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21:いもうと
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「まさか豆狸がこんな風に役立つなんて、思ってもみなかったわ」
「ああ、俺も想定外だった」
俺たちの前を走る小さな背中を追いかけながら、依織の顔を思い出す。
居場所を突き止めるために使うことのできる能力だとしても、豆狸が知らせにこなければ気がつかないままだったかもしれない。
それ以前に、あの状況下で依織の傍に豆狸がいたなんて考えもしなかった。
いつも豆狸を傍に置いて、情を与えていたからだろう。危険を察知した豆狸は、おそらく自発的に依織についていった。
臆病な性格をしているというのに、依織のために行動を起こしたのだ。
「白緑様。この先、霧が濃くなっています。これも紫黒の力の影響なのでしょう」
「つまりは目的地が近いということだ。二人とも、気を抜くな」
紫黒は元々、強い妖力を持ったあやかしだった。
誰かの上に立とうというあやかしではなかったが、力を得ようと思えば難しいことではなかったはずだ。
現にこうして、力を蓄えた紫黒はこの妖都を脅かそうとしている。
(紫黒と藍白……あの二人が手を組む理由は何だ?)
幼少期から共に過ごした仲ではあるが、あの二人が特別親しかったというわけでもないはずだ。
むしろ藍白の場合は、俺から離れている時間の方が少なかったくらいなのに。
「しつこい。わざわざあの人間を取り返しに来たの?」
「藍白……!?」
そんなことを考えていたからか、目の前に青い炎の壁が出現して、反射的に飛び退く。その壁を裂くようにして現れた妹は、苛立っている様子だ。
背後には複数の妖魔を従えていて、俺たちと話し合いに来たわけでないことは間違いない。
「そこを退け、藍白。これ以上馬鹿な真似を繰り返すつもりなら、俺はお前が相手だろうと容赦はしない」
「どう容赦しないの? あの女の紋様が消えれば、兄様はもう紫黒に勝てないのに」
「アンタがわざわざ出向いてきたのは、足止めが目的ってことかしら?」
「大人しく紫黒に王の座を明け渡せば、こんな足止めもしなくて済むのだけど」
藍白が手をかざすと、妖魔が一斉に襲い掛かってくる。
行く手を朱のカラスたちが阻んで、その隙に淡紅の小刀が妖魔たちに攻撃を加えていく。
雑魚の相手を二人に任せて、飛び出した俺は刀を手に藍白へ斬りかかった。
「藍白、お前の目的は王を交代させることなのか!?」
「そうよ、紫黒にはそれだけの力がある」
「なぜそこまで紫黒を王にすることにこだわる……!? お前と紫黒の間には何があるんだ!?」
炎で刀が弾かれるが、すぐに体勢を立て直した俺は再び攻撃へと転じる。
以前の藍白は、俺のことを慕ってくれていたはずだ。それこそ、どこへ行くにも離れたくないとでもいうように。
紫黒のことも好いていたであろうが、王の座を交代させる理由には結び付かない。
「何もないわ、紫黒じゃなくてもいいの。わたしは兄様以外を王にしたいだけ……!」
「っ……!?」
ひと際大きな炎の塊が放たれ、俺は咄嗟に同じだけの白い炎をぶつけて相殺した。
頬を掠めていく熱風に眉を顰める。細やかな扱いはできないが、炎の強さだけでいえば俺の炎よりも藍白の方が上だ。
会わない間に、ますます威力が上がっているような気さえする。
「俺が王でいることで、お前になんの不都合があるんだ!?」
俺が妖都の王でいることで、少なくとも藍白の生活に生じる変化はないはずだ。
だとすれば、単純に俺が恨まれているだけだというのだろうか?
