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そして旅に出る

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 政務室に残った面々は、それぞれが自分の最善策への道を考えていた。
その中で最初に口を開いたのがティナだった。

「私とアートは晴れて婚約を結ぶ事が出来たのだけど、アートからハッキリ言葉で聞いときたいわ」

3人から強い視線を感じるアート。

 成り行きとは言え重大な問題、このままで良いのだろうか?
母上からは一任されてるが、そもそもティナが妃など考えた事も無かったし、ティナの気持ちだって初めて知ったのだ。
彼女を妃に出来る事は嬉しいがリリスやミーヤと立場が違いすぎる。
それならば・・・

「俺からも条件がある」

「言ってみて」

「リリスとミーヤの2人と同じ扱いで良いなら婚約させて貰う」

「何故2人が出て来るのよ」

ティナの口調が強く成るのだった。

「それは私達が気持ちを伝えた後だからよ」

そう言うとティナはアートの腕に自分の腕を回した。

「ミーヤ・・・貴方もなの?」

「はい、アートの事は私も真剣にと申しましたわよね」

「・・・分かったわ」

「では現状を整理をするね、俺はリリス、ミーヤ、ティナの3人と婚約をするが、結婚は即位して国が安定してからにする、それまでに俺を見限ったなら言って欲しい」

3人共黙って頷いたのだった。

「正式な妃に成れるのはリリスとティナで、ミーヤは側室に成ってしまうのだけど構わないのか?」

「それで側にいれるなら構いません」

「分かった」

「アート、私もフリーシアの決まりで、高位な人間族と婚姻する時は寿命の関係で妃には成れないの」

「それなら王位継承権の無い妃に成れば良いさ、それなら問題無いだろう?」

「ありがとう、嬉しいわ」

 これで本当に良かったのだろうか・・・

「リリスの婚約を知ったらアリソン殿下の機嫌を損ねそうだな」

「それなら取り消す?」

ミーヤの質問にアートははっきりと答えた。

「それは無い!」

「チッ」

「ミーヤ、舌打ちしないでよ」

リリスがミーヤに対して不貞腐れる。

 今回の事での決着は全て任されているが、3人も婚約者が出来たなどと突然伝えたら母上は何と言われるだろうか・・・
その場に流されてしまうのは俺の悪い所なのだろうな。


 ティナの計らいでリリスの部屋が新しく用意された。
本人は不満そうに渋々出て行ったが、俺としては憂鬱な問題が1つ無くなり助かったと思っている。
夕食まで時間が有るしエブリンに相談でもしてみるかな。

