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エルアーラ遺跡編
episode453
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「ゴーレムならパンダとか、可愛い顔のにしろよなー」
パンパンと掌の汚れを払い落としながら、ヴァルトはむっすりとぼやいた。
「パンダだと破壊するのに躊躇いそうだけど……」
ふとブルーベル将軍の副官の顔を思い出し、メルヴィンは苦笑した。中身はどうあれ、見た目は可愛いのだから。
「やっと倒したか愚図ども」
「スンマセン」
ぺこぺこ頭を下げながらギャリーは内心「ロリコン野郎め…」と悪態をつく。
「聞こえてるぞギャリー」
「さらにスンマセンっ!」
ベルトルドの前では、胸中で思うことも筒抜けだ。
「力の正体が判ればもう俺には通用せん。とっとと片付けて戦争の後始末へ向かう! 俺は超絶忙しいんだ!! ついでに眠い」
ノーキン組みはベルトルドのために前を開け、後ろへと下がる。
「1万年前、ある事象により世界は滅んだ。そこから人類が再び歴史を紡ぎ出したのは9千年後、それほどの長い時間を必要とするほど世界を追い込んだ元凶は、このフリングホルニだ」
「!」
唐突に発せられた内容に、ヒューゴは驚いた。そしてライオン傭兵団は不思議そうに首をかしげる。
「フリングホルニが建造されなければ、世界を滅ぼすほどの事象は引き起こされなかっただろう」
「あなたは……あなたはどこまで知っている」
あえぐように声を振り絞るヒューゴに、ベルトルドはニヤリと不敵な笑みを向ける。
「局所的に起こった事象は世界を巻き込んだ。ヤルヴィレフト王家の犯した罪は重い。だが、それを止められなかった貴様の罪はもっと重いぞ、ヒューゴ」
「違う!!」
これまで余裕を浮かべていたヒューゴの表情が一変し、恐怖にひきつったように歪んでいた。
「ボクは止めようとした、止めようとしたんだ! だが騙されユリディスと引き離されてしまった。守れなかった………守れなかったんだよ!!」
(一体なんの話をしてるんだ…?)
ギャリーは不可解そうにルーファスに目配せしたが、ルーファスは肩をすくめてみせただけだった。
「まさか、あんなことになるなんて…」
「阻止できなかったことを悔いて、それでここに己の魂の一部を遺していったわけか。健気だな」
僅かに嘲笑を含めて言い放つ。それに気づいて、ヒューゴはキッとベルトルドを睨んだ。
「あの世へ旅立つ前に、ひとつ面白いことを教えておいてやろう。1万年前にヤルヴィレフト王家が犯そうとした愚行と、同じことをやろうとしている者がいる」
「なんだと!?」
「そしてレディトゥス・システムとその全ても手中にある。フンッ、ご苦労だったな。貴様を処理すれば準備が整うんだ」
「まさかあなたは」
「1万年前に守れなかったものが、現代になって守れるものか、馬鹿者!」
ベルトルドの周囲に、突如放電する光の玉が無数に出現する。
「あれってもしかしてっ」
パンパンと掌の汚れを払い落としながら、ヴァルトはむっすりとぼやいた。
「パンダだと破壊するのに躊躇いそうだけど……」
ふとブルーベル将軍の副官の顔を思い出し、メルヴィンは苦笑した。中身はどうあれ、見た目は可愛いのだから。
「やっと倒したか愚図ども」
「スンマセン」
ぺこぺこ頭を下げながらギャリーは内心「ロリコン野郎め…」と悪態をつく。
「聞こえてるぞギャリー」
「さらにスンマセンっ!」
ベルトルドの前では、胸中で思うことも筒抜けだ。
「力の正体が判ればもう俺には通用せん。とっとと片付けて戦争の後始末へ向かう! 俺は超絶忙しいんだ!! ついでに眠い」
ノーキン組みはベルトルドのために前を開け、後ろへと下がる。
「1万年前、ある事象により世界は滅んだ。そこから人類が再び歴史を紡ぎ出したのは9千年後、それほどの長い時間を必要とするほど世界を追い込んだ元凶は、このフリングホルニだ」
「!」
唐突に発せられた内容に、ヒューゴは驚いた。そしてライオン傭兵団は不思議そうに首をかしげる。
「フリングホルニが建造されなければ、世界を滅ぼすほどの事象は引き起こされなかっただろう」
「あなたは……あなたはどこまで知っている」
あえぐように声を振り絞るヒューゴに、ベルトルドはニヤリと不敵な笑みを向ける。
「局所的に起こった事象は世界を巻き込んだ。ヤルヴィレフト王家の犯した罪は重い。だが、それを止められなかった貴様の罪はもっと重いぞ、ヒューゴ」
「違う!!」
これまで余裕を浮かべていたヒューゴの表情が一変し、恐怖にひきつったように歪んでいた。
「ボクは止めようとした、止めようとしたんだ! だが騙されユリディスと引き離されてしまった。守れなかった………守れなかったんだよ!!」
(一体なんの話をしてるんだ…?)
ギャリーは不可解そうにルーファスに目配せしたが、ルーファスは肩をすくめてみせただけだった。
「まさか、あんなことになるなんて…」
「阻止できなかったことを悔いて、それでここに己の魂の一部を遺していったわけか。健気だな」
僅かに嘲笑を含めて言い放つ。それに気づいて、ヒューゴはキッとベルトルドを睨んだ。
「あの世へ旅立つ前に、ひとつ面白いことを教えておいてやろう。1万年前にヤルヴィレフト王家が犯そうとした愚行と、同じことをやろうとしている者がいる」
「なんだと!?」
「そしてレディトゥス・システムとその全ても手中にある。フンッ、ご苦労だったな。貴様を処理すれば準備が整うんだ」
「まさかあなたは」
「1万年前に守れなかったものが、現代になって守れるものか、馬鹿者!」
ベルトルドの周囲に、突如放電する光の玉が無数に出現する。
「あれってもしかしてっ」
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