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エルアーラ遺跡編
episode450
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「うおっ!」
上からではなく足元からの突き攻撃に、全員姿勢を激しく崩して乱れた。容赦なく氷の柱はどんどん現れる。
ベルトルドとシ・アティウスのみ、ベルトルドの張った透明な防御壁で無傷だったが、ライオン傭兵団の面々はそれぞれ避けきれなかった部位を貫かれたりで、氷に血が点々と飛び散っていた。
「ルーとマリオンは防御担当、魔法組みは氷をなんとか溶かしてくれや!」
ギャリーが素早く指示を飛ばすが、態勢を立て直す前に無数の矢が有り得ないスピードで雨のように降り注いだ。
ノーキン組は足場が滑る不安定な位置でも、姿勢を崩しながら剣や拳で矢を斬り散らした。一本でも刺さると危ない勢いである。
ノイタの氷範囲攻撃魔法が着弾すると、ソトリが手にしていた剣を弓の形に変化させて、一本の矢を番えて放った。しかし番えていた矢は一本だったはずだが、放たれた瞬間無数の矢が出現したのだ。
容赦なく矢の攻撃は続き、その間にもノイタによる範囲攻撃魔法も続けられた。
足場を溶かすことはカーティスとシビルに任せ、ランドンはみんなの回復にまわり、ハーマンが攻撃にうつった。
「無詠唱で魔法を発動できるのは、アルカネットさんだけだと思ってたけど、他にもいたのか悔しいな~~~!」
内に秘めた魔力は、あらゆる属性を内包している。呪文を唱えることでその属性を引き出し、そして魔法の名をもって発動するのだ。
現在確認されている中では、呪文は無詠唱で、魔法の名のみで発動することのできる魔法使いはアルカネットだけだ。
過程を省略して魔法を使えるということは、魔力から瞬時に属性を引き出し、力を高めて放っているということ。神業と呼んでも差し支えがない。
ハーマンはそれに心底憧れていたし、嫉妬もしていた。
キツネのトゥーリ族は、魔法スキル〈才能〉を持つ者を多く輩出している。元々とても賢い種族であり、魔法使いも上級レベルが多かった。とりわけ攻撃魔法に特化すると、キツネのトゥーリ族の中でもハーマンはトップクラスだ。しかし呪文の詠唱をせずに魔法を発動することは、いまだに出来ない。
アルカネットは怖れの存在だけど、魔法使いとしては憧れであり、目標とするには高すぎた。なのに過去の思念体とはいえ、もうひとりそんなことのできる魔法使いがいたなんて。たとえ駒という形に置き換えたとしても、それはヒューゴ自身の持つ力だ。つまりヒューゴは無詠唱で魔法が使えるということ。
嫉妬で腸が煮えくり返る。
「気に入らない、チョー気に入らないぞおおお!!」
ハーマンの叫び声を聞いて、ギャリーが口の端をニヤリと歪めた。
「キツネっ子が本気出したぞ」
「猛きものも力を失い
驕れる者も滅ぶべし
特大バージョン! ギガス・フランマ!!」
魔具として使用している分厚い本を開き、オプション付きの魔法名を叫ぶと、ヒューゴの周囲に巨大な火柱が3つ立ち上った。
「そのまま燃えちゃえ!」
「あは、これは凄いね」
感心したように呟くと、ヒューゴは左手をかざした。
「攻撃から我を守れ、シントパピン」
ヒューゴの左側にいた彫像が青く光り、捧げていた剣を頭上に突き立てるように持ち上げた。
剣先が淡く光ると、半透明な膜がヒューゴを包み込むようにドーム状に展開した。
ハーマンの放ったギガス・フランマの3つの火柱が、ヒューゴを飲み込み一本になると、高温を発して轟轟と燃え盛った。ノイタとソトリの攻撃が止む。
「動力部であんな魔法を使わないで欲しい…」
彼らの戦いを眺め、シ・アティウスはボソリと呟いた。
「やったか?」
離れていても熱が漂ってきて、掌でぱたぱた顔を扇いでいたヴァルトが首をかしげる。