コンコン・・・コンコン

「はい」

「クリスか俺だけどエブリンはいるかな?」

扉が開くとクリスが快く中へと通してくれた。

「いらっしゃい、アートが1人で行動なんて珍しいね」

「ああ、夕食まで時間が出来たから少し話でもと思ってね」

「何か悩みでもあるのかな?」

 鋭いな・・・

「私は席を外しますか?」

「クリスも聞いて貰えたら助かるよ」

クリスは黙ってエブリンの隣へ座った。

「実は・・・」

アートは勢いで3人と婚約してしまった事を伝えた。

「それでアートは何を悩んでいるんだい?」

「俺の気持ちが纏まらないのに、婚約など無責任では無いかと思ってるんだ」

エブリンはアートの悩みに対して真剣に考え込んだ。

「アートは恋愛をした事が無かったんだよね?」

「うん」

「君は3人の事を少なくとも好意は持ってるのだろうね、そうでなければ婚約など重大な決断を下す筈が無いと思うよ」

「私も同感だわ」

「俺は・・・そうなのか・・・?」

「そうだとも、聞いた話によるとアリソン殿下がリリスを自分のものにしようとしたんだろう?
それを承知で君は婚約した、逆恨みされるかも知れないのにだ」

 確かにそうだ、あの時はリリスを誰にも渡したく無いと思った。

「その顔は何か腑に落ちた様だね」

「ああ、ありがとう」

「所で肝心な話は上手く進んでるのかい?」

「大まかな方針は決まったから、後は細かい所を煮詰めて行く感じかな」

「それなら余り長い事滞在しないでも済みそうだね」

「エブリンは早く戻りたいの?」

クリスが少し不満そうに詰め寄る。

「そうじゃ無いんだよ、ここにいるのが少し危険かなと思ってるのさ」

 エブリンの言いたい事は分かる、俺も確証は無いがアリソンの元にいるのは何か危険を感じる。
しかし俺にはもう一つの目的、勇者コウジに会うと言う任務が有るのだ。
その為には帝国の協力が必須であり、上手く立ち回らなければ成らないのである。

「2人共突然済まなかったね、1度部屋に戻るよ」

 アートは自分の部屋に戻ると明日からの会談に対して考えを纏めるのだった。


翌日アリソンはティナを呼び付けていた。

「ティナ何故だ!」

「どうしようも無く申し訳有りません」

「たった数十万人の小国の王子が・・・生意気な、良くも私の顔に泥を塗ってくれたな」

「それでは今日からの会談はキャンセル致しますか?」

「いいや、それでは我が国が損をするだけだ、それにいざ争いと成れば世界一の海軍を有してる皇国に海上戦を挑むのは馬鹿と言うものよ」

「それではどうなさるのですか?」

「ティナ、お前は黙って王子の信用を稼いでれば良い」

「分かりました」

 その後の会談ではお互いの国が納得の行く交渉が進められた。

「それでは最後に獣人族の移住に関してですが」

「アート殿、もし移住を拒む者が出たらどうする考えかな?」

「その時はアリソン殿下の判断にお任せします、ただ非人道的な行動に出られた時は皇国も覚悟を決めさせて頂きます」

「帝国はそんなに器が小さく無いので安心してくれたまえ」

 何とか無事に終わりそうだ。

「アリソン殿下、今回帝国に来た目的に勇者様とお会いしたいと言う事も1つだったのですが、それは叶いますでしょうか?」

「勇者は魔王国に赴いたまま消息が不明と成っているが、貴殿らが向かうと言うので有れば帝国内の移動を自由にするがどうだろう」

「是非お願いします」

 これで目処が立ったな。
きっと父はトレシアの親族がいる所に身を寄せているのだろう。


  翌朝、アート達4人は帝国の地図を貰い魔族領へと旅立とうとしていた。

「あ、忘れる所だった」

 出発前にやらなければ成らない事、それは本国への状況報告だ。
紙に羽ペンでアリソンと会談した時の結果報告と、獣人族の移住に対て書き込み鳩を飛ばした。

 今度国に帰ったら遠くの場所にいる者と簡単に意見交換出来る物を考え出さないとな。
貰ったペンダントで見る限りこの世界で作り出せるのかは分からないが、挑戦する価値は有るだろう。

「失礼します」

ミーヤが部屋に訪ねて来た。

「馬車の用意が出来ました、皆様エントランスでお待ちに成ってます」

「ありがとう」

アートが部屋を出ようといた所で、ミーヤに腕を引かれ抱きつかれた。

「アート、必ず戻って来てね」

「分かってる、約束する」

「暫く会えなく成るし・・・ね」

ミーヤは顔を上げ瞳を閉じた。

 
 エントランスに降りると3人が食糧の積み込みを行っていた。

「遅くなって悪かったね」

「気にしないで、必要な物は私達で運び込んどいたわよ」

「ありがとう」

クリスとエブリンが前に乗り、アートとリリスは荷台へと乗り込んだ。

「それじゃ行ってくるね」

一行はミーヤと数名の兵士に見送られ王城を後にした。

 魔族領の現状がどうなっているのか情報が無いけれど、勇者が簡単に亡くなるとも思えない。
何時戻るかも分からない以上、こちらから出向くしか無いのは確かだ。
かなり危険かもしれないが、この選択は正しい筈であると信じよう。