慕われていると思っていたのは俺だけで、本当は藍白にとって好ましい兄ではなかったというのか。
「気がつかないうちに、俺はお前に恨まれるようなことをしていたのか……?」
「少なくとも、藍白は誰より白緑様を慕っていたように見えました。恨みや妬みといった感情が原動力だとは思えません」
「朱……!?」
隣へ降り立ってきた朱に、後ろを見ると粗方の妖魔は片付いたらしい。
物事を客観的に見ることのできる朱が言うのであれば、それが真実なのだと思いたいが。今の状況ではそれをすんなり受け入れることは難しい。
「他に何か理由があるはずです。オレにも、それがなんなのかはわかりませんが」
「どんな理由だろうと、たった一人の弟を傷つけるあやかしが王にふさわしいはずがないわ」
「なら、おまえが王になる? それだけの力があるとは思えないけど」
「悪いけど、王に興味はないの」
怒りのままに、淡紅が地面を蹴る。藍白は自身を狙う小刀を簡単にいなして、その鋭い爪で淡紅の肌に傷をつけた。
けれど、痛みに怯むことなく、淡紅は赤い炎を纏わせた小刀で応戦していく。
どうしたって実力差は埋められない。だが、どうすべきかを決めあぐねていることが、攻撃の中途半端さに繋がっていることも理解していた。
藍白は実の妹だが、今はもう――俺たちの敵だ。
「……消すしか、ないか」
「そんなことは許さないから!!」
「……! 淡紅……」
俺の小さな呟きを、戦っている最中の淡紅が拾い上げる。
こうなってしまった以上、王として責任を取るべきだと感じていた。身内だからと甘い対処をせずに、藍白を妖都の敵として処分すべきだと。
けれど、一番傷を負わされているであろう淡紅は、それを許さないと断言した。
「……血の繋がりはありませんが、淡紅にとっても、藍白は妹のような存在ですからね」
「…………」
少しワガママなところはあるが、藍白は仲間たちから可愛がられていた。藍白自身も懐いていたし、特に同性の淡紅とは親しくしていたように思う。
こんな風に戦い合う未来を、一度だって想像したことはなかったのに。
「アンタ、あんなに白緑のことが好きだったのにどうしちゃったわけ!? 操られてないっていうなら、納得いく理由を……ッ、うぐ……!」
小刀で斬りかかろうとしていた淡紅は、何かに思い至ったように言葉を不自然に途切れさせる。
そこに炎の攻撃を受けて、吹き飛ばされた彼女の身体は勢いよく木にぶつかった。
「淡紅!!」
その後を追った藍白は、容赦なく追撃を加えようとしている。
「……もしかして、白緑を解放しようとしてるの?」
「っ……!!」
しかし、淡紅の一言で藍白の手が止まるのが見える。
(まさか……)
自分よりも先に飛び出した朱の姿に、ハッとして俺も動き出す。
一瞬の隙を見せた藍白を捕らえることに成功すると、俺は妖力で作り出した縄で動きを拘束した。
「ああ、俺も想定外だった」
俺たちの前を走る小さな背中を追いかけながら、依織の顔を思い出す。
居場所を突き止めるために使うことのできる能力だとしても、豆狸が知らせにこなければ気がつかないままだったかもしれない。
それ以前に、あの状況下で依織の傍に豆狸がいたなんて考えもしなかった。
いつも豆狸を傍に置いて、情を与えていたからだろう。危険を察知した豆狸は、おそらく自発的に依織についていった。
臆病な性格をしているというのに、依織のために行動を起こしたのだ。
「白緑様。この先、霧が濃くなっています。これも紫黒の力の影響なのでしょう」
「つまりは目的地が近いということだ。二人とも、気を抜くな」
紫黒は元々、強い妖力を持ったあやかしだった。
誰かの上に立とうというあやかしではなかったが、力を得ようと思えば難しいことではなかったはずだ。
現にこうして、力を蓄えた紫黒はこの妖都を脅かそうとしている。
(紫黒と藍白……あの二人が手を組む理由は何だ?)
