきか悩みつつ、ありのままを答えると決めた。
「そうだな……。主も母上も一般の人だった。二人とも比べられないくらい大切な人だ」
「……その、匂いというものを」
“匂い”、という単語に宗芭は膝を崩して畳に強く手をついた。
「お前、まさか出会ったのか!? どこの……!」
「姉上、これを」
動揺した宗芭をさえぎり、絢葉が懐から一枚の紙を取り出す。
大事な話の最中になんだと、葉緩は首を傾げながら受け取った。
中身を確認した瞬間、葉緩の目がカッと大きく開かれる。
「こ、これは!?」
「先にコピーをとってまいりました。安心して登校されてください」
「葉緩、それは何だ?」
「な、なんでもございません! 私、学校に行ってまいります!」
これは知られてはならない葉緩の事情。
宗芭の雷を想像し、葉緩は危機感をおぼえて拘束で忍び装束を制服に変える。
重い空気が一変、間抜けた状況に宗芭は咳ばらいをし、じろりと絢葉を尻目に捕らえた。
「絢葉、何を見せた」
「振り回される姉上は面白いでしょう?」
ニタリと笑ってネタバレをしようとする絢葉に、葉緩はタコのように真っ赤になって指をさす。
「絢葉! 帰ってきたら覚悟してくださいね!」
宗芭の疑いの目が直接向けられるより先に逃亡。
風の勢いにのって家から飛び出した。
絢葉の性格の悪さに葉緩は激高し、叫びたい気持ちのまま空に怒り散らした。
絢葉はやたらと葉緩が焦る姿を見て楽しむ癖がある。
弟なのだから姉を敬え! 可愛げがない!
だが勝ち目もなく、葉緩はいつも悔しいとキャンキャン吠えるしかなかった。
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