馬車は帝都を抜けると北へ向かう街道を軽快に走り出したのだった。



































 政務室に残った面々は、それぞれが自分の最善策への道を考えていた。
その中で最初に口を開いたのがティナだった。

「私とアートは晴れて婚約を結ぶ事が出来たのだけど、アートからハッキリ言葉で聞いときたいわ」

3人から強い視線を感じるアート。

 成り行きとは言え重大な問題、このままで良いのだろうか?
母上からは一任されてるが、そもそもティナが妃など考えた事も無かったし、ティナの気持ちだって初めて知ったのだ。
彼女を妃に出来る事は嬉しいがリリスやミーヤと立場が違いすぎる。
それならば・・・

「俺からも条件がある」

「言ってみて」

「リリスとミーヤの2人と同じ扱いで良いなら婚約させて貰う」

「何故2人が出て来るのよ」

ティナの口調が強く成るのだった。

「それは私達が気持ちを伝えた後だからよ」

そう言うとティナはアートの腕に自分の腕を回した。

「ミーヤ・・・貴方もなの?」

「はい、アートの事は私も真剣にと申しましたわよね」

「・・・分かったわ」

「では現状を整理をするね、俺はリリス、ミーヤ、ティナの3人と婚約をするが、結婚は即位して国が安定してからにする、それまでに俺を見限ったなら言って欲しい」

3人共黙って頷いたのだった。

「正式な妃に成れるのはリリスとティナで、ミーヤは側室に成ってしまうのだけど構わないのか?」

「それで側にいれるなら構いません」

「分かった」

「アート、私もフリーシアの決まりで、高位な人間族と婚姻する時は寿命の関係で妃には成れないの」

「それなら王位継承権の無い妃に成れば良いさ、それなら問題無いだろう?」

「ありがとう、嬉しいわ」

 これで本当に良かったのだろうか・・・

「リリスの婚約を知ったらアリソン殿下の機嫌を損ねそうだな」

「それなら取り消す?」

ミーヤの質問にアートははっきりと答えた。

「それは無い!」

「チッ」

「ミーヤ、舌打ちしないでよ」

リリスがミーヤに対して不貞腐れる。

 今回の事での決着は全て任されているが、3人も婚約者が出来たなどと突然伝えたら母上は何と言われるだろうか・・・
その場に流されてしまうのは俺の悪い所なのだろうな。


 ティナの計らいでリリスの部屋が新しく用意された。
本人は不満そうに渋々出て行ったが、俺としては憂鬱な問題が1つ無くなり助かったと思っている。
夕食まで時間が有るしエブリンに相談でもしてみるかな。