幼少期から共に過ごした仲ではあるが、あの二人が特別親しかったというわけでもないはずだ。
むしろ藍白の場合は、俺から離れている時間の方が少なかったくらいなのに。
「しつこい。わざわざあの人間を取り返しに来たの?」
「藍白……!?」
そんなことを考えていたからか、目の前に青い炎の壁が出現して、反射的に飛び退く。その壁を裂くようにして現れた妹は、苛立っている様子だ。
背後には複数の妖魔を従えていて、俺たちと話し合いに来たわけでないことは間違いない。
「そこを退け、藍白。これ以上馬鹿な真似を繰り返すつもりなら、俺はお前が相手だろうと容赦はしない」
「どう容赦しないの? あの女の紋様が消えれば、兄様はもう紫黒に勝てないのに」
「アンタがわざわざ出向いてきたのは、足止めが目的ってことかしら?」
「大人しく紫黒に王の座を明け渡せば、こんな足止めもしなくて済むのだけど」
藍白が手をかざすと、妖魔が一斉に襲い掛かってくる。
行く手を朱のカラスたちが阻んで、その隙に淡紅の小刀が妖魔たちに攻撃を加えていく。
雑魚の相手を二人に任せて、飛び出した俺は刀を手に藍白へ斬りかかった。
「藍白、お前の目的は王を交代させることなのか!?」
「そうよ、紫黒にはそれだけの力がある」
「なぜそこまで紫黒を王にすることにこだわる……!? お前と紫黒の間には何があるんだ!?」
炎で刀が弾かれるが、すぐに体勢を立て直した俺は再び攻撃へと転じる。
以前の藍白は、俺のことを慕ってくれていたはずだ。それこそ、どこへ行くにも離れたくないとでもいうように。
紫黒のことも好いていたであろうが、王の座を交代させる理由には結び付かない。
「何もないわ、紫黒じゃなくてもいいの。わたしは兄様以外を王にしたいだけ……!」
「っ……!?」
ひと際大きな炎の塊が放たれ、俺は咄嗟に同じだけの白い炎をぶつけて相殺した。
頬を掠めていく熱風に眉を顰める。細やかな扱いはできないが、炎の強さだけでいえば俺の炎よりも藍白の方が上だ。
会わない間に、ますます威力が上がっているような気さえする。
「俺が王でいることで、お前になんの不都合があるんだ!?」
俺が妖都の王でいることで、少なくとも藍白の生活に生じる変化はないはずだ。
だとすれば、単純に俺が恨まれているだけだというのだろうか?
慕われていると思っていたのは俺だけで、本当は藍白にとって好ましい兄ではなかったというのか。
「気がつかないうちに、俺はお前に恨まれるようなことをしていたのか……?」
「少なくとも、藍白は誰より白緑様を慕っていたように見えました。恨みや妬みといった感情が原動力だとは思えません」
「朱……!?」
隣へ降り立ってきた朱に、後ろを見ると粗方の妖魔は片付いたらしい。
物事を客観的に見ることのできる朱が言うのであれば、それが真実なのだと思いたいが。今の状況ではそれをすんなり受け入れることは難しい。
「他に何か理由があるはずです。オレにも、それがなんなのかはわかりませんが」
「どんな理由だろうと、たった一人の弟を傷つけるあやかしが王にふさわしいはずがないわ」
「なら、おまえが王になる? それだけの力があるとは思えないけど」
「悪いけど、王に興味はないの」
怒りのままに、淡紅が地面を蹴る。藍白は自身を狙う小刀を簡単にいなして、その鋭い爪で淡紅の肌に傷をつけた。
けれど、痛みに怯むことなく、淡紅は赤い炎を纏わせた小刀で応戦していく。
どうしたって実力差は埋められない。だが、どうすべきかを決めあぐねていることが、攻撃の中途半端さに繋がっていることも理解していた。
藍白は実の妹だが、今はもう――俺たちの敵だ。
「……消すしか、ないか」
「そんなことは許さないから!!」
「……! 淡紅……」
俺の小さな呟きを、戦っている最中の淡紅が拾い上げる。
こうなってしまった以上、王として責任を取るべきだと感じていた。身内だからと甘い対処をせずに、藍白を妖都の敵として処分すべきだと。
けれど、一番傷を負わされているであろう淡紅は、それを許さないと断言した。
「……血の繋がりはありませんが、淡紅にとっても、藍白は妹のような存在ですからね」
「…………」
少しワガママなところはあるが、藍白は仲間たちから可愛がられていた。藍白自身も懐いていたし、特に同性の淡紅とは親しくしていたように思う。
こんな風に戦い合う未来を、一度だって想像したことはなかったのに。
「アンタ、あんなに白緑のことが好きだったのにどうしちゃったわけ!? 操られてないっていうなら、納得いく理由を……ッ、うぐ……!」
小刀で斬りかかろうとしていた淡紅は、何かに思い至ったように言葉を不自然に途切れさせる。
そこに炎の攻撃を受けて、吹き飛ばされた彼女の身体は勢いよく木にぶつかった。
「淡紅!!」
その後を追った藍白は、容赦なく追撃を加えようとしている。
「……もしかして、白緑を解放しようとしてるの?」
「っ……!!」
しかし、淡紅の一言で藍白の手が止まるのが見える。
(まさか……)
自分よりも先に飛び出した朱の姿に、ハッとして俺も動き出す。
一瞬の隙を見せた藍白を捕らえることに成功すると、俺は妖力で作り出した縄で動きを拘束した。
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