「いや、ダメっぽい」
全員に防御壁を張り終わったルーファスが、残念そうに肩をすくめた。
上からではなく足元からの突き攻撃に、全員姿勢を激しく崩して乱れた。容赦なく氷の柱はどんどん現れる。
ベルトルドとシ・アティウスのみ、ベルトルドの張った透明な防御壁で無傷だったが、ライオン傭兵団の面々はそれぞれ避けきれなかった部位を貫かれたりで、氷に血が点々と飛び散っていた。
「ルーとマリオンは防御担当、魔法組みは氷をなんとか溶かしてくれや!」
ギャリーが素早く指示を飛ばすが、態勢を立て直す前に無数の矢が有り得ないスピードで雨のように降り注いだ。
ノーキン組は足場が滑る不安定な位置でも、姿勢を崩しながら剣や拳で矢を斬り散らした。一本でも刺さると危ない勢いである。
ノイタの氷範囲攻撃魔法が着弾すると、ソトリが手にしていた剣を弓の形に変化させて、一本の矢を番えて放った。しかし番えていた矢は一本だったはずだが、放たれた瞬間無数の矢が出現したのだ。
容赦なく矢の攻撃は続き、その間にもノイタによる範囲攻撃魔法も続けられた。
足場を溶かすことはカーティスとシビルに任せ、ランドンはみんなの回復にまわり、ハーマンが攻撃にうつった。
「無詠唱で魔法を発動できるのは、アルカネットさんだけだと思ってたけど、他にもいたのか悔しいな~~~!」
内に秘めた魔力は、あらゆる属性を内包している。呪文を唱えることでその属性を引き出し、そして魔法の名をもって発動するのだ。
現在確認されている中では、呪文は無詠唱で、魔法の名のみで発動することのできる魔法使いはアルカネットだけだ。
過程を省略して魔法を使えるということは、魔力から瞬時に属性を引き出し、力を高めて放っているということ。神業と呼んでも差し支えがない。
ハーマンはそれに心底憧れていたし、嫉妬もしていた。
キツネのトゥーリ族は、魔法スキル〈才能〉を持つ者を多く輩出している。元々とても賢い種族であり、魔法使いも上級レベルが多かった。とりわけ攻撃魔法に特化すると、キツネのトゥーリ族の中でもハーマンはトップクラスだ。しかし呪文の詠唱をせずに魔法を発動することは、いまだに出来ない。
アルカネットは怖れの存在だけど、魔法使いとしては憧れであり、目標とするには高すぎた。なのに過去の思念体とはいえ、もうひとりそんなことのできる魔法使いがいたなんて。たとえ駒という形に置き換えたとしても、それはヒューゴ自身の持つ力だ。つまりヒューゴは無詠唱で魔法が使えるということ。
嫉妬で腸が煮えくり返る。
「気に入らない、チョー気に入らないぞおおお!!」
ハーマンの叫び声を聞いて、ギャリーが口の端をニヤリと歪めた。
「キツネっ子が本気出したぞ」
「猛きものも力を失い
驕れる者も滅ぶべし
特大バージョン! ギガス・フランマ!!」
魔具として使用している分厚い本を開き、オプション付きの魔法名を叫ぶと、ヒューゴの周囲に巨大な火柱が3つ立ち上った。
「そのまま燃えちゃえ!」
「あは、これは凄いね」
感心したように呟くと、ヒューゴは左手をかざした。
「攻撃から我を守れ、シントパピン」
ヒューゴの左側にいた彫像が青く光り、捧げていた剣を頭上に突き立てるように持ち上げた。
剣先が淡く光ると、半透明な膜がヒューゴを包み込むようにドーム状に展開した。
ハーマンの放ったギガス・フランマの3つの火柱が、ヒューゴを飲み込み一本になると、高温を発して轟轟と燃え盛った。ノイタとソトリの攻撃が止む。
「動力部であんな魔法を使わないで欲しい…」
彼らの戦いを眺め、シ・アティウスはボソリと呟いた。
「やったか?」
離れていても熱が漂ってきて、掌でぱたぱた顔を扇いでいたヴァルトが首をかしげる。
「いや、ダメっぽい」
全員に防御壁を張り終わったルーファスが、残念そうに肩をすくめた。
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