コンコン・・・コンコン

「はい」

「クリスか俺だけどエブリンはいるかな?」

扉が開くとクリスが快く中へと通してくれた。

「いらっしゃい、アートが1人で行動なんて珍しいね」

「ああ、夕食まで時間が出来たから少し話でもと思ってね」

「何か悩みでもあるのかな?」

 鋭いな・・・

「私は席を外しますか?」

「クリスも聞いて貰えたら助かるよ」

クリスは黙ってエブリンの隣へ座った。

「実は・・・」

アートは勢いで3人と婚約してしまった事を伝えた。

「それでアートは何を悩んでいるんだい?」

「俺の気持ちが纏まらないのに、婚約など無責任では無いかと思ってるんだ」

エブリンはアートの悩みに対して真剣に考え込んだ。

「アートは恋愛をした事が無かったんだよね?」

「うん」

「君は3人の事を少なくとも好意は持ってるのだろうね、そうでなければ婚約など重大な決断を下す筈が無いと思うよ」

「私も同感だわ」

「俺は・・・そうなのか・・・?」

「そうだとも、聞いた話によるとアリソン殿下がリリスを自分のものにしようとしたんだろう?
それを承知で君は婚約した、逆恨みされるかも知れないのにだ」

 確かにそうだ、あの時はリリスを誰にも渡したく無いと思った。

「その顔は何か腑に落ちた様だね」

「ああ、ありがとう」

「所で肝心な話は上手く進んでるのかい?」

「大まかな方針は決まったから、後は細かい所を煮詰めて行く感じかな」

「それなら余り長い事滞在しないでも済みそうだね」

「エブリンは早く戻りたいの?」

クリスが少し不満そうに詰め寄る。

「そうじゃ無いんだよ、ここにいるのが少し危険かなと思ってるのさ」

 エブリンの言いたい事は分かる、俺も確証は無いがアリソンの元にいるのは何か危険を感じる。
しかし俺にはもう一つの目的、勇者コウジに会うと言う任務が有るのだ。
その為には帝国の協力が必須であり、上手く立ち回らなければ成らないのである。

「2人共突然済まなかったね、1度部屋に戻るよ」

 アートは自分の部屋に戻ると明日からの会談に対して考えを纏めるのだった。


翌日アリソンはティナを呼び付けていた。

「ティナ何故だ!」

「どうしようも無く申し訳有りません」

「たった数十万人の小国の王子が・・・生意気な、良くも私の顔に泥を塗ってくれたな」

「それでは今日からの会談はキャンセル致しますか?」

「いいや、それでは我が国が損をするだけだ、それにいざ争いと成れば世界一の海軍を有してる皇国に海上戦を挑むのは馬鹿と言うものよ」

「それではどうなさるのですか?」

「ティナ、お前は黙って王子の信用を稼いでれば良い」

「分かりました」

 その後の会談ではお互いの国が納得の行く交渉が進められた。

「それでは最後に獣人族の移住に関してですが」

「アート殿、もし移住を拒む者が出たらどうする考えかな?」

「その時はアリソン殿下の判断にお任せします、ただ非人道的な行動に出られた時は皇国も覚悟を決めさせて頂きます」

「帝国はそんなに器が小さく無いので安心してくれたまえ」

 何とか無事に終わりそうだ。

「アリソン殿下、今回帝国に来た目的に勇者様とお会いしたいと言う事も1つだったのですが、それは叶いますでしょうか?」

「勇者は魔王国に赴いたまま消息が不明と成っているが、貴殿らが向かうと言うので有れば帝国内の移動を自由にするがどうだろう」

「是非お願いします」

 これで目処が立ったな。
きっと父はトレシアの親族がいる所に身を寄せているのだろう。


  翌朝、アート達4人は帝国の地図を貰い魔族領へと旅立とうとしていた。

「あ、忘れる所だった」

 出発前にやらなければ成らない事、それは本国への状況報告だ。
紙に羽ペンでアリソンと会談した時の結果報告と、獣人族の移住に対て書き込み鳩を飛ばした。

 今度国に帰ったら遠くの場所にいる者と簡単に意見交換出来る物を考え出さないとな。
貰ったペンダントで見る限りこの世界で作り出せるのかは分からないが、挑戦する価値は有るだろう。

「失礼します」

ミーヤが部屋に訪ねて来た。

「馬車の用意が出来ました、皆様エントランスでお待ちに成ってます」

「ありがとう」

アートが部屋を出ようといた所で、ミーヤに腕を引かれ抱きつかれた。

「アート、必ず戻って来てね」

「分かってる、約束する」

「暫く会えなく成るし・・・ね」

ミーヤは顔を上げ瞳を閉じた。

 
 エントランスに降りると3人が食糧の積み込みを行っていた。

「遅くなって悪かったね」

「気にしないで、必要な物は私達で運び込んどいたわよ」

「ありがとう」

クリスとエブリンが前に乗り、アートとリリスは荷台へと乗り込んだ。

「それじゃ行ってくるね」

一行はミーヤと数名の兵士に見送られ王城を後にした。

 魔族領の現状がどうなっているのか情報が無いけれど、勇者が簡単に亡くなるとも思えない。
何時戻るかも分からない以上、こちらから出向くしか無いのは確かだ。
かなり危険かもしれないが、この選択は正しい筈であると信じよう。

馬車は帝都を抜けると北へ向かう街道を軽快に走り出したのだった。



































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